幕門 私の過去そして私の気持ち

 私は昔、感情を顔に出すのが苦手だった。そのせいでもちろん友達と言える存在もいなく学校で話す相手もいなく、ただ席に座って暇つぶしに本を読んでいるだけだった。

 この性格が原因でみんなからは、心の無い鈴と言われていた。

 心のない鈴。由来は簡単に察する事が出来た。心に無いは私の性格を称して言っているのだろう。鈴は私の名前から取ってそう言っているのだろう。

 学校でクラスメイトとすれ違えばあだ名で呼ばれたり、ノートの名前があだ名に書き換えたれたりと嫌がらせをされてた。

 そこから私は、学校に行かなくなった。その時が六年生の二学期くらいだった。嫌がらせをする人たちに何かした覚えはないのに、ただこの性格のせいで嫌がらせをされる。こんな事があっていいのだろうか。

 ただ一方的に嫌がらせをされて、何もできないままその人の心に傷をつけてしまうのだ。

 このあだ名は私を今日まで縛り付ける言葉と言っても過言ではないだろう。

 たが、こんな私でも周りの目なんて気にしずに関わってくれる男の子が一人だけいたのだ。

 名前は忘れたけど、確かいっちゃんって私は呼んでいた。きっかけは学校に行っていない私の家にプリントを届けてもらったのが始まりだった。

 学校に行けていない私にいろんな事を教えてもらって気づいたら暗い気持ちもいつしか明るい気持ちになっていて笑顔が増えていた。

 私がまた学校に通い始める頃には引っ越しをしていて今どこにいるのかす分からない。

 また、いっちゃんに会えたらこう言いたい。

 ありがとうって。

 それが私、海野真鈴の過去である。


 そして、今。私は許嫁の城道君の看病をしている。今朝、城道君のお母さんから看病してやってくれないかとメールが届き、今こうして看病している。

 彼の寝顔を見つめていると、枕が少し濡れているのに気が付く。おそらく汗だろう。このままじゃ寝るに寝つけないだろう。

 彼を起こさないようにそっと枕を取り出し、枕カバーを取り外す。結構汗の量が多かったのだろう。枕本体も濡れている。

 ティッシュやビニール袋みたいに予備があるわけではなく、だからと言って枕無しで寝るのは違和感を覚えるだろう。

「それなら・・・・・・」

 どうして私はこういう時にだけ、悪い方向に考えが向いてしまうのだろうか。でも思ってしまったのだ。私が枕の代わりになれば良いのではないかと。

 そこから私は彼の寝ているベットのお邪魔する事にした。

 ベットの軋む音がして少し彼が寝返りを打ったが起きはしなかった。

 そして彼の頭を少しだけ持ち上げて、私の膝に乗せる。

 これで少しは枕の代わりになってくれれば幸いだ。

「はあ・・・・・・辛そうです」

 優しく髪を撫でていると、やっぱり城道君はやっぱり男の子なんだなと伝わってくる。

 私の髪とは違い癖っ毛みたいにゴワゴワしている。思わず触ってみたくなるような感触。ふわりと香るシャンプーとリンスの匂いが鼻腔を刺激してくる。気づいたら数分は触ってて自分でもびっくりした。

 

 私にできる事を精一杯やって彼を治す。それが今しないといけない事だ。

 ひとまず体温を測ってお粥を食べてもらい今はすやすやと眠っている。

 私もずっと膝枕をするにしても、足が痺れたので今はベッドから降りて足を伸ばしている。

 ベッドの外からでも、彼の寝ている姿を見る事ができたので問題なかった。

「可愛い寝顔。赤ちゃんみたいです」

 思わず、彼のほっぺたを人差し指でつんと突く。それに反応したのか、また寝返りを打つ。

 今度このペースでやったら絶対起きてしまうと思ってこれ以上はやらなかった。

 

 

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