第17話 宴

ヘトヘトになってしまった。


一応敵の気配を探る。

魔石を回収しながら敵の反応があった場所へと向かう。


「魔球」を投げた一匹目のゴブリンが瀕死の状態で倒れていた。


短剣でとどめを刺し、魔石を回収する。


短剣を持っていた奴を含め、六匹のゴブリンを始末し、魔力を吸うと、いつの間にか疲れも体力も回復していた。


そうすると、


トントントンッカラ

トントントンッカラ


祭囃子が聞こえる。


トントントンッカラ

トントントンッカラ


盆踊り?

祭りか?


トントントンッカラ

トントントンッカラ


一定のリズムが心地よい。足が自然と前哨基地へと向かう。


この辺りには危険な敵は見当たらない。何をやってるか?興味ある。


感情が、情熱が、ハレの舞台へ導いていく、

状況が、灯火が、後押しをする。


トントントンッカラ♪

トントントンッカラ♪


理由はない。呼んでいる。


この日、この場合、この時に、

俺を呼んでいる。



気付くとホブゴブリン前哨基地の中にいた。篝火が轟々と焚かれている。


ホブゴブリンが棍棒で、切り倒した丸太の幹に三回打ち込み、乾いた櫓の柱を掠って、また打ち込みを只繰り返す。


ドンドンドンガラ

ドンドンドンガラ


一心不乱繰り返す。


立派な鎧に身に付けたホブゴブリンのリーダーが櫓の上に立ち大声を上げた。


「オォ!!オォ!!オオォ〜!」


前哨基地全体が揺れた。


ドオォン〜〜ォォン


ホブゴブリン達が踏み締める足音に地響きが鳴る。


俺も涙を流しながら、声の限り叫び、

地面を踏み込んだ。


グルーヴが会場を飲み込み、全体意識が覚醒する。個々の意識は一つになり、櫓の上のリーダーは満足に頷くともう一度大声で叫んだ。



「オォ!!オォ!!オオォ〜!」


ホブゴブリン達もあらんかきりの声出す。


会場が割れた!!


音が消える。


満たされた静寂が世界を包む!


櫓のリーダー、ホブゴブリンが両手を広げて天を睨む!


全方向から全てが見えた。リーダーホブゴブリンの全てが全員の視界に入る。


それは前哨基地を越える程の大きさがあった。


櫓のリーダーホブゴブリンは光り輝き、鎧を破り膨張する。



進化した。


そして資格のあるゴブリン、ホブゴブリンが次々に光り始め、膨張し進化する。



ついでに俺も進化した。

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