第2話 襲撃


 次の日、俺たちは記憶の場所へとやってきた。

 そこは町はずれにある古い施設で、当たりには人はいない。

 その為襲撃するには、打って付けの場所だった。


「ララ、【ドラゴンブレス】だ」


「デドラァ!!」


 ララの爆炎が施設を吐き払う。

 建物内にいた人間の叫び声が、耳に届く。

 悲鳴、苦しみ、叫び。少々罪悪感を抱くが、まぁ仕方ないことだ。

 

 そして建物を焼き払うと、地下へと続く階段が見えた。

 どうやら本拠地は地下にあるようだ。


「アルガくん、今さらだけど本当にここでいいんだよね?」


「えぇ、記憶が正しければ」 


「この奥に……お父様をおかしくさせた連中が……!!」


 俺たちは階段を下った。



 ◆

 

「ぐ、お、お前らの目的はなんだ……」


「た、助けて……」

 

「や、やめて……こ、殺さないで……」


 施設の中は研究所のようになっていた。

 大きなガラスケースがずらりと並び、そのガラスケースの中には異様な姿をした生命体が眠っている。

 そんなガラスケースを前に、白衣の人たちが何かの実験を行っている。

 創作物にしか出てこなさそうな光景に、思わず笑ってしまった。


 そしてそんな研究所は、今では崩壊している。

 ガラスケースは砕け散り、中の生命体は死んでいる。

 科学者連中もほとんどが息絶え、生き残った人々も長くはないだろう。

 レイナの父に非道な行いをしたのだから、その報いを受けたのだ。


「お前たちはこの計画の指導者ではないな?」


「あ、あぁ……俺たちはカネの為に働いているだけの、ただの下級研究員だ。何のために研究しているかなんて、知らねぇよ……」


「だから……私たちだけでも助けてよ……。殺さないで……」


「残念だがそうはいかない。俺たちのお姫様が、連帯責任だと暴れているからな」


 研究所を壊滅状態にしたのは、主にレイナが暴れたからだ。

 吸血鬼の上位種である『吸血姫』。俺相手ではあっさりと敗れた彼女だが、その潜在能力はズバ抜けている。

 研究者たちはガラスケースから幾匹かの魔物を解き放ったが、レイナには敵わなかった。


「貴様ら!! 何者だ!!」


「聖なる地を汚しおって、ただでは済まさぬぞ!!」


 現れたのは、2人の男。

 1人は屈強な肉体を持つ、30代に見える男。

 1人は痩せさばらえた、70代に見える老人。

 その両者ともが、牧師を彷彿とさせるローブを着用していた。


「あれは……」


 思い出したのは、昨晩の夢。

 あの2人、夢の人物と酷似している。

 格好も他の連中とは違い、きちんとしている。

 間違いない、ヤツらは教団の主要人物だ。


「レイナ、そいつ等は殺すなよ」


「どうしてですか!?」


「ヤツ等は主要人物だ。情報を引き出したい」


「……わかりました」


 レイナは落ち着きを取り戻し、ふーッと息を整えた。


「おやおや、私たちを倒すつもりですか?」


「ふぉっふぉっふぉ、若いの。若さゆえに無謀じゃな」


 2人は魔法を発動しようとする。

 だが──


「殺さなければいいのですよね?」


 レイナの方が格段に速かった。

 脱兎の如く駆けたレイナは、2人の首をもいだ。


「おいおい、殺すなって──ん?」


 いや、2人は死んでいない。

 顔は若干青白いが、口をパクパクと動かしている。

 老人に至っては、罵詈雑言を話している。


「わたしの血液魔法で延命させています。若い方は声帯を身体に残してしまったので声を発せませんが、老いた方は大丈夫ですね」


「貴様貴様貴様!! このワシに対して、なんと不届きな!!」


「とりあえず、こっちは潰しますね」


 レイナはそう言って、若い方の聖者の頭を潰した。


「ひッ、ば、バケモノめ!! やめろ!! ワシは殺すな!!」


「アルガ様、どうします?」


「とりあえず、帰ってから尋問をするか」


「はい!!」


「やめろ……やめろぉおおおおお!!!!」


 老人の泣き叫ぶ声が、響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る