第044話 意味深すぎる会話②(緋色視点)

「どうやら寝たみたいだね」


 夏美が独り言ちた後こっそりと身を起こす。


「緋色、起きてるよね?」

「え、ええ。ドキドキしてなかなか寝れないわ」


 私が起きていることを察して声を掛けてくる夏美に、私は自分でも顔を赤くしてるのが分かるくらい顔に熱をもった状態で答える。


「うんうん、そうだよね。私もドキドキしちゃったからね。まさか今日こんな風になるとは思わなかったし」


 夏美の同意するように腕を組んでウンウンと首を縦に振る。


 その度に夏美の大きな胸がブルンブルンと揺れた。


 あの大きさは女性として憧れるし、拓也君が夏美のオッパイに夢中になっているのも知っている。


 それよりも夏美の言っている、こんな風に、というのは二人とも拓也君の恋人になったということだ。


 それは私も未だに信じられない。未だに夢のようなフワフワとした気持ちで一杯になっている。


「それじゃあ、これから私たちのお勤めをするよ」

「お勤め?」


 私はニヤリと笑う夏美の言葉の意味が分からずに首を傾げた。


「そうだよ」


 夏美はそう言うなり自分で掛けた布団をはぎ取る。室内は快適な温度が保たれているので、寒いと言うことはない。


 そしてそこにあったのは、富士山とも言うべき代物だった。


「そうだよ。腫れた部分から膿を吐き出させてあげないと、とっても辛いらしいの」

「そ、そうなんだ」


 夏美は富士山を指さしながら悲し気な顔をして答える。私は富士山にさらに顔が熱くなった。


「うん、早速出すね」

「え!?」


 夏美は躊躇なく、富士山の雪化粧をすっかりとはぎ取ってしまう。


 そこには天に向かって聳え立つご神木が存在していた。


「お、おっき……」


 お風呂で拝んだ時よりもはるかに成長したそのご神木には、生命の脈動が感じられる。私も家族や、ネット上では普通に見れてしまうので、ご神木を見たことはあるけど、ここまで立派なモノは見たことがなかった。


「ふふふっ。すっごいよね」

「う、うん」


 夏美は初めてじゃないのか、ニコニコと笑いながら私の顔を見る。私は直視するのが恥ずかしくて少し俯く。


「それじゃあ、早速始めるよ」

「え!?そんなことしたら起きちゃうわよ!?」

「大丈夫だよ。たっくんはそんなことくらいで起きないから」


 ご神木を包み込んで体を上下させ始める夏美に私が警告したんだけど、分かってるとばかりに返事をする。


 やっぱり知ってるんだ。


 自分の知らない拓也君のことを知っている夏美に嫉妬するけど、それよりも目の前の光景の淫靡さに、自身のお腹の奥が熱を持つのを感じた。


「うんっしょ、うんっしょ」

「な、なんだか、さらに成長してない?それにビクビクしているよね?」

「うん、これが膿を出す傾向なの。もうすぐ出るね」


 暫く夏美が体を上下させていると、先程まではあまり見えていなかったご神体の幹が上から頭をだし、夏美が動くたびにブルブルと震え始めていた。


「ちゅっ」

「うっ」


 そしてそれから数十秒後、夏美が最後に富士山の火山口に口づけすると、火山が噴火した。


 勢いよく舞い上がった火山灰が、夏美の顔と体にに降り注ぎ、夏美の体を彩った。その姿はとても艶めかしくてドキドキさせられる。


「ちゅる」


 夏美はその火山灰を掬い取って吸い上げ、ごくりと喉を鳴らして飲み込む。噂によればとても苦くて美味しくないという火山灰を、夏美は嬉しそうに飲んでいた。


「な、何を!?」

「膿は飲んだ方が良いんだよ?」

「え?」


 私が驚愕していると、夏美は意味の分からないことをなんの疑問も持たずに言ってくるので、私は困惑しかなかった。


「そんなことより、次は緋色の番だよ?」

「はっ?」


 困惑している私に、追い打ちをかける夏美。


 さっきまで夏美がやってきたことを今度は自分がやる、ということを理解して私は驚愕を浮かべたけど、あれよあれよという間に身ぐるみをはがされ、未だに勢いが衰えることを知らないご神木の前に屈まされた。


 それにしても見れば見る程に立派なご神木に私は思わず息を飲む。


 しかし、これだけ大きいと私では上手く挟めそうにない。


「そういう時は、口を使うんだって」

「うっ」


 私もそれは見たことがあるけど、流石に初めてのことで躊躇する。


「私がやろっか?」

「い、いいえ、大丈夫よ」


 見るに見かねた夏美が私と変わろうとするけど、夏美ばかりズルいので私は意を決してご神木を口で優しく包み込んで動かした。


 数分もすると、ご神木は膨張して包み込むのが難しい程になるけど、我慢して続けていると、再びご神木である富士山が爆発する。


「うっ。ごほっ。ごほっ」


 私は勢いよく噴き出した火山灰が喉の奥を直撃して思わずむせるが、出された火山灰を外に出さないように全て口で受けとめた。


 口の中にねっとりと纏わりつく火山灰だったけど、いやな感じはせず、喉に絡みつくのを気合で押し込んで飲み込んだ。


「大丈夫?」


 夏美は苦しそうにしている私の背を擦りながら心配して顔を覗き込んでくる。


「え、ええ、大丈夫よ。物凄い生命の息吹を感じたわ」

「確かに膿が出る時の勢いって凄いもんねぇ」


 私は口元を拭い、口の中がねっとりとしているのを我慢しながら答えると、夏美は噴火の勢いを思い出しながら私の返事に同意した。


「それはいいんだけど、まだ膿が残ってるみたい……この前は二回で出し切ってたんだけどな……」

「え……」


 私が落ち着いた後、夏美はご神木を指さした。そこには未だ全く勢いが衰えることのない立派な姿でご神木が聳えたっていた。


 とんでもないエネルギーを持っているみたいだ。


 普通は一度噴火すれば治まると言われてるのに、二度噴火しても収まらないとは怪物なのかもしれない。


 そういうところに夏美が私も一緒に恋人にしようとした原因があるのかなぁ。


 私は漠然とそんなことを想った。


「今度はまた私がやるわね?」

「ええ」


 それからお互いに二度ずつ。合計六度の噴火を終えて、富士山の火山活動は鎮火するのであった。

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