第5話 追放提案と後輩との密談

晩餐が終わり、各自部屋に案内させることになった俺達。

だが、俺だけ他の方向へ案内されている。

 「あの?どこへ行くんでしょうか?」

恐る恐る聞いてみると、前を案内していた兵士がこちらをチラリと見た後不機嫌そうにいう。

 「これからお前には王からの話がある。黙ってついてこい。」

どうやら、俺の職業は嫌われるくらいに悪いらしい。タクヤが王に言ったのもあるんだろうが。

しばらく歩き、一つの部屋の前でとまり、兵士がドアをノックする。

 「連れてまいりました。」

 「うむ、ご苦労。入りなさい。」

兵士がドアを開き、俺を前にだし、入室する。

中は机が2台あり、書類と筆記用具がおかれていた。どうやら、執務室らしい。

部屋いたのは王と、髭をたくわえた目のするどい細身の男だった。

 「よくぞきてくれた。このものは宰相のディンス。」

 「宰相のディンスともうします。今回、およびしましたことですが、提案があります。」

 「提案?」

 「はい、提案というのはあなたのこれからのことです。今回、フリーターという職業になられたことで問題がありまして、他の四人は戦う力があるのですが、あなたにはそれがありません。あなたも足手まといになるのはいやでしょうから、魔王を倒すまで、城を出て、城下町にて生活してもらうというのはどうでしょう?」

 「それは追放ということでしょうか?」

俺の答えに後ろの兵士が反応したのか、腰に装備した剣に手をかける音が聞こえる。

それを制して、宰相が否定する。

 「いえいえ、違いますよ。あなたに何かあると他の4人も心配でしょう?城の中では多数の人間が行き来しております。何か間違いがあるとも限りませんので・・・。」

脅迫というよりは忠告か。確かに後ろの兵士のように手を出す奴がいるかもしれない。ここは従うしかないか。

 「わかりました。ただ、スミレさんにだけは事情を話していいでしょうか?」

 「聖女ですね、わかりました。では、君、案内をよろしく」

 「は!」

兵士は敬礼すると、俺を先導して部屋を出ていく。

 「では、こちらが聖女様の部屋です。」

今度は兵士は部屋外で待機するらしい。俺はノックして返事を待つ。

 「はい?誰ですか?」

 「カサネだが、今いいか?」

 「あ、はい、今開けます。」

ドアが開くと服を着替えたスミレがいた。

 「お邪魔していいか?」

 「はい、どうぞ。」

俺は部屋に入って、ドアを閉める。

部屋の中には机、イス、ベッドがあり、俺はまず、机に向かい、紙とペンをとり、そこに文字を書きながら、スミレに話す。

 「どうしたんですか?」

 「実は俺はこの城を出ることになった。」

 「え?どういうことですか?」

 「俺はここにいてもどうしようもないからな。」

まず、書いた文字を読ませる

『話を合わせてほしい。俺はこのまま、ここにいると処分される。』

 「!これからどうするんですか?」

 「城下町で過ごしてほしいそうだ、支援もされるだろうし、大丈夫さ」

『ここは相手の考えにのって、帰還方法を調べていく。ないならこの世界で生きていく地盤をつくるつもり』

 「それは寂しくなりますね。」

 「俺も寂しいさ、けど、世界の平和には変えられない。」

『この城の連中は信用するな、でも、反抗はしない方がいい。何か手を出してくるかもしれない。』

 「わかりました。では、魔王を倒すまでお別れですね。お元気で先輩。」

 「ああ、そっちも元気でな。」

『何かあれば、助けにいくからな。』

ここまで書いてスミレに見せて、書いた紙は自分のポケットに入れておく。

そのまま、お互いに納得するようにうなづき、ドアを開ける。

 「もう、いいのですか?」

 「ああ、もういい。」

兵士は壁に張り付いたままだった。多分、聞いていたんだろうな。特に不信に思うこともしてないだろう。興味なさげに俺を割り当てられた部屋へと案内した。

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