残念スキルだったので冒険者になるのは諦めて薄利多売で地道に稼ぐことにした

安佐ゆう

第1話 転生したら外れスキルでした。

 俺の名前はディル。

 二十六歳、独身。こう見えても王都に自分の店を持ってる。小さいけどな。

 実は俺にはちょっとした秘密がある。

 それは前世の記憶。

 前世持ちと呼ばれる人が、この世界には時々現れる。前世持ちの特徴は魔力量が普通の人より多いことと、珍しいスキルがあること。

 庶民には正確な魔力量を測る機会はないが、俺も魔力切れの経験はないからきっと多いはず。

 ただ残念ながらスキルが外れだった。


 前世の記憶を思い出した時は、俺のスキルも捨てたもんじゃないと思ったさ。

 外れスキルで無双する話は多かったし、俺のは、まさにテンプレっぽい外れスキルだったから。

 でも現実は甘くない。

 十六の時に一攫千金を夢見て冒険者ギルドに入る。けど当時は前世の記憶を思い出したばかりだったし、まだ戦い方もそんなに慣れていない。俺のスキルはスライム硬化。テイム系のスキルだと思うんだけど、その辺にいくらでもいる弱キャラのスライムを固くできるというただそれだけの能力だった。固くなっただけのスライムに攻撃力はない。当時も一応防御には使えたから、怪我はしなかったけどね。

 魔物に出会っても、へたくそな剣を振り回すだけ。

 お情けで入れてもらったパーティーのメンバーには一月で愛想をつかされてクビ。ソロでやれる自信もない。

 結局俺は冒険者ギルドをやめることにした。

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