第7話 制約と相棒




「──なあネロ、一つ提案なんだがお前と契約コントラクトして簡単に手に入れる力なんてごめんだ。でも自分で頑張って「努力」した先に手に入れる力だったら俺は欲しい。だが俺も一回試した様に人の「寿」で鍛えられるものなんてたかが知れている。それに年齢を重ねる毎に体が衰え「」していく。それを止められる事がお前には──出来るか?」


 幸太の話を聞いていたネロは珍しく少し考えるそぶりを見せた。


「──ふむ。幸太君?君が言いたい事は要するに僕の力で「寿」や「」を止められないか?という事で良いのかな?」

「あぁ、そうなる。お前にそれが出来るのか?」


 聞いてみると、ネロは頷いた。


「それだったらお安い御用さ!でも、そんな事をして君に何の徳があるんだい?いくら鍛えても「努力」しても君自身では「スキル」を手に入れる事が出来ないんだよ?」


 「無理だろうな」と思って言ってみたが出来るらしい。


(それに俺が「スキル」を手に入れられない事なんてもう知っている。だけどどうしても諦められない事が、俺にもある)


「だとしても。それに幾ら頑張っても俺には「スキル」を手に入れる手段が無いのもわかっているんだ。でも、でも諦めたくない──「努力」して得た経験・技術培った物は自分を裏切らないと思う。それに「スキル」や「ステータス」なんて無くとも数字なんかじゃわからない強さを俺は……証明したい!」

「──成る程。「努力」して得た力か、そんな事僕も考えた事無かったね。こちらの世界地球彼方の世界異世界ノクナレアも普通だったら「スキル」や「ステータス」で決まる世界だからね。でも君にはそのどちらもない、なら他の方法で強くなれば良い……か」


 ネロも幸太が言いたい事を理解してくれたのか頷いてくれた。


「──「寿」や「」を止めるという事は永遠に自分の体を鍛えてその先に何があるか確かめたいんだね、幸太君は?」

「そうだ、それに誰もやった事がない?それはその機会チャンスが人間には一生訪れる事が無いからだ。ならそれを出来たらどうなる?……もしかしたら何も起きないかも知れない。その行動は無駄になるかもしれない。だが、俺はそれでも強くなりたい。例えその先に何が待っていようが、幾ら辛かろうが……苦しかろうが!」


 自分の胸を強く握ると胸の内を全て吐き出す様に幸太はネロに伝えた。

 静かに聞いていたネロもその問いに応えるべく口を開いた。


「……僕にはそれが出来る。でもこれは契約コントラクトとは別に制約レミテーションと言うものを幸太君と結ぶ必要があるんだ。その理由がさっき言っていた「寿命」とかを止める事に関わってくるんだ。僕の能力の一つでもある「不老不死ふろうふし」の力を君と共有すれば簡単に達成出来ると思う。けど、この能力は唯の人間には適応しない、だから君と共有する為のパスを僕と繋げるために制約レミテーションを結ばなくちゃいけないんだ」


 何かまた難しい言葉が出て来た為、幸太は聞いてみることにした。


「その、制約レミテーションってのはやっぱり何かあるのか?」

「ああ、条件はあるけど今回は君の願い事だからね、特別に無い事にしとくよ!でもこの制約レミテーションを使うと君と僕は一心同体パスが繋がる状態になる。別に合体するとかじゃ無いんだけど、ある一定の距離しか離れられなくなるんだ。まあそれぐらいかな?どう?僕と制約レミテーション結んでみる?」


 条件は無いのか。別にネロと離れられないのなんて屁でもねぇしな。


「俺はネロ。お前と制約レミテーションを結びたい!」


 幸太の言葉を聞くと、ネロは満面な笑顔になった。


「どうやら迷いがない様だね。──良いとも!君の願い事は叶えるとも!それにこれは特別だよ?君と「不老不死」を共有しても負った怪我は再生するわけじゃない、だからその時は僕が回復させてあげよう!どうだい?僕って優しいだろう?」

「はいはい、優しい妖精王様で有難いです」

「もう!もっと慕ってよね!!」


 幸太の言葉にプンスカと怒っているネロだが、見た目以上に怒っている感じはない。

 逆にお座なりな対応をされて嬉しそうにしているまでもある。


(……こいつM変態か?)


 なので幸太は内心で変な事を考えてしまった。決して口には出さないが。


「まぁ、おふざけはここまでにして。それじゃあ制約レミテーションを結ぶよ?」


 ネロがそういうと、目を閉じてぶつぶつと何かを唱え始めた。

 その瞬間、幸太とネロを囲む様に幾何学模様の魔法陣の様なものが2人を囲み出した。


「──ッ!……これは?」


 幸太が驚いている中、ネロは詠唱を辞めない。


「──『此処ここ制約レミテーションを結ぶ いついかなる時も不動ふどうであれ 何時不屈ふくつであれ そして我等僕ら──二人は共にあれ!』!!!」


 そんな言葉を紡いだ瞬間、幸太とネロを中心に囲んでいた魔法陣の様なものから眩い光が照らした。

 その瞬間両者の右手首に鎖の様な物が結ばれた様な気がした、これが制約レミテーションで出来たパスなのだろう。

 2分程2人を中心に光っていたがようやく収まり目が見える様になって来た。


「──これで制約レミテーションは結ばれたのか?なんかあまり実感が湧かないんだが……」


「ちゃんと制約レミテーションは結ばれたよ。実感が湧かないのはしょうがないかな?僕達の右手首に鎖の様な物が結ばれたんだけど一瞬だったからね〜まぁでもこれで君と僕は一心同体パスが繋がった状態だ。これからもよろしくね、工藤幸太君!」


 小さな手を幸太に向けて来た為、人差し指を出して握手した。


「ああ、俺こそこれからよろしくなネロ!最初は胡散臭い奴だと思ったけど案外良い奴だったんだな!」

「それは心外だよ!僕は初めから心優しい妖精王さ、それに今から君と相棒どうしだ、君がこれから何を成すのかとても楽しみだよ!」


 そう良い2人は暫く笑い合っていた。

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