第19話竜騎士の悪魔

47,初顔の神々

僕達は帰還した後ソーラ様に今回の事について報告した。ソーラ様からは、各最高位の神々で話し合うと言われ、僕達は解散した。


僕は、自分の部屋に向かいながら、あのワニに乗った老人の悪魔と操られた悪魔達の事について考えていた。


なによりも気になったのは、あの老人悪魔の一言。これは実験だという、あの言葉がどうしても引っ掛かる。実験をやるにしてもわざわざ戦力を減らすようなことをするだろうか。


あの老人悪魔の言ったことについて考えているとテレパシーのように脳内に声が聞こえて来た。


「三神君。ちょっと闘技場に来てくれるかい?」その声の主はアポローンだった。ア一体なんだろう?一緒に修業でもしたいのかな?そんなことを考えながら、言われた通り闘技場へ向かって歩き出した。


闘技場に着くと、アポローンと他に五人ほど初めて見る神様がいた。僕が来たのに気づき、アポローンが手を振ってくる。僕は、アポローンの近くまで行き、問いかける。


「アポローン。この方達は?」僕の問いかけに対して、アポローンは、左の方にいる神様から順に教えてくれた。


「こちらは、アテナ姉さん。そして、その隣はアレス。その隣がアプロディーテー様とデメテル様。そして、最後にヘラ様だよ。」アポローンの説明を聞いて、僕は少し驚いていた。


オリンポス十二神が五人もなんでこんなところに⁉︎そんなことを思っていると一番右にいたヘラが僕に話しかけてくる。


「父の息子と娘がお世話になっております。」明るい紫色のロングヘアーを揺らしながら、ヘラはそう言って、一礼してくる。


綺麗な神様だな。僕がそう思っていると堅いのいい、黒髪で緑の瞳をした神様。アレスが語りかけて来る。


「お前が三神涼太か。我が名はアレス。兄弟を助けてくれたこと感謝している。」アレスはそう言うと僕に軽く一礼してくる。


「私は、紹介のあった通り、名をデメテルといいます。三神涼太さん。今後とも、よろしくお願いしますね。」農民服のようなものを身に纏い、灰色のロングヘアーを揺らしながら、胸に手を当て、優しい声と笑顔を向けて、デメテルはそう語りかけてくる。


「私はアプロディーテー。アルテミスやアポローンがお世話になってるわ。何か力になれることがあったら、言ってちょうだい。」花の服に身を包み黄緑色のツインテールで、水色に輝く瞳を向けて、アプロディーテーが、微笑みかけてくる。


「最後になってしまったが、我が名はアテナ。三神涼太殿。アルテミスやアポローンが世話になっている。そなたにお会いできて嬉しい限りだ。」白の髪のショートヘアで、透き通るような声で、アテナが手を差し伸べながら、話しかけくる。


僕は、差し伸べられた手に恐る恐る手を伸ばすとアテナは僕の手を握り、笑顔で握手を交わしてくる。


「みんなが一度会って、話をしたいって言ってて。」そう言って来るアポローンの方を向いて、さすがに神様五人に頭を下げられるとさすがに心苦しいすぎるんだけど。と内心で言い放ち、視線戻して、僕は口を開く。


「こちらの方こそ、よろしくお願いします。」苦笑いしながら、そう挨拶をした。


神々の知り合いも増えて、ありがたすぎる限りなんだか、友達も先輩もいなかった僕に、目上の人なんてレベルじゃない存在との接し方なんてわかるわけないんだよな。


そんなことを思いながら、僕は自分のこれからの人間関係ならぬ神様関係に少し不安を抱えていた。


それから、アテナの希望で、少し手合わせをし、アプロディーテーやデメテル、それにアレスと色々な話しして、最後にヘラにアルテミスやアポローン、そしてゼウスの普段のことについて話し、今日一日を過ごした。


「では、また機会があれば。」ヘラが僕にそう言ってから、アポローンと五人は、ゲートを潜り立ち去っていった。


僕はその後、部屋に帰宅するとすぐにベットに倒れ込む。アテナとの手合わせもそうだが気を遣って話しをするのは流石にしんどかった。


「疲れたし、寝よ。」僕はそう言葉をこぼし、そのまま眠りについた。


48,竜騎士の悪魔

それから数日後のこと。五つ目の神現の実が出現したと伝えられて、僕はソーラ様の元へと向かった。


会議室につくとそこには、あの日会った、アテナとアレスがいた。


「今回はアテナさんとアレスさんが一緒に来てくれるんですか?」僕がそう問いかけるとソーラ様がこちらに近づきながら、答えてくれる。


「そう。今回はアテナとアレスに三神君と一緒に実の回収に向かってもらう。他の神々も色々あって、手が空いていなくてね。」ソーラ様が僕ら三人にそう話すと


「承知しました。必ず実を回収して参ります。」アテナは、姿勢を正してソーラ様の方を向いてそう答える。


「我らも、彼の戦いぶりを間近で見たかったので、機会くださり光栄です。」アレスは、僕の方に目線を向けて、そう言う。


「では、現場へ転移させる。無事を祈っているよ。」ソーラ様がそう言って、僕達三人に手を向け、一瞬で人間界へ転移させる。


転移したのは町中であり、交差点の真ん中にぽつんと木が立っていた。相変わらず、周りに人はいない。


多分だが、ソーラ様達の力で付近の生命体を付近から離れさせたのだろう。毎回そうだったからかこの感覚には、慣れて来ていた。


僕達は、警戒しながら、ゆっくり木に近づいていく。木まであと十数メートルと言ったところで、上空から咆哮が聞こえてくる。


上を向くと何かがこちらに勢い良く向かって来ていた。僕達は、突進を避けるとそれは、僕達と対峙するように迎えに降り立った。


僕達の前に現れたのは、竜だった。そして、その竜は、背中に騎士の格好をした者を乗せている。乗っていた者が竜の背中を降りて、叫ぶ。


「我は、ソロモン七十二柱。二十九番目の悪魔。アスタロト!人間よ!この実をかけて、決闘を申し込む!」そう叫ぶやいなや、そいつは剣を顕現させ、僕に向けてくる。それを姿を見て僕は、ブネのことを思い出す。


「悪いがそんな一対一を許すほど、こっちも優しくないんでな。」僕の隣にいたアレスがそう言って、槍を顕現させて構えをとる。


「アレスの言う通り。決闘を邪魔したくはないがこれは、戦争と同じ事。そんなことに耳を貸しやれるほど私達も甘くはない。」アテナもそう言って、槍と盾を顕現させて構えをとる。


「外野は、大人しく引っ込んでいろ。」アスタロトがそう言うと上空から竜が二体現れ、アテナとアレスを少し離れたところへと共に飛んでいく。


「アテナさん!アレスさん!」僕は、そう叫んで二人の方へ視線を向ける。


「簡単に振り切れそうもないですね。仕方ない。三神殿!そちらを頼みます!こいやつらを倒し、すぐに援護に行きますので!」アテナは、そう言い放ち、二人は少し離れたところで竜と戦闘を始めた。


「これで、心置きなく戦える。行くぞ!人間!」僕がアテナ達の方から視線を戻すとアスタロトは、乗って来た竜の背に戻り、向かってくる。


僕は、フェイズ・スリーまで一気に入り、前に両手を構え、炎の推進力で空中へ飛びながら向かって来るアスタロトと竜から距離をとる。


俺は、最近になってわかったのだが、俺の使える能力は、炎と爆発らしい。


今まで、ストライク・ノヴァやドライブ・ノヴァなどは、炎を纏った状態の拳を敵に放っていたつもりだったが、放ち終えた後、爆発が起こり、ダメージを大幅に増幅していたみたいだ。


「逃さんぞ!」アスタロトがそう叫び、竜の体勢を変えて、追って来る。実質マルファスとラウム戦の時と同じ、二対一の状況だな。


そう思いながら、向かって来るアスタロトと竜に目線を向ける。竜が口を大きく開き俺に向かって来る。


俺は左手を後ろにかざし、炎を噴射して、敵の方へ向かっていく。


「何をする気だ。」アスタロトがそう呟きながら俺を目で追ってくる。


俺は、竜が口を閉じる直前で、右手を左側に向けて伸ばし、炎を噴射して竜の口の範囲を避けて、竜の横顔に左拳を叩き込む。


そして、もう一度右手を左側に向けて伸ばし、炎の噴射によって生まれる勢いを利用して、アスタロトに左拳の裏拳を叩き込む。


アスタロトは、空中に浮遊し、竜は地面に向かって落下していった。


「なんだと!」アスタロトは背中にある翼を広げ、体勢を整える。俺は下に向かって、炎を一定の火力で噴射し、空中に浮遊する。


これは、ゼウスに俺の『ノヴァ・フレーム』に無駄のない力の使い方を教えてもらった時に、空中戦用にと教えてもらったものだ。


「…竜無しでも、お前は、戦えるだろ?」俺は、挑発程度にアスタロトにそう言いながら、落下した竜にも、警戒を向ける。


「もちろん戦える。」そう言って、アスタロトは剣を構え、全身に紫属性のオーラを纏う。


「我らは、規定を破ってからは、皆最初から『フェイズ・スリー』の状態で戦っている。だが、貴様のフェイズ・スリーの状態はなんだ。バエルから聞いたところによるとそのアーマーを腕だけでなく、脚にまで移動できるそうではないか。そんな武器は、今まで聞いたことがない。」アスタロトは俺のアーマーに指差してそう言ってくる。まあ、神々も類を見ない神装だからな。無理もないだろな。


「言いたいことはそれだけか。ならとっととかかってこい。」俺は、強気にそう言っては、見るが油断しないように警戒を解かずにアスタロトと対峙する。


そして、少しの沈黙の後アスタロトがこちらに向かって来る。俺は両手を後ろに向け、炎の火力を上げて、アスタロトに向かっていく。


俺の左腕とアスタロトの剣がぶつかり合い、俺とアスタロトの一体一の戦いが始まった。

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