第10話 白い狼



白銀の世界の住人が

今夜も街にやって来て

そのまま居座っているようだ


夜の国道で薄明かりの中

薄く積もったアスファルトの上に

何台も通ったのであろう

車の跡が残っている


既に速度を落とした二輪で

滑らないようタイヤの跡の上を走っていると


ガードレールにぶつかり

フロントがひしゃげた車があった


私はふと思う

誰が乗っていたのであろうかと


仕事帰りの人であろうか?

怪我の程度は?

家では暖かい湯船が彼を待っていたのでは?

愛する人は食事を温め直す準備ができていたのでは?


普通の人が普通に暮らしている此の夜に

狼が白い牙を剥いて

普通を喰らおうとしている


そして

突然襲いかかってくる狼に気をつけながら

私はゆっくりと雪道のカーブを折れた

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