第14話 謎の橋

 俺たちは王都へ向かう途中の街、サルーテに立ち寄った。


 長旅になるので、宿をとるためだ。


 俺とエレナの住んでいたルーベンの街より、魔界の入り口に近い。よって闇に呑まれた帰還者も多い。この街の冒険者ギルドには、【処理班】という名の帰還者殺害の専門部隊が設けられているほどだ。


 早速この街の冒険者ギルドのマスターに、挨拶へ立ち寄った。無論、魔界に関する情報収集のためでもある。


「お久しぶりです、シドさん。本部での昇格試験以来ですね」


 高そうな椅子に腰かける、壮年の大男に俺は挨拶する。


「アルデバランか。久しいな。当時は最年少ギルドマスターだからと、何かと騒がれていたが、今は貫禄が出てきたな」


「いえ、私などまだまだ実力不足です。先日、退職を決めたばかりですし」


 実際そうだ。魔王軍幹部には手も足も出なかったんだからな。


「何があったのかは訊かん。だが、本部へ行く途中に私を訪ねたということは、何か事情があるのだろう?」


「はい。ここサルーテ支部は帰還者の最も多いギルド。何か、魔界に関する情報がないかと思いましてね」


 エレナのことは当然明かせない。魔王軍幹部ドラゴンロードと交戦したことも、だ。


「そうだな。特に変わったことはない。いつも通り、月に一、二名の帰還者を処理している」


「闇に呑まれなかった帰還者から、何か情報は?」


 俺は食い下がる。何か情報を引き出さなければならない。


「ないな。皆死ぬか、表層までしか潜らないかのどちらかだ。ただ、最近妙なことがあってな」


「どんな?」


「王国兵と、魔王軍配下のリザードマンたちとの小競り合いが頻発している。奴ら、特に攻撃を仕掛けてきたわけではないそうだ。ただ、国境付近にまで迫っていたので何度か戦闘になったらしい。討伐クエストを設定し、数名の冒険者に退治してもらったよ」


 侵攻してきたわけではないのか? ではリザードマンは何のために国境付近にまで来たのか。


「実際のところ、リザードマンたちは何をしていたんです? ただうろついていたわけでもないでしょう?」


 魔王軍は狡猾で統制が取れている。個人的な略奪、捕食のために動くことは滅多にない。


「なんでも、巨大な橋を建設しようとしていたとか」


「なぜそんなものを」


「儂には分からん。魔界は地下に広がっているのに、なぜ地上に橋などかける必要があるのか、見当もつかない」


 間違いなくエレナの移動のためだ。だが今の段階では、三つの可能性のうちどれに該当するか、分からない。

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