第15話 半年経ちました

 魔境を開拓して、王都を建て建国したリッターセンキロ国は半年を過ぎようとしていた。カオウメイジン国と共に順調に国民が増えて、リッターセンキロは現在二万三千五百人。カオウメイジンは二万二千人にまで国民が増えていた。

 ソコに一つ大きな問題が浮かび上がっていた。


「バイト、冒険者達から今日も抗議があったようだね」


「はい、リッター様。やはりギルドが国内にありませんので不便だと言うのが彼らの言い分です」


「うーん、困ったな。コッチの大陸のギルドは国と癒着してるから、我が国には招聘出来ないし、海向こうの大陸から招聘しようにも、制度が違うからなぁ」


「いっそお創りになられては如何でしょうか? アスプリン殿なら良い知恵もお持ちでしょうし、ご相談されてみては如何でしょうか?」


「うん、そうだね。そうしてみるよ」


 僕はバイトにそう返事をしてヤエにアスプリンを呼んで来て欲しいて頼んだんだ。アスプリンは直ぐに来てくれたよ。


「忙しいのに呼びだしてゴメンね、アスプリン」


「陛下、何をおっしゃいますか。このアスプリン、陛下のご用事以上に大切な物はありませんぞ」


「ハハハ、そう言ってくれると気が楽になるよ。それでね、相談があるんだ」


「冒険者の不満についてですな」


「流石だね。っていうかヤッパリ直ぐ分かるよね」


「はい、私が懇意にしている冒険者からも相談されておりましてな。それで、陛下は何かお考えがお有りですかな」


「うん、実はウチとカオウメイジン国の二国で独自の冒険者ギルドを創ろうかと思ったんだけど。適切な人材やノウハウが無いからどうしたら良いかと思ってね」


「フムフム、ソレでしたらお力に慣れますぞ。私が今までに懇意にしてきた冒険者の中で、既に引退した者が複数名おります。彼らは人柄も良く、三人は金剛石級、五人は聖金級だったのです。それから、制度についても私の商会から、読み書き計算は出来るが、商いに向いてない者がおりましてな、その者達に確認して、参加したいと申したなら制度作りから関わらせましょう。しかし、それでも最短で一月はかかりますが」


「うん、ソレはしょうがないよ。先ずは先触れを出すよ。ウチとカオウメイジン国の二国独自の冒険者ギルドを二ヶ月以内に発足するから、それまでは我慢して欲しいってね」


「それが宜しいかと思います。では、私は早速引退した八名の冒険者に連絡して、人選にも取り掛かります。他の商会にも声をかけても宜しいですか?」


「うん、よろしく頼むよ。アスプリン」


 こうして、冒険者ギルド発足の為に動き出したんだ。僕は僕でカオウメイジン国に行ってカオウにその旨を伝えたんだ。カオウも困っていたからね。そして、二つの国の王が同時に声明を出して、冒険者達に伝えたら、二ヶ月ならもう少しだから我慢しようと言ってくれたんだ。何せ、我が国に入って来れるのは正しい心を持った人だけだからね。

 

 それから一週間後にアスプリンから面会希望があったから、カオウも呼んで翌日に二人で会う事にした。 


「リッター陛下、カオウ陛下、お時間を頂き有難うこざいます」


 アスプリンは三十五人もの人を連れて来ていたよ。その数に驚いていた僕とカオウはそれでもちゃんと返事をした。


「アスプリン、僕達からの頼みで動いて貰っていたんだから、時間を取るのは当たり前だよ。それで、後ろにいる人達がそうなのかな?」


「はい、リッター陛下。前に立っている八名が引退した冒険者達です。その後ろに並んでいる者達が一から作る冒険者ギルドに携わりたいと、各商会から集まった者です」


「そうなんだ。皆が集まってくれて僕達もホッとしている。コレからどういうギルドを創っていくか話合いをしたいけど、長旅をしてきただろう八人は疲れてない?」


「直答をお許し下さい。リッター陛下、我らは引退したとは言え、冒険者でした。今回はアスプリン殿が馬車で迎えに来てくれたので、我らは疲れなどありません。今すぐに話合いをお願い致します」


「うん、それじゃあ別室に移動して話合いをしよう。アレグーラ、皆を会議室に案内してくれるかな。レイラは悪いけど、カーナを呼んで来て欲しい」


「畏まりました、陛下」


 そうしてカオウと一緒に、カーナ、バイト、ヤエ、カオリを伴って会議室に行くと、元冒険者達が一斉に立上がってバイト達を見て、叫んだ。


「おお! 剣神様! 聖女様! 大魔導様! 元の世界にお戻りになったと聞いていたのに!」


「おっ、久しぶりだな。クノール。剣の腕は上がったか?」


 バイトが軽くそう返しているけど、ヤエとカオリは呆れた様な顔でバイトを見ていた。けれどクノールと呼ばれた男性は、


「ハハハ、剣神様は変わられて無いようで安心しましたぞ。それでお三人が何故ココに居られるのか教えて頂けますか?」


 どうやら説明しないと話合いは始められそうに無いから、僕は三人について言える部分だけを話して聞かせる事にしたんだ。


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