ぬくもりにありがとう

 目を覚ますと、見慣れたけれど嫌いな白い天井が見えた。

「あ、気が付いた?」

 春のうららかな風のような、君の声が聞こえた。

「こ、こは?」

「いつもの病院です。分かってるんじゃないの?」

 なんとなく、君とのデート中に倒れたことまでは覚えていた。

「ごめん」「いいってば」

 君は少し寂しそうに僕を叱った。慣れた手付きでナースコールを押す君の姿を見て、なんだか胸が痛んで、涙が溢れてしまった。

「なんで泣いてるの?」

 君の声も微かに震えていて、滲んだ視界ではよく見えなかったが、君が泣いているのだけは理解できた。

「心配かけて、ほんとごめん」

「気にしないでよ、分かってて付き合ってるんだから」

 君が僕の手を握った。そのぬくもりに、僕の視界はさらに滲んだ。

 ありがとう。小さく呟いた言葉は、君に届いただろうか。

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