第2話 プロローグ 2:差し伸べられる手

暗闇と静寂が占拠した部屋に、唐突な閃光が生まれる。

閃光は大きく渦巻き、その光の中から一人の青年と一匹の猫が現れると、部屋は再び闇に閉じ込められた

青年が掌を天井に向けると、光を放つ玉が宙に現れ、明りの役割を開始する。

淡い光に照らされたその姿はローブを羽織っており、胡散臭い眼鏡に三角帽子、綺麗に束ねた長髪をしている。

細い目が柔らかく笑みを浮かべた。


「・・・・やー、間に合いましたー。それにしても、こんな所に隠れてるなんて思いもしませんでしたよー。・・・え?これ間に合ってますよね・・・?」


柔らかい笑みに焦りが混じると、問いかけられた足の短い茶猫は声を荒げた。


「聞かなくてもヤバいのは分かるだろ!急いで連れて帰るぞ!」


茶猫は後ろ足で立ち上がると、背負った小さいリュックサックから多量の布を取り出し、

喉の出血部に押し当てた。


「早くしろ!ここじゃまともな術式を組むのに時間がかかるだろ!一旦戻って簡易術具で血だけでも止めないと!」


茶猫が言い終わる前に青年も行動を起こしていた。


「わかってますっ!」


手にした杖で地面を突く。

カンッ。という音と共に、宙に文字の羅列と円、図式が浮かび上がる。

瞬く間に先と同様の閃光が部屋を埋め尽くした。

止血中の茶猫と少年の体は宙に浮くと、光の渦に吸い込まれていった。

青年は細い目を開く。


「あなたは絶対に死なせません・・・。唯一の《屍霊術師(ネクロム)》よ。」

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