ハイスペすぎて全てをつまらなく感じていた俺が狂人系女子達になつかれて新しい扉を開いた件~狂ってなければ全員アイドル級なのに~

司真 緋水銀

プロローグ~出逢い~

〈プロローグ〉

 

 ここは【公立 汗美所利(あせびっしょり) 高等学校】

 某県境にある至って普通の偏差値の普通の人間が集まる普通の高校………だと思う。


 今日からこの高校に通う、新一年生である俺の名は響木一斗(ヒビキ カズト)

 

 4月の9日月曜日、そろそろ桜が満開を迎える時期。

 先週入学式を終え今日からが長い一学期の始まり。

 人によっては始まる新生活に胸踊らせ、これからの三年間の色々な出会いや希望に夢溢れているのだろう。


 しかし俺にそんな綺麗な感情は一切なかった。


 理由は俺が何でもできてしまうからだ。

 自分で言うのもあれだがそこそこ見た目も良く、中学校から成績は学年トップ、スポーツは球技から格闘技まで、百人一首、かるたの文化系も何でもござる。

 そんなんだから当然のようにモテる、中学時代にはいつも周りに女子だけじゃなく男も群がってきていた。

 もし俺の人生をラノベ風に言うなら『やれやれハーレム無双系の男子だが人生がイージーモード』とかなんかそんなんだろう。


 だが、いや、だからこそ全てがつまらなかった。

 中二病乙と言われるかもしれないがそう感じるんだから仕方がない。

 勉強ができても運動ができても女にモテても何にも興味を持てなかったし何も面白くなかった。


(きっと高校生活も同じようになるんだろうな)


 無味乾燥とした日々を送り、流されるまま毎日を過ごすんだろう、と舞う桜の花びらを冷たい眼で振り払う。


 しかし、別にそれでもよかった。

 高校生活なんかそんなもんだろうと、この年齢で既に達観していた。



ー教室内ー


ワイワイガヤガヤ


「いやー初日からモテっぷりを発揮してたなー」


 騒がしい教室、今日からクラスメイトになる奴等が初日とは思えないほど賑やかさを見せている。


 俺の机に座り視界を遮り馴れ馴れしく話しかけてきているのは楠木亜波(クズキアルファ)

 中学時代から三年間同じクラスだったやつで、派手な茶髪(校則はユルい)で短髪をワックスでツンツンヘアーにした少しつり目だが、ヤンキーといった感じではなく、どちらかというとお調子者の類。


 バトル物だったら主人公を庇って真っ先に死ぬやつだ。


「俺にもおこぼれくれよなー」


 亜波は特に何も言わない俺にも構わず話しかけてくる。しかし、教室で人が多い手前こんな普通の高校生らしい発言をしているがーー


 ーーこいつはゲイだ。

 いつも俺の尻の穴を狙っている。


「なぁ関係ないけど耳に舌を入れていいか? 先っちょだけ……ハァハァ」


 ゲイは我慢できなくなったのか、俺に顔を近づけ興奮している。

 まぁこんなやつだが中学からの友達で別に悪いやつではないので俺は優しい言葉を投げかけた。


「失せろ、クソッタレが」


 そんな言葉を無視するようにクソッタレは会話を続ける。


「なぁ、それよりお前部活決めたか?」


 唐突にクソッタレはそんな事を言った。

 部活か……別にやりたい事もやりたくない事もないからな……入れって言うなら適当に入るし、帰宅部に入ってバイトや勉強に精を出したっていい。ただ、金に困っているわけでもないし勉強なんかしなくても大抵できる。


(……どっちでもいいか……)


 悩んでいるとモブが言う。


「なんか姉ちゃんによるとすげー変な部活があるらしいぞ、いや、まだ同好会って言ってたっけな」


 そう言えば亜波の姉もこの高校だったか……俺はクソッタレゲイに聞いてみた。


「変って……何の部活なんだ?」

「さぁ? でも変人の集まりらしいぞ」


 じゃあこいつが入ればいいのに。

 とりあえずこれ以上情報は持ってなさそうだし、上級生か先生にでも聞いてみよう。

 別に興味があるわけではないけど、つまらない普通の部活に入るんだったら多少変人に囲まれた方が少しは刺激があるだろう。


(聞いて回ってみるか)


 俺は強引に耳たぶを舐めようとしたクソッタレをパワーゲイザーで吹き飛ばし聞き込みを開始する事にした。


           *


-放課後-


ー 二年の廊下 ー


モブ女子先輩「あー……あるねー確かうちの学年にもその部員っていたような…あんま関わりたくないから誰かは知らないけど……ねぇねぇそれよか新イケメン一年君この後暇? カラオケ行かない?」


ー 三年廊下 ー


モブ男子先輩「悪い事は言わないからやめておいた方がいいよ、関わりたくないから名前も出せないけど……そんな事よりこれから一緒に銭湯にでも行かないか?」


― 職員室 ー


体育教師「からあげ君増量中でーす!」


「失礼しました」


 職員室の扉を閉めた、何なんだこの学校。

 あまり情報は集まらなかったな……まぁ部室の場所はわかったし直接行ってみるとしよう。



ー 校庭外れの森の中 ー


 俺は何故か今、森の中にいる。

 いくら地方の高校とはいえ学校の敷地内に森があっていいものだろうか。

 情報によるとこの隔離された場所に部室がある……正確には部活にするには部員が足りてないらしいから同好会らしい。それはあのモブの情報と一致している。

 他の人間の反応をみるに、変人の集まりというのも当たっているのだろう。


 なるほど、大体わかってきたぞ。

 アニメやラノベでよく見る変人達が集まる部活……よくある設定のやつだ。

 恐らくただの人間に興味がなかったり、友達を作るための部活だったり、何でも気になりますっ!な女子がいるんだろう。


 ただの想像でしかないがそんなものか、と少し落胆する。誤解されないよう言っておくがこれらの作品は大好きだ。

 しかし、例えゼロから異世界生活を始める事になってもやっていける自信が俺にはある。

 ラノベでよく見る程度の変人なら何て事はない、クソッタレゲイやさっきの体育教師達の方がよっぽど変人だった。


(大した刺激にもならないな……まぁ、行くだけ行ってみよう)


 期待も希望もなく木漏れ日しか光のないトト○がいそうな森の砂利道を何の感情もなく歩いていく。


 そして俺は後悔する事になる。

 興味本位で足を踏み入れてはいけない場所がこの世にはあると知らなかった事に。

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