第7話 マジックバック

魔石の色を変えられる事は、とても重要だと思う。奴の魔石じゃなくて、半分自分の魔石が出来た様なものだからだ。


腹の底に渦巻く力も「魔法」と名付けると落ち着いて納得する。


後は常に意識して使える状態にしたい。そうすれば魔石ももっと活用出来そうだし、身体能力の向上が見込めるからだ。


動きながら魔力を感じる訓練を続けよう!


何か無いか?奴等の休憩場所を物色中にも絶えず魔力を意識する。


そこで、他の冒険者のモノだろうか?自分の背丈程の粗末な槍が2本とボロい丸盾を発見する。


槍は使えそうな気がするし、丸盾も必要だ。いつまでも背負い袋で攻撃を受けるのは心許無い。幸い持ち手に背負い袋の紐を通せそうなので、持ち運びも楽そうだ。


しかし槍は困った。今ある短剣も気に入っているし、槍も捨てがたい。両方とも持ち運べればいいが、背負い袋もあるし、無理なんだよな。


なんとかならんか?


背負い袋に短剣は入るが、流石に錆びた短剣でも袋に刺さって破くよな。


もしかして⁉︎


腰袋はどこまで入るのか?今まで片手でどうにか持てる程の魔石と同じ位のコインが今まで入っていた。


どう見てもパンパンに膨れて入りそうにないのに、しれっと入ってしまう。掌サイズのシンプルな革のポシェット。覗きこんで見ても真っ暗で何も見えない。始め何気なく手を突っ込んでなければ、怪しくて使えなかったと思う。


ベルトの腰袋の紐を緩め暗闇を覗き込む、おもむろに短剣を剣先から入れる。60センチくらいの刃が何の抵抗も無く呑まれていく。鍔の部分がようやく入り、とうとうグリップまでが消えてしまった。


うぅ〜ん、不思議な袋。


槍はどうだろう?スルスルと抵抗も無く入り、二本とも消えた。


丸盾はやはり無理だった。


驚きだ。大変便利だが、腰袋の入口に入るかどうか?大きさの制限はある。


この腰袋に自分の意識は入るのだろうか?魔力は動かせるのか?試したくてしょうがない。


腰袋に手を当て、ゆっくりと目を瞑る。


始めに闇だった。時間も空間も重さも

ぐちゃぐちゃで、とても意識を保てない。油汗をかき、目を見開く様にして戻ってきた。頬を叩き、両肩を抱き締め、ガタガタ震えた。


二度とごめんな経験をした。


あの魔石ならどうか?自分の意思が入った魔石ならどうなるか?


入れてみるとすんなり入り、他の物と同じ様に出し入れ出来る。


そしてうっすら存在を知覚出来る事を知る。ベルトの位置にある魔石がまるで右にも左にも後ろにもあるようで、全体がそうであるかのようで、確かに腰袋に存在が知覚出来る。


これはなんだと考える。亜空間?、ここでは無いどこか?


腰袋というゲートを潜り、今に存在しないどこかにアンカー、定着される。


自分の分身のような魔石が魔力を通して知覚出来ている。今ならこの魔石に意識が入れそうだが、本当にもうごめんだ。生物が上も下もないようなぐちゃぐちゃな場所に存在して意識など保てはしないだろう。しかしモノであるならば、情報と質量くらいで表せ、単純なので問題はないようだ。


ゲートは魔石に入った時に感じた「膜」

アンカーは自分の魔力を込めて

「魔石」

魔石の代わりはなんでも良さそうだ。


試しにコイン数枚に魔力を込めて腰袋に入れる。今度は先程よりはっきりと知覚し易くなった。三点以上の座標が知覚し易いようだ。


ベルトの腰袋の中にあるのに、至る所にもある。不思議な感覚。試しに魔力で動かしてみるが上手くいかない。しかし知覚することで引き寄せられる感じがする。


もしかして?掌に出現させられないだろうか?


そうか⁉︎ゲートだ!


膜!膜を作る。意識を腹の底に入れる。全体を光りで満たし、身体中に魔力を流すと、外界と身体の境界を感じる。魔石と変わらない。そうすると膜だ⁉︎膜を感じるぞ!同時に適当なコインを知覚する。掌に触れようとすると、掌に吸い寄せられた事がわかる。。魔力を媒介にして包み、掌とコインの間にバイパスを作る。黒点が現れ、徐々に暗黒のゲートが形成された。下から手を突っ込んでコインを掴み取った!!


腰袋のモノを自由に取り出す事はなんとか出来た。まだまだ時間か掛かってしまうが、今は充分満足。


方法は腰袋の亜空間に収納、取り出したい物を知覚しアンカーを引き寄せる。ゲートを開けて掴み取ればいい。当然、アンカーリンク出来ていない物は無理だ。


反対に亜空間に収納するにはどうするか?


入れたい物に自分の魔力を込めて、

腰袋の中のアンカーを探し、引き寄せてからゲートを開いて収納すれば成功する筈だ。


当然、魔力の込められていない物質はアンカーされないので、二度と取り出す事は出来無くなる。少し怖い。


このマジックバックの存在はこれからの探索に役立つ事間違いない。


始めから持っていたマジックバックは、自分は何者か?という問題と自分は何を成すべきか?という課題に対する大きなヒントになることは間違いないだろう。

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