第9話 ゴミの山

叫び声や足音が、逃げようとする通路の先から聞こえてくる。


反対側ははじめて戦う背の高い小鬼だ。


生き延びるには、背の高い小鬼をなんとか退け、その先の通路へ逃げ出す事が良さそうだ。


デカ鼻の魔石や杖も回収したいが、この状況から逃げ出す事が最優先である。


丸盾と短剣を握りしめて覚悟を決める。


背の高い小鬼も戦闘態勢を整える。


奴は背負っていた棍棒を両手で構え、振り上げながら突っ込んで来た。自分と間合いがかなり違って、のんびりしていたら避けることも出来ず、隙を攻撃しようにもぶん回す棍棒の射程と破壊力に接近を許さない。


叩きつけ、横に払う!その連続が丸盾と短剣の相性が最悪でただただ下がる事しか出来ない。


何も有効打が打てず時間を消費してしまう。


しかし向こうも焦れたのか?援軍の気配を感じた奴は再度威嚇の雄叫びを放つ!


こちらもビビるが、奴も動きが止まる。二回三回とやられれば慣れてくる。ましてや正面の雄叫びなどにビビることなどない!


丸盾を構え猛然と突っ込み奴を倒そうとした。


丸盾の前に棍棒が差し込まれ、ビタリと止まる勢い。時が止まったかのような一瞬、力と力の押し合いが始まる。


食いしばり、目を見開くが、奴はニタっと笑いやがった。そういえば魔力もなにも無かったんだっけ!


押しのけられ、身体が浮く!振りかぶった棍棒が真横に迫る!


丸盾で受けた衝撃で腕が粉々に折れ、短剣を手放し、身体ごと土壁に打ちのめされた。


「オオォ〜〜オォ!!」


会心の一撃が決まり、奴は吠えた!


ぼとりと壁から落ちるとゴミ捨て場だった。ゴミに埋り込み、身動きが取れない。幸いな事に奴からも身を隠せた形だ。


援軍の小鬼達が到着し、周りを取り囲む、これは絶体絶命!!


黒焦げの小鬼二匹に、足を刺されのたうち回る小鬼、胸を刺し貫かれたデカ鼻の小鬼は光の粒子になって消えていく。中々の惨状である。


驚いた小鬼達は思い思いに現場に散って敵の居場所を探す。


背の高い小鬼がもたもたしている間に夥しい数の小鬼が集まって来た。


邪魔な小鬼達をかけ分けるようにゴミ捨て場に向かうとある筈の敵の姿がゴミに紛れ分からない。


背の高い小鬼は棍棒を振りかぶると渾身の力でゴミの山を蹴散らした。


爆煙とゴミが散乱し、周りの小鬼達も吹き飛ぶ、


だが、そこには敵の姿もゴミの山も全て消え去り、何も見つける事は出来無かったのだ。


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