第17話 一緒に

「うーん。これは駄目ですね。ここで直すのは無理ですよ」

「そうか。近くの街までは、歩いて行くしかないのか」


 壊れた馬車の前に立ち、そんな会話をするゲオルグとタデウスの二人。私は、その近くにある木の根元に腰を下ろして、ラインヴァルト達の帰りを静かに待っていた。メイド達は、私のそばに控えている。


 私達の護衛として、ラインヴァルトに待機を命じられたアレアは、周囲を警戒してくれていた。


 皆の様子を見ながら、私は考え事をする。


 盗賊に襲われて不運だったけれども、冒険者達に助けてもらったのは幸運だった。馬車は壊れてしまったけれど、全員が何の怪我もなかった。


 私は、幸運なのか不運なのか。


 そもそも、運なんて不確かなもの。どちらなのか決めることなんて出来ないはず。しかし、私は不運だと言われてきた。今回も、それが原因なのでは。そうだろうと、考えてしまう。だけど、どんなに考えても答えは出ない。




 そんなことで思い悩んでいると、ラインヴァルト達はすぐ戻ってきた。一台の馬車を連れて。


「ラインヴァルト様、ご無事ですか?」

「あぁ、問題ない。こっちは簡単に片付いたよ」


 駆け寄って声を掛けると、彼は微笑みながら頷き、そう答えた。


 この短時間で、盗賊達を一気にやっつけてしまったらしい。仲間の人達を見てみると、怪我をした様子はないので安心した。彼ら、かなりの実力者らしい。


「俺達が乗っている馬車を連れてきた。これで君達を、近くの街まで送るよ」

「よろしいのですか?」

「もちろん! こんな場所で見捨てるなんて、出来ないさ」

「ありがとうございます」


 そこまで助けてくれるなんて。頼り過ぎだと思ったが、困っているのも事実。私は頭を下げて感謝しながら、彼らのご厚意に甘えることにした。




「ちょっと狭いが、我慢してくれよ」

「大丈夫です。乗せてもらえるだけ、ありがたいですから」

「そうか」


 ラインヴァルト達の馬車には、彼らの旅の荷物が積み込んであった。そこに、私達の荷物も載せてもらった。


 なので彼の言う通り、狭いのは確かだった。だけど、乗せてもらえば歩かなくても済むので助かる。私の体力だと、街に到着するまでに疲れ果ててしまうだろうから。


 メイド達も馬車に乗せてもらい、執事と御者は歩いてくれるようだった。そして、ラインヴァルトも。女性を優先してくれて、とても紳士な人なんだと思った。


 冒険者って乱暴な人のイメージがあるけれど、貴族のような振る舞いをするのね。


 ということで、ラインヴァルト達の馬車に乗せてもらった私は、近くにあるという街まで、彼らと一緒に向かうことになった。

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