宗教について①

 宗教者というのは。

 信仰によって精神を豊かにし、人生を豊かにする方法を知っている聡明な人のことだ。


 無宗教者というのは。

 困難や問題に対し、自らの手で活路を切り開いてきたことによる自負を持つ、逞しい人のことだ。


 どちらが正しい、正しくない。良い悪い。合っている間違っている、の話では全く無い。そこに上下関係も何も無い。


萩原美裟

『ネフィリム・エスカトロジー』

第13話 美裟の独白

より


――


しゅう‐きょう【宗教】‥ケウ

(religion)神または何らかの超越的絶対者、あるいは卑俗なものから分離され禁忌された神聖なものに関する信仰・行事。また、それらの連関的体系。帰依者は精神的共同社会(教団)を営む。アニミズム・自然崇拝・トーテミズムなどの原始宗教、特定の民族が信仰する民族宗教、世界的宗教すなわち仏教・キリスト教・イスラム教など、多種多様。多くは教祖・経典・教義・典礼などを何らかの形でもつ。


広辞苑より。


――


まず、初めに。

キリスト教に代表されるように、『これは真実であり宗教ではない』というスタンスの方が居ることを私は知っています。その場合、私のこの論はお聞き流して頂いて大丈夫です。私は『宗教』について語っていますので。客観的な評価をしても、『宗教』なので。あなた方の信じるもののことではありません。決してあなた方を否定するエッセイではありません。


そしてあなた方が信じるのが『宗教』である場合。人間ひとりひとりに、何を信じるのか選択する自由があります。当然ご存知の筈。であれば、私の論も、あなた方のその博愛の精神で暖かく見守って頂ければ幸いです。


そして、科学的に証明されておらず、『信じるかどうか』という精神的な所に委ねられている時点で、『信じなくても良い』という選択肢を生むことと、その権利が守られるべきであることをお忘れなく。また同時に、『信じるかどうか決めかねている』方への理解もお願いしますね。


さて。

広辞苑より、『多種多様』。ここ大事だと思います。多種多様なんです。


色んな信仰対象があるし、色んな祈り方があるし、色んな生死の考え方があるし、色んな救われ方があります。


私は一度自作『ネフィリム・エスカトロジー』でキリスト教を否定気味な展開でガッツリモチーフにした長編を投稿しました。今のところどこからも怒られていないのであの程度ならセーフとみなし、このエッセイもそのレベルでお話します。まあフィクションですからね。世界最大の宗教は世界中でモチーフにされているし、器も大きいのでしょう。


さて。多種多様、と言いましたが。宗教の『役割』については結構同じだったりします。もう結論から言います。


①政治の道具

②精神安定剤


私はこのふたつの役割が大きいと思っています。

歴史的に見ても、国の成り立ちや文化形成、戦争の原因まで、この宗教がかなり深く絡んでいます。そして宗教を土台にした国家は、運営がやりやすいんですよね。ブラック企業が宗教じみているのは運営がやりやすいからです。

『俺達は仲間だ! うおおお!』

これが宗教の起源です。

因みに、政治の道具だからといって、それ自体が悪い訳じゃないですよ。結果的に多くの命を救う場合もありますから。悪くなったのなら宗教ではなく利用した政治家が悪い。


これも前提なのですが、宗教とは『人間が作り出したもの』です。神様が『俺の宗教やって』とは言いません。人間が『この神様に祈ろう』と、尊敬と畏怖から自発的に始めたことなんです。人間が、多くの仲間を集め、外敵から身を守るのに使いやすい、発明品です。『仲間意識』『帰属意識』は人類が今日まで繁栄することができるようになった、ホモサピエンスの文明の利器なんです。


そして精神安定剤。これも重要ですね。救われる、とか。祈りによって心を落ち着かせる。宗教とは自分の心内。精神の話なのです。『私は神様を信じているから』と。


まあここで気を付けなければならないのは『だからあなたも信じなさい』という強要ですけどね。勧誘程度なら良いですけど、『この教えが唯一絶対の正解であり、全人類がこの教えの通りに生きるべき』というのは流石にやり過ぎじゃないでしょうか。本人が救われていればそれでOK。宗教の目的は達成されています。色んな人達に合うように、多種多様なのですから。


続きます。

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