#13 特別無音潜航

「総員、戦闘配置! 出港する」


 ナームス傭兵国領旧エウランド皇国ロンメラ港に接岸しているアディス級潜水戦艦内部では、赤色灯が点滅しブザーが鳴り響く中、艦長のノヴェラス・ディルスである。


魔導機関炉タービン一斉始動!」

「――各部、異常を報告しろ」

「主砲塔、準備よし」

「対空火器、異常なし」

受動探知パッシブ・ソナー、起動した」

「・・・各部、異常なし。出港準備、完了」


 戦術長となったレイクッド・ディルスが、艦長席に座っている艦長に顔を向けた。


「――航海長エセス。両舷微速、前進ヨーソロー

「両舷微速、前進ヨーソロー‼」


 主錨を巻き上げてスクリューがゆっくりと回転しだして、アディス級潜水戦艦がロンメラ港を出て行こうとしたその時、港湾にある無数の鐘が鳴り響き始めた。それと同時に電探長デゥーフ・ノーラがチャートを見ながら「敵艦、補足。距離3キロ!」と叫んだ。


「――艦影からして、改装後のネヴァダとペンシルベニアと断定!」

「砲術長。全主砲に徹甲榴弾を装填して待機」

「了解。全主砲、徹甲榴弾を装填した。指命しめい!」


 デゥーフが逐一と距離を告げる中すべての主砲弾が全部命中する距離――必中距離まで近づいてきた頃合いになった時、艦長のノヴェラスが「撃ち方、始めぇ!」と指示を出した。


「――撃ち方、始め!」


 砲口から飛び出た砲弾は、内部信管が作動し亜音速という速度に達する勢いでネヴァダの防核装甲帯バイタル・パートに命中したついでに過積載の可燃物質を3番砲塔直下の火薬庫にばら撒き貫通する際に生じた火花がそれに引火した事で、ネヴァダの3番砲塔は大破し機能停止させた。


「敵戦艦ネヴァダの3番砲塔大破、ペンシルベニアは中破!」

「次弾、特殊融合榴弾特融榴弾に切り替えろ」

「――次弾、特融榴弾に切り替えた。 装填完了!」

「一斉射撃、ぅてぇー‼」

「撃てぇー!」


 徹甲榴弾が開けた穴に運よく1発の特融榴弾が侵入して、火災消火と復旧作業中の工作員たちを巻き込んで破裂した特融榴弾は砲弾庫と火薬庫を引火させ爆沈へと至らしめるかのようにBBQのように熱していった結果。ネヴァダの4番砲塔とペンシルベニアの2番砲塔を大破させ、さらには敵戦艦2隻を航行不能にさせる戦果となった。


  ○○〇


「・・・ッ、9時方向。2編隊が接近中、――ッ‼急降下艦上爆撃機ドーントレス編隊と艦上雷撃機アベンジャー編隊!」


 発令所内の空気が和み始めた時、対空レーダーチャートに切り替えたデゥーフが叫んだ。


「――戦術長。 対空戦闘、用意!」


 レイがすぐさま、全対空火器を準備し「対空戦闘、用意良し」と告げた。


「――迎撃結果により、潜航を考える。 それまでは何としてでも、撃ち落とせ!」

「ハッ!」


 やがて、ボフォース40ミリ4連装機関砲の発砲音から始まり25ミリ連装機関銃、40ミリ単装機関銃と発砲が始まって行った。


「撃墜数・・・1、2、3、4、――‼」

「取舵一杯、急げ!」


 野生の勘で危険を察知したノヴェラスは航海長に指示を出した。間一髪で急降下してきた敵機の攻撃を回避すると、「特別無音潜航特無潜、今!」と発令した。特別無音潜航とは、無音潜航の上位互換で一切の物音を禁じて忍者のように潜航する事を言う。


 スクリューが回転を止めると動きを止めて、そのまま潜航準備に入った。


「・・・特無潜、用意良し」

「――戦闘止め、対空戦闘止め」

「対空戦、止め。 ベント開け、ダウントリム30」

「潜航・・・、開始」


 巨大な船体が潜航するまでの時間は大きくなるにつれて時間がかかるが、このふねは僅か26秒で潜航できる。


 な?化物チートだろ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る