第10話 移ろいアンダンテ

「なんで、その流れでまだ付き合ってないんですか?!」

「そんな事言われてもー!」


(その後夏休みは、環と市民プールに行ったり、アヤネちゃんとお茶したり、平和に過ぎていった)


(そして迎える新学期……)



「蓮ちゃーん!おはよう!」

「おはよう、アヤネちゃん」

「中庭まで一緒に行こう?」

「う、うん」


(アヤネちゃん、ナチュラルに腕を組むようになってきたなぁ)


(アヤネちゃんの心境はわかんないけど、本人が楽しそうだから何も言えない)


「あっ! あれ、久々宮会長じゃない?」

「ほんとだ! 会長ー! お久しぶり……です?!」

「久しぶり、おはよう皆」

「「お、おはようございます!」」



「今の子たち、生徒会の後輩だよ」

「そうなんだ」


『か、会長があんなに親しげに……』

『いま、会長と一緒にいた人、誰か知ってる?』

『わかんない……』


(なんかすごくこっちを見てる気がするけど……)


「じゃあ、私はここで。蓮ちゃん、また放課後に会えるかな?」

「うん、連絡する」

「待ってる。始業式、頑張ってくるね。これから準備とかもあるんだ」


(あ、生徒会のお仕事か。休み明け早々、忙しそう)







『続きましては、生徒会長からのお話です。久々宮さん、お願いします』

「はい」



(やっぱりこうして、生徒会長をしているアヤネちゃんを見上げてると、遠い人みたい)


(あの子がさっきまで私の腕にくっついてたんだ……)


(…………照れる)


(……でも、いいのかな)


(アヤネちゃんに比べたら、私なんて何も成長出来てない)


(このままじゃ、もし……)



『蓮ちゃん、私、海外留学する! 将来は世界各地で活躍するって決めたんだぁ! 行ってきまーす!』



(もしそうなったらどうしよう?!!!!)


(今のアヤネちゃんの行動力と実力だったらあり得るんじゃない?!!)


(そうなったら私何もできない!!!)



(…………)


(……いやいやいや)


(無いから……)


(そんな急展開)


(急には、無いにしても、さ)


(アヤネちゃんは優秀だから……)



(この先の進路とか、すれ違う可能性はあるかもしれない、って事だよね)









「せんぱーい! 見ましたよ! やるじゃないですかー!」

「何のこと、環?」

「今朝、生徒会長さんと腕組んで歩いてたじゃないですか!」

「見てたの?! で、でも、あれは別に深い意味があるわけじゃ」

「……本当に付き合ってないんですか?」

「付き合ってないんだなこれが」


「……じとーっ……」

「擬音を口で言わないの。ところで、環は……なんでこの高校に入ろうと思ったの?」

「……え。どうしてですか」

「ただ、さっきちょっと進路について考えてたから」

「あ……ああ、そういうことでしたか。先輩たちはそろそろ、そんな時期になりますね」


「そうなの。考えたら、私って今まで何も考えてなかったんだなってことがわかったんだよね」

「……私も、何も考えてませんよ。お力にはなれません。それより、先輩、聞きました?」

「何を?」

「文化祭の話です」


「うちみたいな小さな女子校の文化祭なんて、地味だよ? 環、あんたお祭りとか好きなタイプ? だとしたら残念かもね」

「それが、今年はそうじゃないらしいんですよ!」

「どういうこと?」


「今年は、静早水川しずはやみがわ女子学園と合同で行うらしいんです、学園祭として」

「静早女子って、私立で、そこそこ大きな学校の?」

「そうですそうです。最近になって出来た学校だから、色々と新しい試みをしてるみたいですよ。実は去年まで私もちょっと入りたいなって思ってました」

「なんだ、しっかり進路のこと考えてたじゃない」


「まぁまぁ。先輩のクラスは、まだ配られてませんでしたか? 学園祭実行委員のお知らせです」

「あー……先生また配り忘れたのかな。ん、ちょっと見せて」

「なんでも、祭の規模が大きくなって、生徒会だけじゃ人手が足りないみたいで。全校生徒から、有志で募集することになったそうです」

「あ、そうなの」


「……そういうわけで先輩、どうですか?」



「え?」

「一緒に、実行委員やりませんか?」



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