28.今度は三人で

「まず、前衛は僕がつとめます。敵は一体で重量系ということなので、剣士の僕が攻撃を受け止め流すことを意識して立ち回ります。キリシマさんが後衛の砲台係。僕が敵を足止めしているうちに『爆雷』を詠唱し発動させてください」


「御意だ。頼りにしているぞバーレッド」


「ええ」


淡々と作戦を説明していくバーレッドに聞き入る二人。

爆雷というのは最も威力が高い攻撃魔法の一つで、キリシマが得意とする魔法だ。

複数の雷を敵の頭上へ落とし感電及び炎上を引き起こして敵を殲滅する、見た目にも派手で強力な高等魔法。

彼が持つ魔法使いをカンストさせた時に得られるスキルは雷系の魔法威力を増大する代わりに詠唱時間が長くなるというもので、最高火力を出すためには35秒間の比較的長い詠唱時間が必要だった。


黒鎧の男の守りがどうあれ、トップクラスのプレイヤーが操る最大火力の魔法にはどんなモンスターでも太刀打ちが出来ないはずだ。

相手がもしNPCであるならば人間キャラクターの最大HPである9999のダメージをも叩きだすこの魔法で一撃でもある。

正体不明の相手に対する賭けとして使うにも十分すぎるほど十分な選択だろう。


そして、その間無防備になるキリシマに敵が近づかないよう身をはって彼を守るのがバーレッドの役割。

二刀の剣士である彼はかつての仲間であるスクルージのような重鎧の戦士や体力自慢の舞踏家などには劣るものの、魔法職と比べれば断然HPも高く防御力を上昇させるスキルも会得している。

加えて彼は俊敏な動きが得意で、重量級の敵とは相性が良い。

バーレッドは大振りな攻撃をかわすことに適していた。


「ルタくんは僕を常に回復し続けてください。MPが切れてしまったら隙を見てアイテムで補充して、とにかく僕のHPが減らないように注意していてください」


そして二者がそれぞれの役割を徹底する中、場を管理するのが回復職の役目となるが、全体を見据えてHPの管理をすることなど到底無理な話だろうとキリシマもバーレッドも踏んでいた。

それ故にルタにも単純明快な、一つの役割のみを全うするという作戦を与えるのだった。


「聞いているな? 貴様にかかっているのだぞ、ルタ」


「が、がががっ、がんばります……!」


名前を呼ばれたルタはかされたプレッシャーに思わず食べていたバケットが喉につっかえそうになる。

ベテランのプレイヤー二人がついているとは言え、その二人の命綱を握るのが自分だなんて。と弱気になり眉が下がってしまう。

それでもやるしかないのだ。


「任せてください、ご主人さま! バーレッドさん!」


威勢よく水を飲み、食べ物を押し流しながら大きく頷いた。

彼の大きな青い目は不安の涙ではなく希望に満ちている。



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