22.手伝い屋

ゲームの世界に取り残されたプレイヤーを探し当てるのは困難だ。

それにバーレッドが懸念する通り、LSOでは回復職(ヒーラー)自体が限られた種族でしか取得できず、その種族自体が半年前から制限されてしまっている。

その中でヴァロランドのテロに臆せず残った者、かつ制限されていなかった期間で回復職でゲームを始めたプレイヤーなどという希少な存在が見つかるのだろうか。


そもそも、バーレッドとキリシマ以外にそんなプレイヤーが存在しているのかもわからなく、そんな人物がいたとして二人とコミュニケーションがとれるとも限らない。

第一、この市場の人混みの中でさえ二人を押し流さんほど大勢のNPCがおり、この中からプレイヤーのような少し目立つ存在を探そうとすれば何日かかるかわからない。先に所持金が底をつくだろう。


「そうだ。我が買いつける物も帰還予定日も何も命令を出さずに市場に行けとだけ指示をした若い『手伝い屋』が三日ほど前からこの市場で迷子になっているに違いない」


「手伝い屋……って、それこそNPCじゃないですか?! というかそんな酷い設定で送り出したんですか?!」


手伝い屋とは、LSOにおける道具(アイテム)倉庫兼売り子・買い子の役割を持った各プレイヤー専属のNPCのこと。

特定のクエストをクリアすることで開放され、プレイヤーキャラクター同様にキャラクターメイキングを行ったうえで性格などの詳細を選び、名前をつけて雇用することができる。

通常はプレイヤー一人につき手伝い屋も一人だが、現実の通貨で課金することによって複数雇用も可能だ。

バーレッドもキリシマも数人ずつ雇っており、全員ギルドハウスに紐づけて使用人風の格好をさせていた。

彼らにあらかじめ指示を出しておくことで、プレイヤーがログアウト中でも近くの街などに買い出しにいったり不要なアイテムを売っておいてくれたりと便利な存在で、複数の手伝い屋を屋敷(ハウス)に従事させていることは、上流の課金プレイヤーの証明でもあった。


キリシマが広い市場で行き交う人々の中に探しているのは、そんな手伝い屋の中でも特に最近、LSO終了日の一週間ほど前……課金アイテム払い戻しの告知が出ているにも関わらず購入した新人だという。

そしてその新人に、あろうことか何の目的も提示せず市場へ行ってくるように指示したのが今からちょうど三日前で、すっかり存在を忘れてしまっていたとまでキリシマは言ってのけた。


「かわいそうに……キリシマさんも殺生ですね。その子、こんな事態になってなければゲームの中で一生迷子のままじゃないですか……」


「まぁ、今の状況はあやつにとっては幸運かもしれんな」

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