第20話「内臓は下がる」


父「昔の人は50歳くらいが寿命だったんだって。♪人間〜50年〜 とかってしらないか? 織田信長の……」

娘「敦盛あつもり?」

父「そう、よく知ってるな!」


娘「このあいだ、時代劇でやっていたんだ。本当の意味は“人間世界の50年は天界の1日に相当する”って意味らしいよ」


父「そうなの!? 寿命じゃないのか? しかし、冬子も時代劇を見るようになったのか、魔法使いのアニメばっかり見てたのにな……」

娘「魔法使いじゃないけどね、まぁ似た感じはあるか……」


父「それで、俺のお尻が痛くなったのが50歳なんだ」

娘「人生50年、お尻も50年?」


父「今は100年時代だから、お尻も100年だ! しかし、お尻のケアの仕方を知らないで100年もお尻を使い続けるのは難しい」


娘「お尻ってケアするんだ」

父「お尻だけじゃないけどね、関節も内臓もケアしないと」

娘「それは、どうやるの?」

父「親父がやってたやつ、導引」

娘「あ〜っ、あれがそうなの……」


父「俺さ、このあいだ自動販売機でミルクティーのペットボトルを買ったんだよ」

娘「珍しいね、お父さんが紅茶なんて」

父「その時はパチンコで負け続けて、何とか流れを変えたいと思って、いつもはコーヒーのペットボトルを買うんだけど、ミルクティーにしたんだ」


娘「なにそれ、縁起を担ぐんだ、それで勝ったの?」

父「そう、勝ったんだ! 久しぶりに勝った」

娘「それは良かったわね。あたしはチョコレートが欲しいな〜 アーモンドの入ったやつ」

父「あぁ、今度もらってくる。それで、次に同じパチンコ屋さんに行った日にも同じ自動販売機でミルクティーを買ったんだ」

娘「けっこうゲンを担ぐんだね」


父「パチンコは運での勝ち負けが強いからな、見えないものの助けが欲しいんだ」


娘「お父さんの必勝法はあるの?」

父「俺の必勝法は台に執着しない事だ!」

娘「回る台で粘ると勝てるって聞くよ」

父「それは、朝から晩まで打つような場合で、俺みたいに2〜3時間しか打たない者はすぐに当たってくれる台の方がいい」

娘「そんな台があるの?」

父「有名なパチンコ好きな人が『パチンコで当たりやすいのは打ち始めだ!』と本に書いてあった」

娘「へ〜〜っ」

 本当かねという目で勘蔵を見る冬子。


父「そうだ、ミルクティーだよ、ミルクティーで俺は人体の法則に気がついたんだ!」

娘「人体の法則?」

父「自動販売機でミルクティーを買った時にペットボトルの中に白いものがあるのに気がついたんだ」


娘「なに、ゴミ、異物?」

父「いゃ、2回目に買った時にわかった。同じように白いものがあった」

娘「ミルクかな?」

父「そう、今日は冴えてるな!」

娘「へへへっ……」


父「自動販売機って、たぶんペットボトルを横にして入れてるんだよ。だから下になっていた面にミルクが溜まっていたんだ」


娘「それが人体の法則?」

父「そうだよ、リンゴが地面に落ちるのといっしょだ」

娘「引力を見つけたの?」


父「まぁ、そうだな、体の内臓ってボルトで固定されてるわけじゃないだろ?」


娘「それはそうでしょう。人造人間じゃないんだから」

父「そういえばヱヴァ○ゲリヲンって人造人間なんだよな。あれは、いったいなんだったんだろう?」

娘「なんだろうね。あたし映画は全部見たけどわからなかった」

父「俺も全部見たけどわからなかった。精神世界なのかな?」

娘「わからないけど、続きが見たい。終わっちゃったけどね」


父「昔、『宇宙戦艦ヤ○ト』ってあったじゃない、知らないか?」

娘「知ってるよ、今もやってる。リニューアルだけど、ユー○ューブで予告を見たよ」


父「今もやってるのか!? あれさ、映画の2作目で完結して、主人公は戦艦と共に爆発したんだ。映画の最後にも、これで終わりって書いてあったんだけど、熱狂的なファンが多くて映画の続編ができたんだ」


娘「それならヱヴァ○ゲリヲンもやるかもね」

父「やって欲しいね。別の監督でもいいから。熱狂的な奴がいるんじゃないか? そういえば『タイ○ニック』もあまりの人気で続編の話しがあったらしいんだけど、主人公が亡くなって船も沈んじゃったからって続編はなかったんだ」

娘「宇宙戦艦ヤ○トはやったのに……」

父「タイタニックもやったら続いたかもな? 何の話しだっけ、人体の法則か……」

娘「そう、そう、いったいなんなの?」


父「なんだっけな……ミルクティーか……そうだよ、内臓は下に下がるんだよ!」


娘「下にさがる?」

父「そう、スーパーのミルクティーは立てに置いてあるから下にミルクが溜まってもわからないんだ、それが自動販売機で横に置いてあったからミルクが下に溜まっているのに気が付いたんだ!」

娘「うん、なんとなくわかってきた」


父「さすがだな、わかったか!? 元々人間は横型で四足歩行だったのが縦型になり二足歩行になったが、内臓の配置は、ほとんど四足歩行のままなんだ」

娘「どうしてわかるの?」

父「それは、人間の祖先がネズミに近い動物だったらしいんだ。だから薬の実験でもネズミを使うだろ、そのネズミの内臓の配置が人間にそっくりなんだ」


娘「へ〜〜っ、ネズミ男?」


父「四足歩行なら心臓とお尻が平行で血液の循環も楽だし、お尻が痛くなることも少ないだろう。しかし、二足歩行だと心臓の下にお尻だから血液の循環は難しい」

娘「なるほど……」


父「お尻が下にあって、便を我慢したりすると上から押されるんだ、だから段々と下に下る。それをどうするか? そこでトイレットペーパーで内側に向かって押すんだ。トイレットペーパーで押していると、ある日、肛門が奥に引っ込むのが分かるぞ」

娘「そうなの?」


父「お前は、まだ若いから感じないだろうが、歳をとると内臓も筋肉で支えているらしくて下がってくる。胃下垂なんて有名だろ?」

娘「胃下垂の人はいるね。レントゲンを撮ったらおヘソあたりまで下がってたって言ってた人がいた」


父「胃でもなんでも下がったら、その下にある臓器はいい迷惑だ、下手したらうっ血で病気になるぞ」

娘「それ、おじいさんも言ってた。内臓を上げるには筋肉を鍛えるのと腕を上げるんだって」


父「あれだろ、湯たんぽを持ってスクワットと頭の上に持ち上げるんだろ?」

娘「そう、導引の秘伝だって」


父「そうなんだよ、あれは効くんだ。首と肩の交わる辺りのコリはあれじゃないとなかなかとれないし、あれをやったあとに首や肩の導引をやると効果が高い」


娘「お尻にも効くの?」

父「どうかな、スクワットで足の筋肉をつけるのにはいいかな? 内臓を上げるから便秘解消にはいいだろうが、痔には直接は効かないだろう。あまり体力の無い人は湯たんぽを頭の上に落としたら大変なことになるし、あくまで筋トレの一つだな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る