第6話:人の不幸最高:コロナ最高!破滅最高!、マジで人類滅ぼしてやる!

2020年、1月。

中国がパンデミックになるという。

国連が、がなり立てている。

「パンデミック」ってなに?。

利益になるの?。

「感染爆発」と言うらしい。

昨年末に発生したウイルスに中国がおかされるらしい。

そのニュースが日本でも騒がれ始めた。

「日本にも上陸の危険が……」

悲観的なメディアはそう叫ぶ。

爆発?。

そんな馬鹿な。

でも、何か世界がまずいらしい。

じゃあ稼げるかな?。

何か商売が出来ないか?。

私は考える。

そう言えば、日本にも平成米騒動っていうのがあったな。

よく親から聞いた。

異常気象で米が不作になって、日本中がコメ不足のパニックになったって。

よくニュースで流れるはるか昔のオイルショックと同じだ。

この中国のウイルス……。

なんか似てないか?。米騒動に。

異常気象と新型ウイルス。

似てる。

そうッ、買い占めだ!。

アホの私でもストレートで連想できる。

東日本大震災のときもそうだった。

あのときは飲料水をはじめとした食料。

オイルショックはトイレットペーパー。

天変地異に買い占めは付きもの。

では、今回は、何が?。

やはり定番のトイレットペーパーか……?。

いや、それはまだ早いような気が……。

なぜなら、ほぼ100%、国内産だからな。

じゃあ、何だろうなあ……?。

自然と手がスマホに。

ツイッター

ライン

リアルタイム検索……、

ネットの情報をしらみつぶしに集めまくる。

どうやらマスクが来るらしい。

ほんの数文字、医療関係者が書き込みしている。

マスクか。

では、マスクをピンポイントで検索する……。

「不足」の文字はない。

まだ、騒がれていないな。

しかし、ほとんどが中国製。

これはいけそうだ。

中国が本格的なパンデミックになれば、必然的に輸出制限がかかる。

自国の供給でいっぱいいっぱいになるからだ。

さらに理詰めすると、もし日本がパンデミックになれば、マスクは間違いなく不足する。

今、真冬で、ただでさえマスクは売れている。

ただ、全員が全員、めているわけではない。

しかし、これがパンデミックになれば、ほぼ日本人、全員がマスクを装着せざるを得なくなる。

そうなれば、間違いなく高値で売れる。

絶好の書き入れ時だ。

いけそうだなあ。

あとは国難を願うのみだ。

国難はせどらーにとって転売パラダイスだ。

国難、来い!。

日本死ね!。

油断せずマスクを見張る。


しばらくしてクルーズ船の行方。

沖縄を出発したクルーズ船内で感染者が発生したらしい。

次の寄港先は横浜だ。

上陸は無理だろう。

じゃあ、どうする?。

船内でパンデミックを起こすか?。

船員を見殺すか?。

どうする政府?。

ネットは盛り上がって面白がってるな。

しかし、これはパンデミックではないな。

まだ対岸の火事だ。

ネットでマスクの店舗標準価格を調査する。

まだ普段通りの価格。

だいたい1箱50枚入りが500円前後。

これでは利益が取れない。

SNSも騒いでいない。

確証がないと仕入は出来ない。

不良在庫の山になるだけだ。

やはり決定的な国難が必要だ。

そうこうマスクを毎日観察しているうちに、中国はとんでもないことになっている。

死者数が半端ない。

情報統制する中国がそれを制御できないくらいパニックに陥っている。

こりゃあ、何か始まりそうだなあ。

日本にやってこねえかなあ。

今度は角度を変えてネット検索する。

ガラにもなく政治経済ネタだ。

よく分からない漢字と単語ばかりだなあ……。

「全人代」ってなんだよ。

国家主席が国賓として来日するらしいが、来られるかどうかで揉めているらしい。

政治経済のバイアスを掛けてウイルスを調べていくと、どんどん中国の歴史や文化の話ばかりに行きつく。

そこで、ある単語が飛び込んできた。

「春節」。

中国の旧正月で大型連休らしい。

毎年、この春節のときに、中国人は日本に爆買い旅行に来るらしく、観光業界のみならず、インバウンドに関係する産業、具体的に、

航空

飲食

家電メーカー

化粧品メーカー

サブカルチャーに地方の土産店まで、

とにかく莫大な数の人間が、かなりこの春節にはしがみついているらしい。

その間近に迫る今年の春節において、政府は、中国人の入国制限はしないと発表した。


来たッ!。


これだ。

これしかないと確信した。

間違いなく日本は感染列島になる。

我々の時代が来た!。

今しかない。

速攻、ネットでマスクの市場調査をする。

まだ定価だ。

SNSも騒いでいない。

しかし、せどらーがちらほら動いている。

都内の店舗在庫が品薄になってきている。

どうやら始まったようだ。

確実にマスク不足になる。

都内はダメだ。

都内で買い占めをやると、ニュースになって火に油を注ぐ。

買い占めはひっそり行うのが鉄則。

どこに行くか?。

地図検索。

神奈川

埼玉

千葉

群馬

栃木

茨木……。

このくらいか……。

足回りがいい場所、つまり交通渋滞が起きにくい土地。

人口密度も低く、情報弱者が多い土地柄。

すぐに飛んでいけるところ……。

ネット地図の国道・県道・鉄道を目がチカチカ痛むまで見まくる。

そこに一本の線が。

海に浮かぶ真っ直ぐな一本の線。

アクアラインだ。

これだ。千葉だ。

内房うちぼうならまだせどらーが入っていない。

さっそく、店舗検索専用アプリで内房の地図に「ドラッグストア」と入力する。

あるある!。

ドラッグストアのアイコンが内房の過疎地に浮かび上がる。

JR内房線に連なる国道・県道沿いの町だ。

ストリートヴューを見ると、一面灰色のクソど田舎。

人のいない忘れられた土地。

しかし駅前に小売店は確実にある。

秘境。

買い占めにはもってこいだ!。

ここの地帯をアクアラインで突入して縦断すれば、確実に買い占めできる。

お宝は確実に眠っている。

こうしちゃいられない。

私はすぐさま、電脳くんと店舗くんとプレくんの外注員3人に号令をかけた。

「今から、2台の車で内房に向かい、マスクを買い占めるッ」

私が宣言すると、3人は目をキョトンとさせて

「今やってる仕事はどうなるんですか?」

と呑気に問いやがる。

「保留保留!」

と叫んで、とにかく3人を、会社のハイエースと店舗くんのワゴン車に押し込んで、アクアラインの入り口・川崎にすっ飛んだ。

午前11時を回っていた。

急がねば。


とにかく突っ走った。

説明は車中で。

みんな「ホントですか?」とニヤついて反論したが、私は「必ず来る!」と突っぱねて、有無を言わさず車を走らせた。

川崎のコンビニでおにぎりとお茶を摑み取りして、アクアラインの中でがっついて腹ごしらえした。

いつもなら、アクアラインの、あの、トンネルに入る瞬間の「コーッ」というエンジン音の変化を楽しむのだが、そんなの完全に忘れていた。

A町に着いてとりあえず駅前のコンビニに入った。

減っている……。

残っているのは3箱。

せどらーは入っていない。

しかし、一般消費者が気付き始めている。

時間が無い。

とりあえず3箱買ってこの町は捨て置く。

携帯のアプリを起動させ、

千葉県の地図を出し、

ドラッグストア

ホームセンター

ディスカントストアを表示させてB町方面を目指した。


枯れた田んぼと畑が360度広がる、うすさびれた田舎町と呼ぶにふさわしい過疎の地。

曇天の鈍色にびいろの低い空、

横殴りの鋭利な風、

そして、絶叫のようなイレギュラーなトラックの轟音。

まさにゴーストタウン。

東京からほんのちょっと離れた町はまさに格差の象徴。

それが内房だ……。

鉄道沿いに片っ端から店に入っていった。

まずは、冬の田んぼの水平線にそびえ立つ巨大なはこ・全国チェーンのドラッグストア。

駐車場ガラガラ。

「いけるッ!」

車をキュッと止めて飛び込む。

咳が出そうな粉が吹いている錆びついた店。

真冬なのにマスクが店頭に並んでいない。

その手の人間が入っていない証拠だ。

というより、誰もいない。

店内を見回すと一人、60代ぐらいの白衣を着た薬剤師みたいな女がいたので、マスクの存在を訪ねた。

我々若い女1人と気持ち悪い男3人。

いぶかしがる女は、無言で奥へと案内した。

やっぱり!。

勝ったな。

私の予想は当たった。

内房はまだ手が付けられていない。

1箱50枚入りが20箱展示されていて、下段に50箱入りの段ボールが無造作に置かれていた。

「倉庫に在庫はあるか?」と尋ねると、確認しに行く、と言うので、時間が無いので全部買うから案内しろ、と言って倉庫に入った。

時間にして約5分、この店で50枚入りを100箱買った。

ちゃっかり標準価格だ。

ざまあみろ、野郎ども、もう遅いぜ。

次の店に向かう。

B町を制したら、次はC町で、最後にD町だ。戦いは続く。


スマホに表示されるドラッグストア、ホームセンター、ディスカウントストアを無条件にハイエナのごとくむさぼりあさる。

途中、目についた小汚いあばら雑貨店にまで上がり込んだ。

70超えた婆さんが「まあまあご苦労で」と笑顔で店にある在庫10箱全部売り渡した。

情報弱者……。

これから何が起こるか分かりもしないで……。

ごめんな、おばあちゃん。私たちはこういう生き方しかできないんだよ。

次の店はどこだ。

私はさっさとボロ家を出た。


JR内房線を南下し、駅前のドラッグストアを徹底的に食い散らかし、そしてC町を経由して、さらにD町方面へ南下する。

アプリの地図に店舗が表示されれば、細い県道に入り込み、即、買いあさる。

もう、30件超えたあたりから臭いを嗅ぎつけられるようになり、生活用品を置いていそうな小売店までしゃぶり取った。

我々が通った所は草木も生えない。

ひたすらむさぼる。

入っては買い、入ってはあさる。

これを繰り返して内房線Z駅の手前にたどり着いたときは、もう真っ暗。

目をふさがれたと錯覚する。

まともな街灯がない。

ひでえ田舎だなあ……。

ホントに首都圏かよ。

自販機が羅列された路肩に止めて車中泊。

コンビニ弁当をかっ食らう。

22時。

ここまでで、約70店舗回って2,000箱ぐらい。

まだまだだな。

まだやれる。

明日はC町を中心にして、駅前と国道・県道沿いを南下、そしてD町。

戦いは一瞬で決まる。

明日決める。

寒いので酒を一気飲みして寝る。

よっしゃッ!。

日本感染しろ。

パンデミック起きろ。

税金むさぼり取る日本死ね。

私は歯も磨かず眠りにつく。


朝、6時起床。

顔も洗わず、化粧もせず、昨日買っておいたおにぎりを胃に押し込んでZ駅に向かう。

近づくにつれ、アプリに店舗が表示される。

すげえ世の中だよ。

紙の地図など見ずに、労せずして店舗に行きつく。

スマホさまさまだ。

走りながらSNSのチェック。

「東京のドラッグストアでマスクが売れている」とのニュース。

始まった!。

今日が勝負だ。

午前8時50分、駅前周辺の小売店に開店と同時に突入した。

未着手状態。

まだ誰も手を付けていない。

ドンピシャ!。

やはり内房だ!。

快進撃が始まった。

アプリに表示されれば躊躇なく突撃し、店員の鼻血が出なくなるまで買い占める。

そしてひたすら店舗を目指して南下。

徹底的に買い占める。

D町の店という店を買い尽くしたときには、もう18時を回っていた。

いい加減、我々の体力も切れていたが、アプリをみると、東へ進み、E町へ行けば、まだ取れる可能性が……。

とにかく、この超々短期決戦は今日で終わりだ。

店が開いている限り、買えるだけ買おう。

強壮剤を飲んで最後の地、E町へ向かった。


終わったのが23時、最後は定価のコンビニでも買いあさった。

取れるものはすべて取った。

もう無いぜ……。

SNSをチェックする。

「東京のドラッグストアでは、会社帰りのサラリーマンやOLがマスクを求めて行列を作っている」との全国一面ニュース。

もう遅いって。地獄へ行く前に何か言い残すことはあるか、子猫ちゃん!。

ヘヘヘと私の口角が上がる。

ヨシッ、これであとは高額転売だ。

ここからが本当の時間との勝負。

強烈な眠気と闘いながら、房総半島の最果さいはてから飛ばして真っ直ぐ都内の事務所へ向かった。


着いたのが朝の7時。

みんな汚ったねえ格好。

見ちゃいられねえ。

私もだけどな。

さて、戦利品をチェックする。

3,600箱。約180万円使った。

せどり人生で一番仕入れた。

そして、この先、これ以上仕入れることはないだろう。

ピンチはチャンス。

天変地異を利用するとはこういうことだ。

私は、これをジャングルで売るのはやめた。

ジャングルは価格を固定させなければならない。

それでは人の弱みに付け込めない。

これはオークションサイトに出品することにした。

そうすれば、り落としたい奴が勝手に値上がり合戦を繰り広げて〝どインフレ〟するまでこっちは高みの見物である。

1月末に、

Yオークション

Rオークション

Mオークションで、

1セット40箱・12万円からスタートさせた。

はじめ、様子見が続いたが、2月3日、問題のクルーズ船が横浜港に寄港して、国民が一斉にウイルスを身近なものとして実感したとき、ここからマスクが急騰した。

みるみるうちに跳ね上がり、最高額で18万の値が付いた。

そして2月4日から3月6日の間、たった1ヶ月で1,200万円の売上を叩き出し、約1,000万の利益を確保した。

そして、ほどなくして、政府がマスク転売禁止の法律を施行した。


いまごろ遅いって、バーカ!。


災害ほど儲かる商売はない。

第二次世界大戦でも、庶民は飢えたが、政商はボロ儲けした。

利益を取るとはこういうことだ。

合法なら何をやってもいい。

法律スレスレが一番儲かる。

重要なことは、いかに道徳や倫理に泥を塗るかだ。

1,000万。ちょっとした地方公務員のお偉方えらがたの年収だな。

それがたった一ヶ月で。

今回はなかなかいい利益だった。

そしてSNS社会、すげえぜ……。


しかし、私の喜びは別のところにあった。

今回の件、国が苦しんだのが嬉しい。

何よりも嬉しい。

どれだけ下層階級から税金をむしり取ればいいんだよ。

どれだけ下層階級の給料を下げればいいんだよ。

生まれた時からカスカスだよ、こっちは。

鼻血も出ねえよ。

ざまあみろ。

最高だよ。

嬉しくてたまらない。

人間が、世間が苦しむのが何よりも嬉しい。

極端に言うと、私を、便所タワシのようにコキ使った工場と派遣会社の奴らがもがき苦しむのがたまらない。

心の底から苦しんでほしいと思う。

戦時中、空襲で火事場泥棒が「みんなぶっ壊しちまえ!」と狂喜する映画があったが、この気持ち、ホントによく分かる。

国なんて転覆すればいい。

人間なんて滅びてしまえばいい。

3月24日、東京オリンピックの延期が発表された。

ここから、なんの意図かは知らないが、せきを切ったように感染者が増え、やっと重い腰を上げるように4月7日に緊急事態宣言が発出された。

だからホント遅せえってバカ、学習しろマヌケ。

私は、今回のマスク転売で社長賞をもらった。

人の不幸で表彰される。

私を安月給で奴隷労働させた人間どもよ、みんなくたばっちまえ。

私は本当に人間が嫌いだ。

人類が死滅してくれたら私も死んでもいい。

それくらい嫌いだ。

そんな奴、多いと思う。

でも、みんな、ただ思ってたって駄目だからね。

行動に移さないと、国家は転覆しないよ。

よろしくね。


日本列島はどんどん感染していく。

病院は崩壊し、医療従事者はバタバタと倒れていく。

苦しんだか?。

でも、こっちはまだまだ終わらねえぞ。

戦いはこれからだ。

しつこいようだが、災害はせどらーの稼ぎ時なのだ。

世の中は「巣ごもり」というキーワードで溢れかえっている。

みんな外出自粛で家に引きこもっている。

みんな使い古しのゲームをするか、ユーチューブを見ているかでやり過ごしている。

フラストレーション溜まる。

ギスギスした家庭内人間関係。

そんな状況に対応して、大手ゲームメーカーが、新しいゲーム機とゲームソフトを発売すると発表した。

その噂はせどらー界にはとっくに届いていて、具体的に、どういうゲームかも完全に把握していた。

まもなく予約が開始される。

間違いなく売れる。

間違いなくプレが付く。

社長はこの予約転売を、社を上げて大々的にやると宣言した。

予約受付が開始される4月4日午前10時に、コミュニティメンバー30人全員に携帯を握らせ、時刻が10時になったと同時に都内の電器店に一斉に電話を掛けまくり、同時に、予約サイトにアクセスしまくった。

他のせどらーも同じことをしている。

当然つながらない。混線ひしめく。

それでも、何回も掛けなおす。

アクセスしまくる。

携帯画面のガラスが割れるのではないかとばかりに掛けなおす。

そして、ようやく繋がり、予約を入れる。

1人1台こっきり。

だから、1人が繋がったら、友達と称して他のせどらーも予約できるだけ予約する。

限界まで予約する。

身分証明証を持ってきてくれと言われても当然応じる。

1日にハシゴできるスケジュールはすでに組んである。

大学の鉄道研究会ばりにダイヤを組んで乗り降りが繋がるように事前に編成してある。

一般市民のみなさん、ごめんなさいね。

これが転売ヤーだよ。

道徳なんてクソくらえだ。


我々は110個を予約した。

10日後、緊急事態宣言の真っ只中に都内電器店に、コミュニティのせどらーを総動員して突撃。

秋葉原

新宿

有楽町

池袋

渋谷

品川

中野……、

厳戒態勢の誰もいない都内を、人の迷惑かえりみず走り回る。

仕方ないよな、これは、我々にとって不要不急じゃないんだから。

これが我々せどらーの労働行為なんだよ。

秋葉原の巨大電器店の店内に入ると、100%野郎ども転売ヤー。

転売ヤーの隊列!。

レジ前で腹をすかしてよだれを垂らし、ぎゅうぎゅうにひしめいて無言無表情で配給品の食料を待つ。

ウイルスなんかへっちゃら。

他人に感染うつそうがへっちゃら。

政府の要請にそむこうがへっちゃら。

こちとら、はなから本気のアナーキーなんだよ。

密接・密閉・密集、

利益獲得のためならちっとも怖くない。

利益取れなくなった時点でどうぜ野垂れ死ぬんだから。

覚悟の度合いが違うって。

何言っても聞かねえよ。

もう、私が来た時には、店の外まで転売ヤーの長蛇の列が出来上がっていた。

そこに、よせばいいのに駆けつけるマスコミ。

暇だなあ……。

ぜんぜん気にしない。

私、とっくに、顔出しOK。

「迷惑行為だと思いませんか?」

などという無責任テレビレポーターの言葉なんか聞こえやしない。

目の前の利益しか見えないよ。

この様子がSNSで拡散。

すぐに警察が駆けつける。

毎度毎度遅いって。

関係ないって。

言うこと聞かねえって。

「自粛要請」って?

要請だろ?。

命令じゃねえんだろ?。

合法だろ?。

だったら、こっちは合法的に国民の苦しむ姿を見るだけだよ。

工場の奴らの、そして派遣の奴らの苦しみもだえる姿を見るだけだよ。

黙ってろよ、公務員。


110個、総て確保できた。

1つ定価3万円。

それを5万円で中国人のせどらーに全部、転売した。

中国ではこのゲームを、富裕層が6万円で、喜んで買うらしい。

結局、このせどりでは約200万の利益が取れた。

なかなかいい転売だった。

このゲームメーカーの株価は、このあと、急騰したらしい。

この出来事は、悪質な反社会的事件として、新聞、テレビ、週刊誌、あらゆるマスメディアで取り上げられた。

そしてせどらーは一斉に言論の袋叩きにあった。

でも、へっちゃら。

何度も言うがへっちゃら。

関係ないね。

なぜなら合法だから。

捕まえられるもんなら捕まえてみろよ、国家公務員さん。


この緊急事態宣言はせどりバブルの頂点であると実感する。

乾麺

缶詰

レトルト食材

生理用品

子育て用品

そしてトイレットペーパー。

とにかく国民の危機をあおるとされる物品を転売しまくった。

社長も10年以上この業界にいるが、こんな好景気は初めてだという。

私が社長と出会ってかれこれ4年、最大の売上を達成した2ヶ月間だったと言える。

人の不幸、痛快。

そして何よりも痛快なのが、マスコミが我々を叩きまくったことが思わぬ波及効果となったことだ。

緊急事態宣言が明けた5月下旬、セミナー受講生が急増した。

「転売は儲かる!」

「副業するなら転売だ!」。

そう世間に認知された。

我々のセミナーは全国に知れ渡った。

まさにせどりの春だ。

国に、ざまあみろと言いたい。

国民に、ざまあみろと言いたい。

世の中に、ざまあみろと言いたい。

モラルに、ざまあみろと言いたい。

そして、工場と派遣会社に……。


国やが、鳴り物入りで約束した事業救済のための給付金。

なんとサーバーダウンやら資料不足やらの難癖をつけて、申請者を門前払いしているらしい。

だから、言っただろう?、「国を信用するな」って。

このウイルス騒動で分かったはずだ。

国は国民を助けない。

どれだけの罹患りかん者が病院で門前払いされたか。

どれだけの自宅待機者が不審死あつかいで野垂れ死にしたか。

第二次世界大戦でもそうだ。

どれだけの市民が戦死したんだ。

どれだけの戦犯がのうのうと復帰したんだ。

どれだけの将校が何の責任も取らずに一般市民になりすましたんだ。

国を信用したら、ひたすら血と税金を搾り取られるだけだ。

だから人類は滅亡すべきなんだ。

(つづく)

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