三十路のおっさんがバイクでツーリングの予定が次元転移に巻き込まれ、少女と鉄パイプを拾った話。

@vatinysuta

第1話 位階転移

2019年の8月の出来事であった。




札幌市内に地震がおき、一人の男性が行方不明になった。




河原茂利、フリーター、30歳独身、身寄りは無し、恋人もなし。




無いない尽くしの男性一人が消えた事件だが、局所的に起きた不自然な現象にあまたの評論家やオカルトマニアが騒ぎに騒いだ事件だった。




ただ、彼には関係ない……。




彼はそこにいて、そこにいない、そこと同じ場ではあるが別の次層にいたのだ。










激しくて、大きく立っていられない揺れだった、地面にいるのにまるで遊園地のアトラクションの揺れのようであった。




「……なんだコレは……」




茂利は土ぼこりが舞うアスファルトの上で、バイクにしがみつきながら目を細める。幸いヘルメットはフルフェイスで、周囲の確認はしやすかった。




倒壊するビル、炎上する建物、一部亀裂する大地。そして人間だったもの。




「ッ!」




目を覆いたくなる光景だが、彼が一番に我が目を疑いたくなったのはそんなものではなかった。




「なんだよ、あれはッ!」




二足歩行で人のように見えるが人でない、こん棒を片手に歩くまるでゲームに出てくるゴブリンのような姿をした奴らの群れ。そして見たことのない魔物の群れだった……。




茂利の身体が、脳が、すべての神経がまるで叫んでいるように感じられたかもしれない。彼にその場からとにかく立ち去さり、避難するよう本能が警告していたのだ。




茂利はすぐさまバイクにまたがり、アスファルトの無事な場所を選び魔物の群れと反対方向へ逃げる。




幸いにして魔物の群れ、一部を除いて足はそれほど速くはない、バイクならば簡単に引き離せた。




茂利が安心したその時、また大きな揺れが起きた。




「うわわ!!」




茂利が慌ててバイクの速度を落として、停車するよう運転をする。どんな速度であれ、転倒なんてしたらひとたまりもない。




ましてや、バイクが故障したり、自身がケガを負ったりしてしまったら、どうなってしまうか……。想像に容易であった。




轟音と共に、周囲にまた砂ぼこりが立ち込めて、晴天のはずなのに周囲が暗くなる。




茂利はビルが倒壊したのかと思い、安全の確保を最優先で思考を働かせる。




潰されたら一巻の終わり、破片でも当たればそれこそ即死か致命傷、よくて軽症で魔物の餌食であろう。




「!?」




上を見て、茂利は膠着した。




頭上にはまるでハリウッド映画のSF作品でみるような、巨大なメカのようなものがあったのだ。

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