きいろの甘梅雨

伊月 杏

第1話 きいから梅雨へ


「きいちゃん」って優しく呼んでくれる梅雨つゆちゃんの声がすき。暗がりのなかで「梅雨」って囁くと、恥ずかしそうに笑うその仕草がすき。



きいは甘えるのがだいすきだから、梅雨ちゃんにずっと抱きしめられていたいし、ずっと柔らかいクリームパンみたいな手を握っていてほしい。ふかふかの身体に包まれていたいし、何度だって優しくて甘いキスをしてほしい。


梅雨ちゃんは大人びてみえるけど、本当は甘えたくて仕方ないこと、知ってるよ。甘え方がわからないなら、きいがたくさん教えてあげる。



今日も、すごく楽しかったね。



梅雨ちゃん、水族館また行こうね。次はもっとゆっくりペンギンを眺めていたいね。パンケーキが美味しいっていうあのカフェ、今日はおやすみだったから残念だったね。次行くときには開いてるといいな。でも代わりに食べた隣のお店のチーズケーキも、すごく美味しかったよね。


ふたりで分けあったピアスは宝物にするよ。

キウイみたいな瑞々しい色の可愛いピアス。



梅雨ちゃん、たくさん写真撮れた?


真剣な目で真っ直ぐファインダーを覗き込んで、カシャンって音がして、嬉しそうな顔をする梅雨ちゃんがすき。


ねえ、今度はきいのことを撮ってよ。めいっぱいのおしゃれをするから。梅雨ちゃんにしかみせない顔だってするよ。でも、写真は他の人に見せたらだめだよ。だってその表情は梅雨ちゃんだけのものだもん。



梅雨ちゃん、最近ちょっと痩せたんじゃない?疲れててもご飯は抜いたらだめだよ。いっぱい食べて、いっぱい寝てね。また一緒にご飯食べようね。


キスはいつもとおなじ甘い味。どうしてだろうね。でもきいはそれがすっごくすきなの。ふわふわで、やわっこくて、とっても安心するんだ。


終電間に合ったかな。気をつけて帰ってね。きいは、もうおうちに着いた。帰ってきたら彼がご飯を作ってくれてたから食べた。トマトカレー、とっても美味しかったよ。


それじゃ、またね。

梅雨ちゃん、だーいすき。

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