五人姉妹の殺し方

木島別弥(旧:へげぞぞ)

第1話 ヨルムンガンドルの殺し方

 世界の果ては、大きな滝があるのだといわれたり、世界は丸くて一周するのだといわれたりするが、本当のところはちがう。世界の果てには、ヨルムンガンドルという大きな蛇がいて、世界を一周するようにとぐろをまいていて、近づくものを尻尾で撥ねつぶしてしまうのだ。

 このヨルムンガンドルは限りなく不死に近い生き物で、困ったことに、大地を食べるのである。我々の大地はやがて、ヨルムンガンドルに食べられて、消えてなくなってしまうのである。

 ヨルムンガンドルを倒さねばならない。人々や精霊たちは話し合って、そう決めた。ヨルムンガンドルを倒す勇者を募ったのだった。

 しかし、ヨルムンガンドルを倒しに世界の果てへ旅立ったものはみんなやられてしまった。残ったのは、女子供だけだった。

 ある小さな山のふもとに、リザ、リジ、リズ、リゼ、リゾ、という五人姉妹が住んでいた。リザは魔法使いであり、他の四人も手習い程度の魔法が使えた。

 ある時、リゾが魔法を使った。

「ヨルムンガンドルの殺し方。戦って勝てないのなら、飢えさせるしかない」

 リゾは魔法で大地を消し去ってしまったのだ。

 食料である大地がなくなり、ヨルムンガンドルは九百年で飢えて死んでしまった。

 リゾの魔法以来、人々の家は空に浮かんでいるし、大地というものもない。

 これがヨルムンガンドルの殺し方だった。

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