第2話 身内からすると......

「ねぇ、笑わないで答えてね」


 家族3人での夕食時、テレビがCMになったタイミングで切り出してみると、ニヤも夫も私の方を向いた。


「何、ママ?」


「私って、天使とか聖母とかってイメージかな?」


 すごく真剣に尋ねたつもりだったのに、夫は爆笑し出したし、それを受けて、ニヤまで大爆笑。

 なんか、これはこれで、傷付く......


「何だよ、唐突に真面目顔で訊いて来たと思ったら、笑わせるなよ」


 笑い過ぎて息切れモードの夫。

 そこまで笑える内容だった......?


「何、その反応、かけ離れているってこと?」


 かなりショック受けながらも一応訊いてみた。


「かけ離れているわけではないけど......うーん、確かに接客の仕事が多かったから、笑顔は良いとしても、普段、そんなイメージをミヤ子に重ねた事なんてなかったから、なあ、ニヤ?」


「うん!幼稚園の友達が言っていたけど、ニヤもピンと来ない」


 2人が率直な意見を言ってくれた。

 私も正直、そんな感じだと思ってた。


「そうよね、私も、そうだと思っているんだけど。それなのに、幼稚園のママさん達は、子供達の言葉を真に受けて、ヤキモチ妬いているようで、最近、妙に絡んでくるの!今日なんて、私を囲んで習い事の話になって、人だかりが出来て、幼稚園の先生達も迷惑そうだったわ!」


 迎えに行った時の一騒動を話して、家族の反応を見た。


「そうか、ニヤももう年長なんだな、何か習い事始めようか?」


 夫は、私の取り巻きで困っている状態よりも、習い事の方が気になったようだった。


「え~っ、面倒くさい!友達も皆、親がやらせてきたけど、面倒だって言ってるよ~!」


 やっぱりね~、子供の気持ちとしては、習い事はそんなに好きじゃなさそう。


「楽しんでやっているお友達とかいないの?」


「絵を習っている美春ちゃんくらいかも。美春ちゃん、すごく絵が上手いの!」


 子供の適性に有った習い事だと楽しんで才能も伸ばしてあげられる。

 でも、ニヤの場合、何が向いているのか、まだ分からないし、本人も面倒臭がっているから、まだいいよね。


 「それで、幼稚園ママ達の注目を浴びないで済む方法って、何か名案無い?」


 こっちが本題!

 私も、取り敢えず、対応を素っ気なくするとか試してみたけど、あまり効果感じられないし。


「ミヤ子が、天使とか聖母のイメージからかけ離れた事をしでかしてみたらどうかな?怒ってみるとか?」


 夫の提案にハッとなった。

 確かに、あの幼稚園ママ達の口調は、私をわざと怒らせようと煽っているように思えなくもない。


 そうか、彼女達は、よってたかって私の笑顔が崩れるその瞬間が見たいに違いない!


 そして、それが、天使や聖母なんてイメージを払拭するようなインパクトのある状態で、幼稚園ママや園児達の前でお披露目されるのが、好都合。


 それなら......


 ずっと昔に楽しんでいたイタズラ心が、ひょっこり顔を出して来ているのをどこかで感じた!


 「イイ事思い付いちゃった!」


 幼稚園ママ達の反応を想像しただけで笑えて来る!


「良かったじゃん!何か、手伝う事有る?」


 夫が尋ねて来たが、残念ながら、今思い付いたプランでは、夫には、幼稚園ママ達の前に出て演出してもらう機会が無い。


「ううん、特に無いけど。真面目に聞くけど、私って、肌、キレイかな?」


 さっき爆笑されたのが心外だったから、今度は笑って欲しくなかったのだけど、またビールを飲んでいた夫の手が止まり、ゴクリと飲み込んでから、ドカ笑いし出した。


「何だよ、さっきから、品評会のように感想求めて来て」


「笑うのはナシ!これは、大事なポイントなんだから!」


 口元を膨らませて、夫を睨み付けた。


「うーん、そうだな。素肌は、陶器のような白くて美しい肌ってわけではないけど、化粧でそこそこ誤魔化せているな」


 その言葉を鵜吞みすると、少し癇に障る内容だったが、今の私には、その言葉こそ、必要だった。


「そうだよね、化粧で、かなり美肌になってるって実感有る!」


 私が、怒る事無く、夫の意見に賛成すると、夫は一瞬意外そうな顔をしたが、少し考えて納得顔になった。


「なるほどね~、そこから、攻めるのか」


「私も、卒園までは、幼稚園ママ達と亀裂生じさせたくないし、上手く行く事、祈っていてね!」


 善は急げ!

 早速、明日のお迎えの時に決行しよう!

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