第21話 冒険者登録
「ここでいっか」
俺とラナさんは手をつなぎながら、間抜けな騎士団から遠ざかる形で別の宿を探した。
大きな街というだけあって宿屋の数はそれなりにあって、ピンときたところを選んで入ることにする。
いの一番にすることが宿探しというのが、いかにも怠惰で大変宜しい。
まあ、急ぎで宿を探した理由は一応ある。
実は先ほど怠惰レベルが2に上がったのだ。何がきっかけで上がったのかイマイチ分からないが。
で、そのおかげでいくつか怠惰スキルが増えている。全部で5個だ。
スキルはこの世界での俺の生命線なので、内容をちゃんと確認しなければいけない。
・・・いけないのだが、俺自身は別にスキルとかに燃えるゲーマーではないので、ひたすら面倒でしかないのである。出来ればやりたくないしサボりたい・・・。
が、そうも言ってられないので、何とか宿のベッドの上で、ラナさんのおっぱいに癒されながら、その作業をしようというわけだ。
つまり努力という苦痛を、おっぱいという癒しで相殺しながら、何とかスキル確認をしようというわけである。
ちなみに、ざっとレベル2に上がって獲得したスキルを一覧で見てみると、「帰宅部」とか「安眠」とか、「借りパク防止」といった変な文字が踊っている。
まともそうなのとしては、「極小攻勢防御」とか、よくわからんが「シェルター」とかもあるな。
どれも詳細な力はまだ確認していない。
あ、ちなみに、本当ならば現在の俺の充電状況は0のはずであるが・・・、
『レベルアップボーナスでポイントが付与されました。怠惰ポイントに1000ポイントが追加されますた。計画はご利用的に』
とのことである。
これは助かる。怠惰ポイントは一時間ダラダラしてやっと10しか貯まらないので、なかなか充電が進まないからな。
ふむ、それにしてもこの「アナウンス」にしても、確かダークオークとの戦闘の時に、俺のことを「マスター」とか言った気がするな。
もしかしたら、何か重大な秘密が隠されているのかもしれない。
それこそ、俺の持つ能力とつながってくる重大な何かが・・・。
だが・・・、
「・・・・・・・・・ま、いっか!」
うん、別にどうでもいいな。
残念ながら俺にはそんなことを探求するような好奇心は存在しない。
それよりも今日はすでに努力しすぎている。さっさとラナさんのフカフカおっぱいに顔をうずめてゴロゴロするとしよう。
「ご主人様、ここで宜しいですか?」
「うん、ここにしよう」
はい、と天使のように微笑むお姉さんと一緒に宿へと入る。
うーん、かわいい。ちょっとお姉さんで、ちょっと背が高いのがまた良い。
ま、それはともかく、俺たちはカウンターにいた受付のオヤジに宿泊を願い出たのである。
しかし・・・、
「み、身分証ですか?」
「そうだよ。ここじゃあ大体身分証の提示をするよう求められるんだ。まぁ、娼婦街の安宿とかならワケありモンが多いだろうから、そんなことは無いだろうがね」
ふーむ、そうなのか。
どうやら前回の宿は奴隷商のワムさんが口を聞いてくれたおかげで、身分不確かな俺でも宿泊出来たわけか。
「も、申し訳ありません、ご主人様。私もそういったルールだとは知らなくて・・・」
「いやいや、別にラナさんのせいじゃないよ。でも罰としてあとでお詫びのキスを一回すること」
「え? は、はい! それは喜んでさせていただきます! ・・・ですが、どうされますか? 以前の宿に戻られますか」
うーん、それはやめときたいな。
今戻ると騎士団がまだいるだろうから、ちょっとややこしいことになる気がするんだよな。
俺としては平穏に暮らしたいだけなので、出来るだけ騎士団からは距離を置きたい。
というか、ちょっと目立ちすぎた。
サンクチュアリが犯されたが故に致し方なかったから、反省は全然していないが。
けど、今回のことが今後あまり大事になるようだったら、いっそ別の街が国に移動したいところだ。
「ああ、お前さんがた、そんなに重く受け取らえんでもええよ」
宿の主人が見かねて口を開いた。
「と、言いますと?」
「お主らのその格好、カタギではなかろう? ならば冒険者登録をすればええ。ギルドの方で簡単に冒険者カードを作ってくれるでな」
「うーん、冒険者ですか?」
働くのはちょっと・・・。
「なに、危険じゃと思っておるのじゃろうが、何もクエストがモンスター退治だけというわけではない。薬草採取やお使いのような依頼もあるでな」
いや、そういう心配はしていないんだが。
「ご主人様には修行がありますからね・・・。どうでしょうか、奴隷の私が冒険者登録をして、日銭を稼いで参りますが」
ラナさんの仕事は俺に癒しを与えることですから。
「まあ登録だけしてくればどうじゃな? 別にクエストを無理に受けなければよかろう? 依頼を受けるかどうかは強制ではないのでな」
ああ、それもそうか。目下、宿に泊まるためにはカードを手に入れるしかない。
俺はオヤジさんに礼を言って、説明された冒険者ギルドへと向かうことにする。
オヤジさんは手を振って奥へと引っ込んだ。
あ、そうだ忘れ物。
「ラナさんラナさん」
「はい、なんですか? ご主人様」
「罰を忘れてないか?」
「あ! そうでしたね。・・・それでは失礼致しますね」
ラナさんがうっとりとした表情で俺を引き寄せると、優しく抱きしめて、おっぱいの谷間に顔を埋めさせた。
そして、そのままの体制で密着するようにぎゅーっと抱きしめる。
「はぁ、ご主人様の匂いに満たされる気がします」
それは俺のセリフである。
しばらくそうしてから、ラナさんが俺の顔を上げさせると、ゆっくりと味わうようなキスをしてきた。
・・・なんかめっちゃ情熱的だな・・・。
軽くキスだけしてもらうつもりだったのだが、ま、コレはコレで気持ちいいから良いけど。
「さっきのモンスターとの戦闘。本当に素敵でした。格好良かった・・・」
ああ、そういうことか。
ちょっとは良いところ見せられたかな?
「ご主人様は最高です。何度も私の命を助けてもらった上に、街まで救われて・・・。ちゅっ、ずっと私のご主人様でいてください」
それはもちろんだが、むしろラナさんこそ怠惰な俺に愛想を尽かしそうだけどな・・・。
そんなことを言ったら、なんだか更に積極的になってしまった。なぜだ・・・。
とまあ、そんな風に少しばかりイチャついてから、俺たちはギルドへと向かったのであった。
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