第31話

 爺さんの先導に従って少し路地裏に入った場所に爺さんの家はあった。そのままなかに入れてもらうと机の上には様々な試行錯誤をして作ったであろう魔道具がいくつかあった。そして壁に沿って置かれた箱や棚に入っている素材は魔道具作りのための材料なんだろう。


 「さて、色々と気になることはあるが話せることだけ話してくれたら良いぞ?なんなら聞かなくても大丈夫じゃ。ワシは魔道具が作れれば正直お主が何者で構わぬからの。」


 「なら、必要に応じて説明させてもらうとするよ。それよりも魔道具はどのような原理で作っているか教えてもらってもいいか?魔法陣がどうのこうのって言ってなかったか?」


 「そうじゃ、そもそも魔法陣とは魔力を流して魔法を使うためのものだ。ただ単に魔法を使うのとは違って一定の効果を安定して継続、もしくは発動させるのだ。そして、魔法具魔道具は人の魔力をずっと流さなくても使えるようにするのじゃ。ワシが考えているのは魔石を使って流すものか、最初の発動にだけ人の魔力を使うものの2通りというところじゃの。」


 「なるほどな。聞いている限り何も問題もないように感じるが何が問題になっているんだ?」


 「それは魔法陣の組み方に問題があるのじゃ。様々な魔法具を解体、観察していくつかのパターンに分けて効果を実験検証してみたは良いものの狙った効果そのものを出すのが難しいのじゃ。」


 「わかった。とりあえず爺さんのわかってる範囲でその魔法陣のパターンを見せてくれるか?」


 とりあえず爺さんが保管していた図鑑によって鑑定をしながら見て行くとある事が分かった。魔法陣にはいくつかのパラメーターがある。まずは属性を決める。次に形態や形状を決める。3つ目に発動効果を決める。ここが肝になっている、例えば火属性 炎 放射状 これだと火炎放射器のようになる。そして、効果としてはどれだけの時間発動させるかどれくらいの規模で発動させるか、どこに発生させるかなど細かいところを決めるのだ。そして、魔法陣は3つの円からできておりそれぞれが先程述べた効果とつながる。


 だから、まずは火属性を最内側の円に、真ん中の円に炎、最外側に最小規模、魔力を流した分の時間として指定する。そして、発生場所は魔法陣から10センチほど高い場所に設定。


 「とりあえずこんなものだろう。爺さんが発動させてみろよ。多分大丈夫なはずだ。」


 「ほう、ならば直ぐにでも…」


 爺さんが魔法陣に手を当てて魔力を流すと俺が想定していた通り火をつけるだけの火の粉が魔法陣の上に現れる。これで家庭でも火おこしをする必要がなくなるな。


 「こ、これは…!なんという事じゃ!!!これこそがワシが望んだ効果じゃ!」


 「んー、成功してよかった。なら次は…」


 「何故そのように淡々としているのじゃ!これは物凄い事なのじゃぞ!!!!」


 「と、言われても俺にはただ鑑定で見た事を真似しただけだからなあ…」


 ブツブツと文句?のような何かを言いながら爺さんは今の出来事を分析した事を書き込んでいく。俺はそれを横目に水属性で蛇口のように水が出るような魔法陣や、光を灯す魔法陣に団扇で扇いだような風を出すだけの魔法陣を作ってみるとどれも狙ったような効果が現れた。


 これはまだ簡単な効果だから単純な魔法陣になっているがより細かい性能を決めたり威力や規模を上げようとすると複雑になり小さなところでところどころ重複やズレが生じて上手く効果が発動しなくなる。魔法具から読み取った魔法陣は細かい部分がところどころ残っていた為変に効果が発動して、ちゃんと機能を働かせられなかったのだろうな。


 

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