第4話 婚約破棄

歓迎会が始まり,早数時間,村の人達はこの村にとっての贅沢品や高級品などをこれでもかと献上していた。

しかし、クロスは彼女達と何も話さないため村人達は少しずつ疑問を抱いてきた。

時折村人の1人が彼女達に

「行かなくていいの?」

っと聞くが

彼女達「..........」

途端に不機嫌になり、すぐに勇者にベタついている。

まるでクロスの事を汚物のような目で見ながら、そんなことを繰り返すうちに、誰もクロスのことを言わなくなった。


それからしばらくして,村の人達の歓迎会も終わり彼女達と勇者は幼馴染みのミクの家に向かった。(と言っても隣の家はクロス達の家だが)


ミク「ここが私の家です。勇者様❤️」


マンル「ふーん、なんかボロいなぁ、君が住んでいたとは思えないよ」


ミクはマンルの腕に抱きつきながら言い,マンルはあからさまに嫌味を込めて言っていた。

昔の彼女ならこれで怒っていたのだが、やはり、人が変わったように態度が変わっている。

たしかに(クロスは見てないが)王国となればこんな家なんぞスラム街にあってもボスの家ぐらいに見えるかもしれないがここで生まれ育った家なのにここまで無関心だと少し悲しくなってくる。


メミル「それじゃあ私たちは勇者様と一緒に泊まるから,あんたはミクの親達と一緒にそっちで泊まって」


クロス「は?」


セシル「は?ってなによ?」


クロス「いやいや,義父さんと義母さんに会わないの?それにおじさん、おばさんを家に?なんでだよ。」


メミル「あんたのようなろくでなしを育てた親なんて,会いたくないわよ、それにあの歓迎会だって勇者様が仕方なく付き合ってあげてたの,本当だったらこんなボロ村誰が行きますか。」


セシル「それになに?あの食材と飲み物あんなのを私達に渡すとか馬鹿じゃないの?,服もボロいし髪も顔も汚い,あんなのただの罰ゲームよ。」


義姉も義妹もここまで言うなんて、村の皆んなは彼女達が帰ってくるのを楽しみにしていた,数日前からずっと準備して少しでも故郷に帰ってきたと思ってもらえるように努力してきた,なのにこれはあんまりにも酷すぎではないか、


クロス「.........」


クロスは最早呆れて何も言い返せなかった。ここまで人は堕ちることができるのか?たった1年でここまで人は変われるものなのか?


家を馬鹿にして,家族を馬鹿にして,村の努力を馬鹿にした。あの頃の彼女達はどこに行ったのだ?


マンル「君さぁいい加減してくれないかな?僕達は疲れているんだ,さっさとミクの家にいる”邪魔者”をどっかにやってくれるかな?」


邪魔者......ぷち

この瞬間何が切れた


クロス「.........取り消せよ」


マンル「は?」


クロス「今の言葉取り消せよ、」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


マンル「...へ?」


もう我慢の限界だ、"こうなる事"は想定内だが、ここまで屑だとは思わなかった!家族を馬鹿にされて怒らない奴はいない!!!!!


クロス「取り消せと!」


クロスは右手を握りしめて腰を低くし,マンルに目掛けて


クロス「いってるだろぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」


ドゴーン!!!!


マンル「グフゥ!!!!!!!」


腹パンした


マンルは勇者だ,普通の人間,しかも村人の攻撃は止まって見え、蚊が刺した程度の痛みしかないはずだが、


マンル「あ,あ,あ,....がぁぁぁぁ!!!!」


言葉を発するのもきついのかくの字になり悶えている。

そしてしばらく何が起こったのかわかっていなかったが、状況が読めてきたのか,はっ!となり


ミク「マンル!マンル!しっかりして!」


メミル「大丈夫!?セシル!!!」


セシル「うん!わかってる!」


すぐにマンルのところに行き,メミルがセシルになにかを頼んだ,

そしてセシルがマンルの身体を触りだすとマンルの身体が光出した


クロス(成る程、ね)


そして数分が経つと


マンル「ありがとう、お陰で助かったよ」


セシル「いえ,貴方が無事で良かった❤️」


マンルはセシルの頭を撫でると雌猫のように媚を売っていた。何故かそれにメミルがむぅと気持ち悪い甘ったるい声でマンルに抱きつき、ミクは顔を膨らませて怒っている。

今までのクロスならそこの立場にいたはずだが、

今のクロスからすると


クロス「気持ち悪い」ボソッ


吐き気がするくらい軽蔑するのものだった


それからしばらくしても自分の親もミクの親も出てこないことから多分家にいないのだろう,もしいたらさっきのクロスの叫びですぐに家から飛び出す筈だ。

それに少し安堵しながらクロスは目の前にいる彼らを見る


それに気付いたのか、彼女達がこちらをキッと睨みつける。


セシル「...ねぇ、なんでマンルを傷つけたの?」


さっきまでは勇者様と呼んでいたがいつのまにかマンルと呼び捨てになっている多分、こっちが素なんだろう。


メミル「返答次第によってはただじゃ済まないよ?」


家族を馬鹿にされているのに、こっちが悪者みたいになっている。


クロスが何か言おうとした瞬間ミクの口から思わぬことを言われた。


ミク「これが"元"婚約者なんてほんとに嫌だわ。」


..........は?元?


クロス「どう言うことだ?」


婚約して欲しいと言ったのは彼女達なのに何故?まさか....!


マンル「ククッやっと能天気なお前でも飲み込めたようだな?全てはミクの言う通りだ,僕の本当の狙いは君の婚約破棄だ,僕と正式に婚約するためにこのような事をしたのだ,君が彼女達の婚約者などとその気になっていたお前の姿はお笑いだったよ。」


つまりはこう言いたいのか、彼女達は俺じゃなくあいつと婚約したいからわざわざここまで来て,自分の絶望した顔が見たかったと?


.....どこまでも腐ってやがる!...けど


クロス「.....わかったよ,じゃあ最後に1つ」


そう言うと,少し間を置きそして


クロス「君たちは婚約破棄を俺としてまであいつと結婚したいんだな?」


これが最後の慈悲だ


ミク「ええ!」

メミル「勿論!」

セシル「当然!」


即答かよ、


彼女達「私達は勇者様と結婚するわ!」


クロス「そっか」


まだだ,まだ耐えろ、


クロス「じゃあ、...俺は.家族..に婚約破...棄になったことを..言う...よ。」


そう言ってる姿が悲しみに耐えているように見えたのか、嘲笑うかのようにこちらを見ている。

そして


マンル「ククッじゃあ皆んな行こっか?」


ミク「はい!」

セシル「はい!」

メミル「はい!」


そう言って彼女達は家の中に入っていった。1人残された俺は家族の元に行き,ことの顛末を伝えに行った。


クロス「....................クッ」


————————————————————

クロスは16歳

ミクは16歳ー剣聖

メミルは18歳ー聖女

セシルは14歳ー賢者

マンルは17歳ー勇者

 です。

彼女達は王国で正式に鑑定してもらい,自分の職業がわかり,1年間それに特化した訓練と実践をしてきました。





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