第19話 戦乱の嵐

 ランギル帝国が国境を接している国は、カレンドル王国、ムフタングス公国、オリストマン王国の3国だ。その内のムフタングス公国の国境付近に晴天にも関わらず落雷が立て続けに10以上落ち、教会などが破壊されたり火災が起きたりして混乱したのと同時にランギル帝国が攻め入り、乱戦の末にほぼランギルに制圧された。

 その報は各国に急いでもたらされたのだが、その報がもたらされたのからそう時を置かず、オリストマン王国の国境近くにある砦も落雷で壊れ、やはり同時に侵攻してきたランギルと交戦中だという。

 カレンドルもランギルに備えるべきで、緊急に軍上層部や政府高官、王族に招集命令が出たのだ。

 ランギルとの国境はこの離宮から遠くない。

 クライと一緒に皆も帰る事になったが、イミアはランギルとの国境の方角を見た。

「戦争できるほど、余力があったのかしら」

 眉を寄せて考えた。

「破れかぶれなんじゃないか」

 同僚がそれに応えた。

「それにしても、落雷って何かしら。新しい兵器?」

 イミアが言うと、クライがハッとしたような顔をした。

「遺跡でも見付けたのかも知れないな、ランギル国内で」

 それに、全員が表情を引き締めた。

 遺跡から発掘される先史文明のものは、文化的にすばらしいもの、美術的にすばらしいもの、技術的にすばらしいものがある。その技術的にすばらしいものの中には、兵器として強力なものもあった。

「しかし、それらしい話も聞きませんでしたし、発掘できるような余力もなかったはずですが」

 ロッドが懐疑的な考えを示す。

「雷を人工的に落とす方法ってあるのかしら」

 イミアが言い、全員、揃って上を見上げた。


 首都に戻ると、戦乱の噂は広まっていたが、混乱は見られなかった。ランギルは破れかぶれになっているんだろうというのが大方の意見だが、意外と強いのに驚いているという者がほとんどだった。

 イミアが家に帰るとルイスとライラが暗い顔付きで出迎え、3人でお茶を飲んだ。

「ランギルも必死なんだろうけど……ここにも攻めて来る気かしら」

 ライラは心配そうにカップを両手で握った。

「でも、ランギルってそんなに強かったっけ?それに、食べ物とかも十分じゃなかっただろうし。あと、雷がいきなり落ちたっていうのは関係あるのかな」

 イミアが言うと、ルイスは

「もう関係ない国の話とは言え、完全には放っておけないんだよなあ」

と言って、溜め息をついた。

「やっぱり、話しておかなければいけないよなあ。

 イミア。一緒に来なさい。陛下にカミヨの話をしておかなければいけないようだし、イミアも聞いておかないといけないだろう。恐らく、アレと対峙するのはイミアになるだろうから」

 イミアはそのルイスの不吉な言葉に、ライラと不安を浮かべた顔を見合わせた。




 

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