Introduce

 次元衝突が起きた後でも、東京は相変わらず音がうるさい。


 それは、発展の証だから別に悪くはないのだが、逆に今までとなんら変わらない停滞という現実を突きつけていた。


 人々は行き交い、似たり寄ったりの形をした自動車が列をつくって走る。

 多くのビルが群れを成し、天へと聳え立つ。

 人々は交差点の上を歩く。

 方向はバラバラだと言うのにどこか美しさも醸し出ている。 

 夜に生きる街は、今は閑古だが日が暮れるにつれて蠢き始めている。

 鉄道も衰える事なく数分という間隔で人を運び、活発な活動を支えている。

 

 何気ない1シーン。


 東京にはあらゆるモノが集中しているのは当然の事。


 人も、建物も、交通も、情報も、流行も、政治も、科学も、技術も、軍事も。

 人の持てる限りの全てがこの東京に集っている。


 そしてもちろん、も集中していた。


 魔力とは、中世魔術による神秘の影響によって土地に溜まるモノ。

 マナやらオドやらといろいろ種類があるが、それらを使用には霊脈が必要である。

 神と魔術に関わる全ての土地が霊脈と接続出来る。


 その力を使用できる権限を持つのが魔術師であり現在でも尚、暗躍している。


 ——それはどの世界をとっても魔術師達の常識なのだ。



 さて日本列島は神に造られた島。そして八百万の神と各国の伝説、伝承を受け入れ、莫大な霊脈が約2,000年以上溜まりに溜まり続けた。

 だが、その土地に眠る霊脈は長い間放置されたまま。


 いわば日本の土地は可能性の塊。


 そしてその可能性を最大限に引き出す土地。

 それが東京。

 

 ならば——東京という霊脈の宝庫を使わない手はない。

 

 その考えを思いついたのは、人類に対する粛正の為か。はたまた、ただの愉快の為か。


 真意は分からない。

 ただ、東京に混沌を生み出せる事は確実に想定されていた。


 現にそうなってしまったから。

 人々は想像力を蓄えすぎたのだ。


 故にこの私達は最悪の結果を生み出してしまったのかも知れない。


 鉛の味がした。雲を顔から浴びた。緑色の炎がチカチカと明滅した。 

 空気が重なる衝撃に多くの人々が行動を止めた。

 違和感と共に、世界は混ざった。


 そして、東京は異形の獣に襲われた。


 異世界と呼ばれるファンタジー世界において典型的なモンスターが、東京の各地に現れた。


 人間を襲い、喰らい、犯し、蹂躙する。

 あの時間を忘れてはならない。


 そして人間の代表者として歴史に刻む。

 かの化け物たちの襲撃を“災厄”と称して。

 

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