第3話 美少女の生首との出会い


「……ぉぃ……おい変態っ!!!」

「ひっ!!!」


 突然どこからかお子様な声が聞こえてきた。

 怖っ! 俺はビビりながら周りをきょろきょろと見回した。

 しかしどこにも誰もいなかった。


「誰だ! どこにいる! 姿を見せてくれ! 何もしないから! 安心してくれ丸腰だ!」


 俺はどこからでも見易いよう両腕を大きく広げどこかに隠れている誰かに叫んだ。


「何を云ってるのだ。さっきからここに居るだろうが」


 すると足元から呆れた様な声が聞こえてきた。

 まさかと思い恐る恐る下を向くと、先程俺が落ちていた穴からひょっこりと人の頭が生えていた。


「ひゃっ!? ななな、生首!!」


 俺はギョッとして思わずアソコを押さえて跳び退った。

 よく見れば顔は小さく幼い感じの少女で、とてもキュートだ。髪色は艶のあるシルバーで光の当たり方でライラックの花色にも見える。

 この時ちょうど風が吹いて美しい長髪がふわりと流れ、思わず見惚れてしまった。

 てそんなことよりもこの状況ちょっと怖いだろ。

 何で美少女が地面に埋まっているんだ?


 そんなことを考えていると再び足元から声が。


「誰が生首だ! かわいい少女を前に失礼な奴なのだ。フン……変態のくせに!」

「っ!? 変態!? だと!? ななな……なぜ俺のあだ名を知ってる!?」


 なぜか俺のあだ名を知る少女に動揺するも何とか言い返した。


「どっからどう見ても……ヘッ・ンッ・タッ・イッなのだ!」


 いかにも胡散臭いものを見るようなジト目で俺を見上げてきた。

 俺の昔からのあだ名を呼ばれてびっくりしたが、どうやら俺を本物の変態と勘違いしているようだ。失礼なやつだ。だが誤解は解かねばならない。

 俺は彼女の目線に近付けるためにしゃがみこんだ。


「お嬢ちゃん、お兄さんは変態ではありませんよ? 確かにあだ名は変態かもしれないけど。目覚めたらなぜか身ぐるみ剝がされていたというか俺にもさっぱり意味不明なのだが……。それよりも一人で地面に埋まって遊んでるお嬢ちゃんの方が変態チックですよね?」


 俺は理不尽にも変態扱いされたので、少し彼女に皮肉をかましてあげた。

 彼女はしばらくの間、俺の足先から頭のてっぺんまで疑いの目でクリクリの黒目を往復させていたが、突然ハッとしたような表情を浮かべると、一人ウンウンとしきりに頷きだした。

 どうやら分かってくれたらしい。


「疑って悪かったのじゃ。裸でうろうろしてるからてっきり変態だと思ったのだ。すまないのだ」


 彼女は素直にペコリと頭を下げた。


「いいんだ分かって貰えれば」


 俺は寛容に許してあげた。それに美少女に変態と言われるのは、それはそれでなかなか……いやいやそれこそ変態ではないか!


「ほんとすまないのだ。寝てる間に追いはぎにあったのか? それなのに疑ってしまって悪かったのだ……しかし脱がされても気付かぬとはお主も大概じゃの」

「へっ?? 追いはぎ?」


 彼女は同情しながらも残念な人をみるような目でこちらを見上げていた。

 どうやら俺がスッポンポンの裸なので野盗だか追いはぎに身ぐるみ剝がされたと勘違いしているようだ。


「よいよい、大変だったな。見たところ大きな怪我は無さそうだ。今夜は我の家に泊まるとよいのだ」


 勝手に勘違いしているようだが、変態扱いよりはだいぶマシだから誤解させておいてもいいか。


「えっ……でも見ず知らずの男がいきなり家にお邪魔したら、ご両親も流石に困るんじゃないか」


 彼女のご両親も娘が突然男を連れてきたら、彼氏かと思ってびっくりするだろう。

 いや、この子は見たところ、良くて中学生くらいにしか見えないから、もしかしたら通報されてしまうかもしれない。

 俺はもう十八歳だからな。


「心配いらん。我は独り身だ。両親などおらんから気がねなどいらんのだ」


 つっ! こんな若いのに一人で暮らしているなんて、なんて気の毒な子なんだ……きっと一人食べるのも大変だろうに、家にまで招待してくれるなんて、いい子過ぎてお兄さん心配ですよ。変な男に騙されないように気を付けて欲しい。

 どこに変態がいるかわからないからな!

 もしかしたら俺と同じで両親を若くして無くして、寂しい思いをしているのかもしれないな。

 ひょっとしてお兄ちゃんが欲しいのかも!? つっ! どうする俺! これはフラグなのか!?

 このまま家に付いて行ったら、そのまま義理の兄妹となってイチャコラするような展開が……と変な妄想でちょとだけ顔が朱くなってしまった。

 お兄ちゃんダーイスキ! なんて言われたらどうすればいいんだぁ! うおぉぉ!

 我知らず腰がクネクネと動いてしまう。



「おい! 何だらしない顔してるのだ? 変なキノコでも拾い食いしたのか? 取り敢えずちょっと手を貸すのだ!」

「はひっ!!!  よ、よし、お兄ちゃんに何でも相談しなさい!」


 昔から可愛い妹がいたらなあと妄想していた俺は、急に声を掛けられて変な声が出てしまった。


 それにしてもこんな美少女この世にいたんだな……。

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