第3話 ニコの散歩

夕方4時半

1月という事もあり、もうあたりは薄暗くなってきていた。


「さて、寒くなってくる前にニコの散歩でも行ってこようかな。」

※ニコは雌のミニチュアシュナウザーである。


幸「私も行くー!!」

太雅「今日は、宿題多いからパスでも良い?」


私の時代にはそんなに宿題は多くなかったが、今の小学生は宿題が多い。そして宿題のチェックは必ず親がし、丸付けまでするのだ。太雅には言わないが、宿題の多さには同情する。


「大丈夫よ、じゃぁちょっくら行ってくるね。」


ニコにリードを付け、散歩へ。


「ママ!これ綺麗なお花。お家に飾ろう?」

「ほんと綺麗だね~。飾ろう飾ろう!」


1月で寒いというのに、子供は元気だ。

幸は2つ黄色い花を摘んでいた。冬は野花が少ない。というか、ほぼ花は咲いていない。全部摘むと可哀そうだからと、2つだけ摘んでいた。


その間、私はふと空を見た。

青くて空気も澄んでて、心が浄化されるような気分だった。

はたから見たら、新築の戸建てで、専業主婦として悠々と暮らし、犬も飼って、順風満帆に、幸せそうな家族に見えているんだろうな。実際は病気だとも知らずに。


はっ!

いかんいかん。また暗いじゃないのぉおおおおおお!!!

てか、人と比べて何になるの?私はわ・た・し!

それで良いのよ。うん。うん。


幸「ママ、う〇こ、踏んでるよ」


「え!!!!!!!!」

慌てて足の裏をみるとべっとり。

どこぞの犬がふんをしたぁ!飼い主、ちゃんと拾えや!!!!!!!

(心の声)


近くの草むらで靴の裏をズリズリ。


「きゃははははははは。う〇こ!う〇こ!」

幸の笑い声が周りに響き渡る。


5歳児。そんな大きな声で言うのはやめてくれ・・。


いそいそと家へ帰り、すぐに水道で靴の裏を洗う。

ポジティブに考えれば、う〇こを踏んだって事は、ついてる=幸運って事よね。

宝くじでも買えば当たるんじゃない。もし1億当たったら~。。と妄想にふけっていたら


「くさーい。ママがう〇こ踏んだぁ。」

鼻をつまんで2メートルぐらい離れて私を見ていた。


「幸、保育園で絶対にこのこと言わないでね。」

こんなの先生達が知ったらと思うと、恥ずかしすぎる。


「なんでぇ?」


・・・・・・・・。なんでって、理由がいるのか。

子供の無知って、可愛いと思っていたが、時に怖い。


靴を綺麗に洗い、南側の日が一番よく当たりそうな所に置く。

「冬だから2日ぐらいかかるかもしれないけど、これでよし!っと。」


家に上がり、洗面台でニコの足の裏をお湯で丁寧に洗う。ブラッシングもして、足やらおしりも拭いてやって、下へおろしてやると、嬉しそうにぴょんぴょんはねてリビングへ向かう。その姿はウサギのようだ。


幸が持って帰ってきた黄色のお花も花瓶に挿す。

「うん。とっても綺麗。」


幸も嬉しそうに花を眺めていた。

「お母さん、嬉しい?」


「もちろん!幸が選んだお花だもん。嬉しいに決まってるじゃない。」


幸はその言葉を聞いて、嬉しそうにぴょんっとはねた。


あ、ニコと一緒。

なんだか可笑しくなってクスクス笑った。

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