公爵領②

アラビス城内


公爵家は初代宰相の系譜。今も代々宰相を輩出している。

現宰相は公爵家当主のため、長男が領内で代理をしている。


アラビス領は、魔道具を特産としている。

現当主が人材マニアな一面があり、学校を卒業した優秀な人物を自領にどんどん採用し発展させていった。

街の中には至るところに魔道具商店や工場があり、非常に賑わっている。

人間の便利への欲求は前世もこの世界も変わらないようだ。


「やぁ、お久しぶりです、ラウル卿、奥方のミゼル殿、君が噂の賢者リゼル君かな?

はじめまして、当主代理をしているルドルフ・アラビスと言います。

ようこそ我が領内へ、王宮にいる父にかわり、皆様を歓待致します。

長い旅路、たいへんお疲れだと思いますので是非、我が城が誇る温泉で旅の疲れを癒やして下さい。

後ほどささやかですが晩餐会を致しますので、それまで少しの時間ですがお寛ぎ下さい。では後ほど」


親子3人は来賓室へと案内される。


この世界へ転生されて早3年・・・やっと温泉に入れる・・・

私は前世時代、大の温泉好きであった。

この世界は風呂はあるが水汲みと湯沸かしが非常に大変だ。

我が屋敷は、父様が火魔法の使い手なので比較的お湯に浸かる機会はあるのだが…


「父様、早く温泉に入りましょう!!さぁさぁ早く早く!!温泉は待ってはくれません!!!!」


「リゼル、温泉は逃げない、普段の冷静さは何処に行った?そんなに温泉が好きだとは思わなかったよ?

そもそも温泉に入ったことはないだろう?」


「本で読んだのです。それ以来、温泉に憧れていたのです。

父様、温泉と書いて命の湧き水です!心の洗浄です!!魂の解放です!!」


「一体、何を言ってるんだ!?そんな3歳児みたことないぞ。

リゼル、我が領内にも温泉はあるんだぞ?知らなかったのか!?」


”ガーン…”


「父様、産まれてきて3年経ちましたが、今までの人生で一番後悔をしております。帰ったら領内の温泉に連れて行って下さい。一生のお願いです…」


「お・・・おう・・・領内の視察も兼ねて行ってみるか。リゼルがそんなに温泉好きだったとはまったく…」


「では、父上、早速アラビス温泉に入りに行きましょう!!」


将来、温泉卿と言われる男の誕生である。

賢者リゼルが残した有名な3フレーズがこれだ。


” 心が動くと体が動く "


” すべてが失われようともまだ温泉が残っている ”


” 温泉は分かち合うように作られている ”



”我が物語に温泉が沸き出した。”

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