25.衣装を整える

とはいえ二人のプレイヤーと比べてレベルも天と地の差があり実戦経験もゼロ。

不安だらで震えているルタを見て、バーレッドも心配していたがキリシマだけは自信に満ち溢れていた。

頭の回転が早い彼は既にこのことに対する処置を思い付いていたのだろう。


「そうと決まれば先ずは装備だな」


キリシマが指をパチンと鳴らしてアイテム画面の一覧から譲渡を選択。

すると、ルタの両手に抱えきれないほどの装備品が乗せられた。


「わっ、わわ! ご主人さま?!」


「我が以前使用していた物だが、今の貴様のレベルで扱える装備だ。付けてみろ、ルタ」


「は、はい!」


主のお古と聞いてほんのり頬を染め、装備品を抱き締める。

嬉しそうにしてからルタはその場で着替えを始めた。


魔法攻撃に耐性を持つ薄紫のローブに絹のブラウス。

新品同様のブーツは、使わなくなった後も修理に出したり自分で修復をしていた物。

呪文の対象を分かりやすくできる指揮棒サイズの短い杖。

キリシマはいつも自分と同じ魔法職の新人がギルドにやってくる度にこうしてお古を分け与えていた。

何だかんだで面倒見がいい男だ。


まるで西洋の立派でリアルな着せ替え人形のようだ。

装備を整えさせ、髪をとかして綺麗にしたルタはよくみれば中性的な美少年だった。


「僕からも餞別に。MPの上限を少しアップする指輪です」


「自分めにこんなに良くして頂いて……よろしいのですか?!」


「キリシマさんが言う通り、ルタくんも僕らの仲間だからね。これからの活躍に期待しています」


バーレッドが仕上げにと小さなエメラルドがはめられたリングを彼の中指に通す。


「わあぁ。すごい……ありがとうございます!」


素直に感動し喜ぶルタ。

NPCとしてあり得なかった衣装替えに上機嫌になってその場でくるくると回り、自分の姿を確認する。

まさに灰被り姫(シンデレラ)が一夜の魔法でお姫様になったかのような変身ぶりだ。

その様子には彼だけではなくキリシマもバーレッドも感心し、道行くNPCも美少年の降臨に二度見三度見をしながら通りすぎてゆくほどであった。


「なんだか懐かしいですね。この感覚」


「ああ。ギルドに新入りが来た時のようだ」




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