第34話恐怖
80,必要ない
ゼパルの攻撃は、パワーもスピードもあり、今の三神が苦戦するのも納得ができる実力だった。だが、俺は、攻撃すべてを受け流したりして防ぎ続ける。
「攻撃の鋭さも動きの正確さも中々良くなってきたぞ!だが!」俺は、そこまで言って、ゼパルが伸ばしてくる左拳を受け流し、やつの腹部に左拳を叩き込む。
ゼパルは怯むが、すぐに右脚で俺に蹴りを入れようとしてくる。俺は、軽く後ろに下がり、その蹴りを避け、振り切られたやつの右脚を掴んで地面に向かって、投げ飛ばす。
投げ飛ばされたゼパルは、地面に落下するが、すぐにこちらに飛び戻るように向かってきて、右拳を伸ばしてくる。
その攻撃を左手で受け止め、右手でゼパルに肩を掴み、左膝をゼパルの腹部に叩き込む。そして、すぐに俺は、右拳をゼパルの顔面に叩き込んで、殴り飛ばす。
「まだまだ!こんなもんじゃねぇはずだ!」俺はそう言って、殴り飛ばしたゼパルを追いかける。
ゼパルは、翼を広げて勢いを殺し、俺との距離をすぐに詰め、右拳を叩き込んでくる。
やられる度ほんの僅かだが、スピードが上がっていっている。そんなことを思っているとゼパルは追い討ちをかけてくる。
ゼパルの左拳が俺の腹部に叩き込まれ、それに続くように体を半回転させ、俺の横腹に蹴りを入れて、蹴り飛ばす。
「ほぅ。イッテェ。でも、そうこなくっちゃなぁ!」飛ばされながらそう独り言を口にしながら、炎を両拳に宿す。
まさかフェイズ・ツーを使うことになるとは、思ってみなかったな。よしゃあ!楽しくなってきたぞ!
内心一人でワクワクしながら、勢いを殺して、ゼパルの方へ向かおうとした時だった。俺とゼパルの間に巨大な雷が落ちてくる。
雷の落ちた周辺を見ると多くの獣悪魔をどんどん消し去っていくゼウスのじっちゃんの姿があった。
「おお!ゼウスのじっちゃんもやってなぁ!」俺がそう呼びかけるとゼウスのじっちゃんは、こちらに一度視線を向けてから周りの獣悪魔を雷で消し飛ばし、こちらに飛んでくる。
「ブラフマー君。お主の方は終わったのかのう?」ゼウスのじっちゃんは、何事もなかったかのようにそう語りかけてくる。
「いや。思ったよりゼパルのやつ強くてよ!今いい感じに戦ってるとこだ!」俺は、ゼウスのじっちゃんにそう話しかけているとゼパルの隣にウァレフォルが翼を広げて、並び立ってくる。
「ハァ、ハァ、おやおや。創造神ブラフマーではないですか。また会うとは。」ウァレフォルは息を切らしながら、俺に語りかけてくる。俺とゼウスのじっちゃんは、ゼパルとウァレフォルの方へ視線を向ける。
「お前。よく生きてんなぁ。普通の悪魔ならもうやられてるぞ。」俺は腰に手を当ててそう話すとウァレフォルは口元の血を拭う。
「お褒めに預かり光栄だな。それより、あなた方は気付きましたか?」ウァレフォルが少し口角を上げながら、そう尋ねってくる。無論こいつが三神のことを言いたいのは、わかりきっていた。
「あの人間、三神涼太の闘気が消えたことを。
私たちの今回の目的は彼だ。闘気が消えたということが何を意味するか。わからないわけは、ないだろう。」ウァレフォルは、勝ち誇ったようにそう言ってくる。俺とゼウスのじっちゃんは、顔を見合わせ、軽く口角を上げる。
「………何がおかしいのだ。」ウァレフォルは、勝ち誇った表情を一変させ、真剣な顔でこちらを睨みつけながら、そう問いかけてくる。
「じゃあ何故、わしらがお前達の相手をしているんじゃ。本気を出せば、お主らがわしらに勝てないことは明白じゃろ。」ゼウスのじっちゃんがウァレフォルに問いかけにそう返答するとウァレフォルは、顎に手を当て考え出す。
「目的が三神だとわかってたからだよ。殺す気がないことも何となくわかってた。」俺がそう言い放つとウァレフォルは、驚きの表情を見せてからこちらを睨みつけてくる。
「ならば、私たちが彼を利用としていることもわかっていたというのか。」ウァレフォルがそう呟く。ゼパルは、相変わらず無口で何も言わず、話が終わるのを待っている。
さて、こんなところでやられる三神じゃないことは、わかっているがそろそろいかねぇとやべぇかもな。そんなことを思っていると
俺たちが最初にいた地点から禍々しく、そして強い闘気を感じられた。
「これは、三神の闘気か。それにしては禍々しい。」俺がそう呟きながら闘気を感じる方に視線を向けているとゼパルがその場所へと今までで一番のスピードで向かっていった。
「あっ待てよ!まだ俺との勝負がついてねぇぞ!」俺はそう言ってゼパルを追っていく。その後ろからは、ゼウスのじっちゃん、それにウァレフォルも向かってくるのだった。
81,悪魔
「………メンタルチェンジ。」私は、そう言い放ち、三神涼太に技を放った。そして、三神涼太は頭を抑えながら、その場に倒れる。
「これで私の駒が完成した。さて、実を回収し、こいつを私の意のままに操り、神共に一泡吹かせてやろう。」私はそう呟き、これからを楽しみに思いながら笑みを浮かべ、実の方へ視線を向ける。
その時、強い重圧を私は感じとった,私は、重圧の放たれている方へゆっくりと顔を向け、目を疑うような光景を目の当たりにする。
「何故だ。貴様の精神は、完全に壊れ、意識ごと消えたはずだ。それに何故、我々悪魔の特有として持つ黒属性のオーラを貴様が……」そこには、赤属性のオーラと私たちと同様の黒属性のオーラを纏い、その場に立ち上がって、その身から強い重圧を放っている三神涼太がいた。
ありえない。こんな事は、断じてありえない。私は、そう思いながら、気づけば後退りをしていた。
「…うる……さい。…何も……知らない……くせに。」やつがそう呟いた途端。一瞬のうちに私の背後に移動した。この私が目で追うことができなかっただと。私は驚きとともに冷や汗が止まらなくなる程の恐怖を覚えた。
唾を飲み込み、背後にいるそいつに向かって左腕を振るう。だが、その攻撃は当たらず、やつは、再び視界から消える。
そして、次の瞬間。背中に蹴りが入れられ、私は、地面に叩きつけられる。
「ぐはっ!」あまりのパワーに私は、吐血してしまう。なんというスピードとパワーだ。先程までのやつから考えられん。そう驚きながらも私は、衝撃波を放ち、やつを軽く吹き飛ばして距離をとる。
「ハァ、ハァ、一体何が。」私は、口元の血を拭い、やつを睨む。やつは先程とは違い、真っ赤な目を光らせ殺意を剥き出しにしてこちらを睨みつけている。
「………消えろ。消えろ…消えろ。」やつはそう呟くと再び目にも止まらぬ速さで姿を消す。どこへいったのか、警戒心を強めあたりを見渡すがどこにもやつの姿も気配すらも感じとれない。
「何処だ!」私がそう叫んだ途端、私の懐ににやつは現れ、赤黒い炎を宿した右拳を私の腹部に叩き込んできた。
「ブレット・カラプス。」その技が私の腹部に入った瞬間、全身の力が私の意志とは関係なく、一気に抜けてやつの拳に溜め込まれた力のすべてが全身に伝わっていく。
そして、そのまま殴り飛ばされ、私は、近くの岩へと衝突し、口から血を吐き出す。
「な、なんだ今の技は…。」私は、そう呟きながら、腹を押さえ、やつの方へ視線を向ける。気づけば私の体は、震え先程以上に恐怖を感じていた。
「この私が怯えているというのか?」私は、震える自分の手を見て、言葉をこぼす。そして、再度やつへ視線を向けると赤く光るその目がこちらを睨みつけ、やつは、ゆっくりと近づいてくる。
「………消えろ。………消えろ。………俺を理解しない者。………全て!」やつは、そう言いながら、一歩、一歩と近づいてくる。私は恐怖のあまり、その場を動けずにいた。何という化け物だ。
そんな風に恐怖を覚えていたその時。やつがいきなり吹き飛んでいった。何が起きたかわからずにいると。
「バエル!」そう私の名を叫ぶ声が上から聞こえ、視線を向けるとウァレフォルが降りて、きた。
「バエル。大丈夫か。」ウァレフォルが私にそう問いかけてくるが、私は、恐怖のあまりまともに口を開くことすらできなかった。
「くっ、ゼパル!引くぞ!」ウァレフォルがそう叫ぶとゼパルがやってきて、ゲートを開き、私を連れてアジトへ戻る。アジトに戻っても私は、恐怖で体を震わせる。
「バエルよ。一体何があったんだ?」ウァレフォルが問いかけてくるが私はあの光景が頭によぎる度、口が開かなくなる。
ただ一言だけ口にできた言葉。それは、悪魔である私があれを見て感じたものだった。
「………あれは、…………悪魔だ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます