第41話 初デート

『今そちらに向かっています。まだサイゼリアですか?』


『うむ、話は済んだ┐(´д`)┌ヤレヤレ 気をつけて参れ(`・ω・´)シャキーン』


 なんだかんだ忙しくて長い一週間だったな。いつもは一週間なんてあっという間に過ぎてしまうのに……。土曜日になにか予定を入れる事自体久しぶりなのに、今日という日はさらに私にとって久しぶりなイベントだ。


 彼と会うのは初めてじゃないのになんでこんなに緊張するんだろう。三十にもなって一人の男性とただどこかへ出かけるだけなのに。ふぅー。駄目だな私って。


 駅前の交差点の向かいにあるサイゼリアで信長さん達はいる。誰とどんな話をしたのか全く検討もつかないけど……。


 信号が青になったので横断歩道を渡ろうとした時、見覚えのある男性が奥からこちらへ向かってきている。あれ……もしかして。スマホを見ながら歩いているから確証はないけど。


「あの……光安さんですか?」


「ん?……えーっと。誰だっけ?」


「あ、以前飲み会でお会いしましたよね?奈々ちゃんと一緒に参加させてもらった斎藤雪です」


「奈々ちゃんと一緒に……。あーっ!なんだユッキーか。ビックリさせないでよもう。急に美人なお姉さんから声かけられたからナンパされたかと思ったわ」


 うん、相変わらず軽いのね。


「え、何してんのこんなところで?」


「これから人と会うのでサイゼリアに向かってます」


「……え?なんでサイゼリアで待ち合わせなんかしてるわけ?誰と会うの?まさか俺の知ってる人とかじゃないよね?」


 サイゼリアで待ち合わせしちゃ駄目な理由が全くわからないけど、それよりも私なにかまずいことでも言った?この過剰な反応はなんだろう。待って、光安さんがここにいるってことは……もしかして信長さんが会った相手って光安さんだったの……?いや、でも信長さんのメールの内容では…


と会ってくる( Д ) ゚ ゚それを終えてから会おう(゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ』


 としか書いていなかったから光安さんと会うのであればあんな書き方しないと思うけど……。うーんどうしよう。なんて答えるのが正解なの。


「私の友達ですよ。光安さんは私の友達を知っているんですか?」


「いや……。まあ知らないけど。ね。ふーん」


「では、友達が待っているので行きますね」


「……オッケー。また今度奈々ちゃんも誘って一緒に飲もうよ。じゃあね」


「はい、では失礼します」


「あ、もし信長達と会う機会があっても今日俺と会ったことは内緒にしててもらえるかな?」


「え?あ……はい。それは全然構いませんけど。どうしてですか?」


「いやいやユッキーは気にしなくていいよ。とにかくよろしく!じゃあね」


 そう言って光安さんは足早に去っていった。


 _____________________________


「いらっしゃいませ〜。一名様ですか?」


「あ、いえ。知り合いが既に中いると思います」


「失礼しました〜。では中の方でお連れ様をお探しください」


 店に入ると一番奥の席になぜか男性二人が横並びで座っている席が目に入った。あの後ろ姿は次郎さんかな?


「すみません、お待たせしました」


「あれ、雪さん!?どうしてここに?」


「儂が呼んだのじゃ。ご苦労だったのう」


「苦労も何も私はただここに歩いて来ただけです」


「急に雪さんが来たのでびっくりしました。それよりもあのー、おめでとうございます。信長様に聞きました。お二人が付き合うことになったって」


「いやいや付き合うと言ってもまだ何か変わったわけではありませんし」


「そんなことはなかろう。儂は彼氏に、お主は彼女になったのじゃ。それに、もう儂はお主のことを雪と呼ぶようになった。文通もしておる。大きく変化したではないか」


「次郎さんの前で堂々と恥ずかしいことを言わないでください。文通っていうのもなんか嫌です」


「まあまあ。仲良さそうでなによりです。ではでは、要は済んだし俺はもう出ますね」


「あれ、もうどなたかとの話は終わったんですか?」


「ええ、まあ終わったというか。ミッチー覚えています?あいつと会って話してたんですよ」


「へぇーそうなんですね」


「その話はもうよい。では雪よ。儂らも参るか」


「あ、はい」


 やっぱり会っていたのは光安さんだったんだ。でもなんで信長さんはって言ってたんだろう。聞いても答えてくれそうにないし……。うん、気にするのはやめよう。そんなことよりこれからどこに行くのか私は何も聞かされていない。というより信長さんがリードしてくれるのかどうかすらわからない。やばい、次郎さんがいないとやっぱり緊張するかも。


「次郎よ。お主、このあと何か用でもあるのか?」


「俺ですか?いや、特に予定はないですけど」


「ではお主も来い」


「え?」

「え?」


 え、嘘でしょ?信長さんとの初デートにまさかの次郎さん参戦!?ま、まあ緊張はほぐれるし私はいいけど……。


 私に気を遣って最初は遠慮していたけど、私も全然構わないと伝えたところで次郎さんの参加が確定した。

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