禁書を書くスタイルの作家

 いつも公募作の下読みを手伝ってくれる友人達をして、徐々に言わしめたのが表題の内容だ。

 いや、自分では禁書――というか、預言書を書いているつもりはない。

 だが世間はどうにも、私の作品に引きずられることが多い……ような気がしてならない。と言うのだ。



 処女作の『神のまにまに』を書きあげた時のこと。

 京都をモチーフにした京都の話だから、京アニ大賞さんに送ろうと、素人の分際で何も考えずに応募した。

 そしたらあの事件だ。

 まさかの京アニさんが大変なことになった。

 そのまま作品は宙ぶらりんとなり、選考がどうなるかすら不明であった。

 干ばつから未曽有の豪雨が襲い、街は龍神の脅威に晒される――的な話であったが、同年のニュースでは梅雨もほぼ降雨がなく、河口湖が干上がる程であった。

 ところが秋も終わると台風が襲い、京都の貴船や鞍馬を繋ぐ叡山電鉄さんは倒木や土砂崩れで復旧まで大幅な時間を要した。



『あの娘に「すき」と言えないワケで』の時は、いよいよ禁書作家としての牙が下読みをしてくれる友人達に向く。

 主人公が恋心を寄せていて早くに亡くなった、村の同窓生『由宇』。彼女の存在と病死が主人公を恋に臆病にさせていた――という展開だが、下読みB君の既知の仲である『ゆう』君(漢字も違う男の子)が、この作品の下読み中に亡くなったそうだ。

 そのショックから、彼はしばらく、この作品を読むことができなかったという。

 オマケに主人公と同名の『孝志』(こちらも漢字は違う)を父に持つ下読みA君は、その父『たかし』が大病を患い、なかなかの大手術だったと聞く。



 公募用に書いたカクヨム未発表の新作では、悲劇的なヒロインが転落死をしたことで物語が始まる~的なスタートであったが、某タレント二世の著名な女優さんが同じく転落死を遂げてしまった。

 加えて、禁書の効果は次第に作者自身をも襲い始めたのか。

 なんだか読んだこともないけど、よく似たエピソードの小説原作のドラマが某チャンネルでスタートする、という話を見て、私自身も選考に影響が無いかドキドキしている始末だ。



 いま一番怖いのは自分のことだ。

 あるフォローしている作家さんのエッセイを読んでいたが、ここ最近、自分にも似た事が起きてしょうがない。

 それはどうにも鼻のあたりで線香のかおりがフワッと漂うことがあるのだ。

 その場所は線香と全く関係なさそうな、通勤の電車の中であったり、職場であったりといった具合だ。

 それがほんの一瞬だったり、数時間~ふと気づけば一日じゅうくらい続くこともある。でも帰宅するとパタリとやむ。

 だから我が家は守護霊やご先祖様に守られているのかな、とちょっと安心する自分が居る。


 こうなると、あれこれ描写するのも怖くなる。


 あんまし負荷を掛けずに、ノンストレスで、現実ベースに寄せた作品ではないものをのんびり執筆したいものですけどね。でもそういう作品は今度は他の作家さんとのネタ被りの恐怖とも戦わないといけない訳だし。では少しばかり奇をてらってエッジの効いたものを書こうとすると、やっぱし尖ってしまう。

 困ったものですな。

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