第22話 狂王封印

 アレクサンダーの皮を被った狂王は、雷での攻撃が効かないと見るや、作戦を変えて来た。物理戦だ。アレクサンダーでは到底不可能な速さと鋭さで剣を抜き、イミアに斬りつけて来る。

 イミアはそれを、剣で受け流す。そのスピードも、クライなどから見ると、いつものイミアでは不可能な反射速度だ。

 どちらの兵も、加勢することもできないでただ見ているしかない。それほどの速さだ。

 しかし力そのもので言えば狂王の方が強く、また、代理人を比べてもアレクサンダーの方が肉体は強固だ。イミアは攻撃をしのいでいるだけで、押されているというのが誰の目にも明らかだった。

 カレンドルの兵はハラハラし、ランギルの兵は勝利を予感して余裕の笑みを浮かべる。

 クライが掌を強く握りしめたその時、流れが変わった。

 イミアの攻撃をアレクサンダーがどうにかいなすだけになっていく。

 別にイミアの攻撃が変わったわけではない。キョトンとする皆の中で、ルイスだけがそれをわかっていたかのように封印の準備をしている。

「なぜだ──!?」

「波長が合ったと言っても、一般人。巫とは違う」

 焦ったようなアレクサンダーの問いに、平然とイミアが答える。そして、目を見開いたアレクサンダーの隙をつくように、ルイスが術を完成させた。

 アレクサンダーの足元から光の筋が伸びてアレクサンダーを拘束し、ほんの1秒足らずで蛹のようなものを形成する。

 数秒遅れて、声が上がり出した。

「俺達が、勝ったのか?」

「ランギル帝国軍!降伏せよ!」

「は、話が違う!」

「何だよあの女!?」

 そして、さしたる混乱もない中、次々とランギル兵は降伏していった。

 クライも拍子抜けするような気持で、ロッドと一緒にイミアとルイスの所に近寄る。

「良かった。何だかあっけなかったな」

 しかし、ルイスとイミアの表情は硬いままだ。

「これは長くは続かないんです。わかり易く言えば、休憩して疲れが取れたらこんな結界なんて破ってしまうでしょう」

 ルイスが苦しそうな顔付きになって言い、クライは表情を引き締めた。

「え……じゃあ、きっちりと封印をし直すんだな?」

 それにルイスは首を振る。

「そうできればいいのですが、昔よりも更に悪いものを集めています。それに、封印に見合う地脈も乱れて失われ、不可能かと思われます。神を依り付かせたイミアの力をこのまま注ぎ続ける事もできません」

 それにクライはギョッと目を見開いた。

「何か方法はないんですか?」

 ロッドが声を潜めながらも焦ったように訊く。

 それにルイスはますます苦しそうな顔をし、無表情のイミアへ目をやった。

「狂王をアレクサンダー殿……陛下から剥がして取り込み、神を依り付かせたままのイミアごと一緒に剣で貫くんです」

「は?」

 クライは頭を真っ白にして、神を降ろしたままのイミアへ目をやった。






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