第10話 銅貨一枚



 「ただいまニャン」


 「あら、お帰りなさい黒猫さん ご飯用意するからちょっと待っててねー」


 笑顔で出迎えてくれる暖かいホームに帰り着いた俺は、今日の出来事をセレナに聞かせてやったのだ。


 「で、その銅貨一枚と……」


 「そういうことニャン お金は稼ぎたかったのだけれど、そういうのはどうでもよくって、この魂の篭った銅貨は吾輩の宝物ニャン!」


 すると、セレナから涙が一雫、頬を伝い笑いながら吾輩を抱きしめた。


 「よくやったわ黒猫さん! 人の為に頑張れたなんて、私嬉しいわ きっとリンちゃんにとっても忘れられない思い出になるはずだから、黒猫さんも忘れないであげてね」


 「吾輩も、とても気分がよかったニャン 吾輩、悪い黒猫じゃないニャンよ!」


 「えぇ、とても優しくて勇敢な黒猫さんよ! 私の自慢だわ!」


 俺とセレナ、二人で談笑をしているとセレナある思いつきを提案してきた。


 「黒猫さん、この銅貨を首輪にしてみない? 宝物なのでしょ?」


 良い提案だと、俺も思う。


 俺は猫であるが故、その銅貨は口に咥える以外に持つことが出来ないからだ。


 「首輪かニャン? 吾輩に作ってくれるんかニャン!?」


 「えぇ! 絶対に似合うと思うわ! 今から作りましょうか」


 そうして、一時間近くたった頃セレナは俺の元へ駆け寄ってきた。


 それは、磨き上げられた銅の煌めき。


 チェーンはシルバーに輝き、銅貨の価値を何倍にも引き上げる立派な首輪になっていた。


 「うぉぉ! 凄いニャン 吾輩の宝物がこんな立派になっちゃって! 感無量ニャン!」


 「もう大袈裟なんだからぁ〜 もうそろそろ寝る準備をして頂戴ね!」


 「おやすみニャン!」


 「おやすみ、黒猫さん」


 長い一日が幕を下ろした。


 今日のことは、一生忘れることは無いだろう。

 

 明日は、何をしようかな?


 そう考えていた吾輩は、ウトウトと眠気に誘われて眠ってしまった満足げな黒猫である。





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