頑張れ私 ラストミッション


 目を覚ました私の視線は白い天井に向けられていた。心地良い静けさ。消毒液の独特な臭いが鼻につく。

 一瞬、病院の個室を想像してしまった私は視線を動かすと共に、自分が学校の保健室にいるのだということに気が付いた。私の顔を覗き込む三波由香里と奥田まりこの後ろで長谷川勇大が唇を結んでいる。保健室の長沢優子の長い髪が窓から差し込む陽に明るい。

「あ、美雪ちゃん!」

「長沢先生! 天野さんが目を覚ましました!」

「あら、そう?」

 飛び跳ねるような奥田まりこの高い声に長沢優子はゆったりとした態度で振り返った。ふんわりと毛先をカールさせた艶のある髪。夜の彼岸花のような紅い唇を妖しく光らせた優子の周囲にはしっとりとした空気が漂っていた。少し吊り上がった目を細めて、血に濡れたような唇を横に開いた彼女の姿は無垢な男を誘惑する女狐そのものであり、そんな彼女の意識は今の今まで生と死の狭間を彷徨っていた私ではなく、私を見守る長谷川勇大に向けられているようだった。

「天野さん、気分はどう?」

「……ぅ」

「そう、大丈夫そうね」

 ふわりと浮かび上がるような仕草で立ち上がった優子の長い腕が勇大の広い肩に掛かる。風に舞う羽衣が大木に引っかかるような動作である。そのあまりにも自然な動作に肩に手を掛けられた本人でさえも彼女の存在が視界に入らなかったようで、暫し呆然とその様子を眺めていた私の心に怒りの炎が燃え上がった。長谷川くんに触るな、このバカアホ女狐。

「だから先生! 天野さん、頭をぶつけたかもしれないんですって!」

 本気で私の身を心配してくれてるのだろう。いつもは柔和な奥田まりこの表情が強張っている。だが、そんな彼女に対して優子はといえば何処吹く風といった態度だ。

「特に怪我もしてないようだし、大丈夫よ。きっとまた反射性失神か何かだわ」

「そんなの精密検査してみないと分かんないじゃないですか!」

「大丈夫大丈夫。ね、天野さん、もう大丈夫でしょ? それともまた救急車呼びたいの?」

「……ぃ」

 キッと歯を剥き出しにした私の鋭い視線が優子の額に突き刺さった。だが、そんな私の憤怒の形相など彼女は意にも介さない。

 くそ、女狐め。性欲の権化め。確かに一年生の頃の私はよく失神してここに運ばれていたが、二年生になってから意識を失ったのは今日が初めてだ。明らかにこれまでの失神とは一線を画す。一刻も早く救急車を呼んで、すぐにでもMRI検査を受け、そして緊急手術を施さねばならない程に急を要する深刻な事態だというのに、それにもかかわらずこのアホ女狐は自分の欲望を優先させて私の身を犠牲にしおったのだ。くそ、こんな所で終わるなんて……。まだ長谷川くんに想いを伝えていないのに……。

 いや、このまま終わらせてなるものか。絶対に許さんぞ。化けて出てやる。覚えておけよ、女狐。もう貴様に安穏な夜など訪れない。毎晩貴様の枕元に立ってやるからな。

「先生、僕も救急車を呼ぶべきだと思います」

 優子を振り返った長谷川勇大の瞳は真剣そのものだった。そんな勇大の広い肩を優子の長い指がくすぐる。

「あら勇大くん、あなた少し体調が悪そうね」

「先生、僕ではなく天野さんの容体を」

「彼女は大丈夫よ。それより勇大くん、あなたの方が深刻そうだわ。夜はしっかりと眠れてるの?」

「いや、僕は大丈夫ですって」

「ほんとかなぁ? ちなみに毎日どのくらい寝てるの?」

「それは、だいたい五時間くらいですが……」

「それは少な過ぎよ。それではいつか体を壊してしまうわ」

「いえ、大丈夫……」

「ダメよ。そんなの先生が許しません。でもあなたって忙しいのよね……。あ、そうだ。先生、良いことを思い付いちゃった。勇大くん、授業中はここに寝にいらっしゃいよ?」

「……はい?」

「受ける必要のない教科の時間は保健室で睡眠をとるの。そうすればあなた、今よりもずっとパフォーマンスが向上するわよ?」

「い、いえ、授業をサボるなど、そんなことは絶対に……」

 ゆっくりと優子の長い腕が勇大の体に巻き付いていく。その様は獲物を捕らえる大蛇のようであり、どうやら優子は狐と蛇のハイブリッドさせた妖怪だったようだ。いやはや恐ろしい女である。メダコ(女蛇狐)と命名しよう。そんなメダコの様子にさすがの勇大も異変を感じたのか、その紅い牙から逃れようと彼は必死に身を逸らした。だが、メダコの長い腕がそれを許さない。た、大変だ。このままでは長谷川くんが食べられてしまう。誰か、誰か長谷川くんを助けて……。

「はい、ストップ。先生、回診の時間ですよ」

 メダコに食べられる寸前だった勇大を助けたのは彼の幼馴染である三波由香里だった。立ち上がった由香里のスラリと長い肢体が眩い陽光を受ける。まるで天女のような神々しさである。地の底を這う哀れな私などはその姿に思わず両手を合わせてしまい、常世の闇を彷徨う妖怪メダコもまた本物の天女を前に抵抗する意志を失ってしまったようだ。「もー」と頬を膨らませた優子を扉の前まで引っ張っていった由香里は、親友の奥田まりこに向かって手招きをすると、何やら意味ありげな視線を勇大に送りつつ廊下へと出ていってしまった。

「じゃあ私も、もう行くね。天野さん、何かあったらすぐに言うんだよ。では、また」

 扉の前に立った奥田まりこが敬礼のポーズをとる。そうして微笑んだ彼女が扉を閉めると、途端に、冷え切った静寂が保健室の空気を凍らせていった。外から隔離された白い部屋。気が付けば保健室は二人だけの世界となっていた。

 プーンと蚊が一匹私の前を通り過ぎる。容赦なくそれを叩き潰した私は、この保健室という名の小さな世界で生命活動を維持する存在が私と長谷川くんの二人のみになってしまったと確信した。まぁ、窓辺で観葉植物が青葉を広げてはいるが、それはもうどうでもいいだろう。要は私と長谷川くんが狭い部屋で二人きりとなったという事実が重要なのだ。

 白いベットに座ったまま、チラリと顔を上げた私の視線が長谷川くんの視線と重なってしまう。驚いて固まってしまった私たちは、ジッとお互いの目を見つめ合うと、そのまま何を話すわけでもなくゆっくりと視線を逸らしていった。果てしない静寂。世界がシンと静まり返る。心臓の音すらも白い壁に飲まれてしまっているようだった。

 き、気まずい……。なんなのだ。この重たい空気はいったいなんなのだ。こ、ここは界王星か。く、空気に押し潰されてしまう。怖い。なんで、どうして二人っきりに……。怖いよ。誰か、誰か助けて……。

 コトン、という音が保健室の空気を微かに揺らした。そんな小さな物音に巨大な風船が割れたような衝撃を受けた私の体が飛び上がる。恐る恐る、針に糸を通すような速度で視線を上げていった私の目に長谷川くんの長い足が映った。どうやら長谷川くんはベットの側の丸椅子に腰掛けたようだ。

 いや、なぜだ。どうしてなのだ。どうして椅子に座ってしまう。君はこの重苦しい空気が嫌じゃないのか。気まず過ぎる空気に吐き出してしまいそうじゃないのか。私などはもうこの沈黙に耐え切れずに意識が失ってしまいそうなのだ。頼む、長谷川くん。頼むから何も言わずに教室に戻ってくれ。

 私の必死の願いとは裏腹に長谷川勇大は動かなかった。そうして幾億年の時が過ぎ去ったであろうか。やっと顔を上げた私の視線と長谷川くんの視線がまた重なる。だがやはりそれ以上はお互いに動こうとはせず、重苦しい静寂から逃れることは出来なかった。

 ああ、神よ……。いったい私はどうすれば……。

 もはや視線すらも動かせなくなってしまった私の意識が薄れかかったその時、やっと長谷川くんが動きを見せた。うほん、と軽く咳払いをした長谷川くんが腕を組んだのだ。剣道で鍛え上げられた太い二の腕の筋肉が盛り上がる。制服の上からでも分かるほどに厚い胸板である。いったいなぜ急に腕を組んだのか。そこにはいったいどんな意図が隠されているのか。あまりにも突然の出来事にさすがの私も真意をはかりかねた。

 すると長谷川くんがまた、うほん、と軽く咳払いをした。何やら口を開けるような動作をした後の、うほん、である。観葉植物の葉も揺らさぬほどの小さな咳払いではあったが、私のバクテリアよりも小さな胸を震わすには十分な威力だった。ビクリと肩を跳ねさせた私の心臓が激しく鼓動を始める。

 いったい何なのだ。長谷川くんは何がしたいのだ。君も私と同じなんだろ。気まずいが故に沈黙しているんだろ。ならばなぜ椅子に座ったまま腕を組む。なぜ私から視線を逸らさない。何なのだその盛り上がった筋肉は。いったい、いったいこの男は何がしたいのだ。いったい先ほどから何のアピールを……。

 はっと私の目が見開かれる。やっと彼の真意が掴めたのだ。その盛り上がった筋肉から、決して外さぬ視線から、沈黙は金とでも言いたげな表情から、彼の考えていることが私には分かってしまった。あろうことか長谷川勇大は、この私に闘いを挑んでいたのだ。常人ならば心音でさえも止めてしまうだろう重苦しい沈黙において、いったいどちらが最後まで意識を保っていられるかという勝負を私に仕掛けてきていたのだ。

 最低だよ、長谷川くん。見損なったよ。君がそんな奴だったなんて。でも、そっちがその気なら私だってやってやる。徹底抗戦だ。私は負けない。絶対にこの沈黙を耐え切ってみせる。やがて君は終わらぬ静寂の中で激しい後悔の念を抱くことになるだろう。こんな勝負仕掛けなければよかったと、途切れ途切れになった意識の中で君は涙を流すのだ。思い知れ、長谷川勇大。私を怒らせた報い、必ず受けさせてやる。

 いや、待てよ。もしも私が声を出してしまった場合、勝負の行方はいったいどうなるのだろう。私のマシンガントークが炸裂すればこの程度の静寂などタンポポの綿毛が如きである。その場合、勝負自体が飛んでいってしまうのだろうか。ふふ、それはそれで面白い。長谷川くんよ「愚かなり」だ。この私に勝負を挑んだことが間違いだったな。そもそも私と君ではステージが違うのだ。

 極度の緊張と激しい怒りによって正常な判断能力を失ってしまった私の口元に暗黒の微笑みが浮かぶ。今の私にとって長谷川勇大は良きライバルであり対等な存在だった。長谷川くんよ、思い知れ。これが私の最強の一手だ。

「あ……」

「あの……」

 同時に声を出してしまった私の唇がカチンと凍り付く。長谷川くんの表情も凍り付いており、そんな彼と視線を重ね合わせたまま、私はゴクリと唾を飲み込んだ。

 ま、まさか、最強の一手が読まれていたのか……。いやまさか、そんな事が……。お、恐ろしい。最強の一手に対して最凶の一手を返してきおった。それは自らが勝負をぶち壊しかねないほどの凶悪な一手だぞ。もしも私が声を出さなければ貴様の声が沈黙を吹き飛ばしてしまっていたのだ。な、なんという傑物。これが天才と呼ばれる男の実力か。

 視線を下ろした私の体が恐怖にガタガタと震え始める。もう無理だ。もう勝てない。このままこうべを垂れるべきなのだろうか。早く「ごめんなさい」と負けを認めるべきなのだろうか。いったいどうすれば……。

「くっく、あっはっはっは!」

 俯く私の頭上を豪快な笑い声が通り過ぎていった。窓辺に並ぶ観葉植物の青葉がその笑い声に体を揺らす。先ほどの咳払いとは比べ物にならないほどに大きな声である。だが、なぜだか私は驚かなかった。ただ、なんで笑っているのかなと不思議に思った私の視線が上がった。

「あっはっは、いやいや、いったい僕は何をしてるんだ」

「……ぃ」

「天野さん、ごめん。いや、ごめんなさい。昨日は僕が悪かった。本当にすまなかった」

「……ぇ?」

 丸椅子に座ったまま長谷川勇大はグッと頭を下げた。そんな彼の姿に私は困惑してしまう。なぜ謝っているのかと、誰に向かって謝っているのかと、混乱した私は取り敢えず頭を下げ返した。昨日は悪かったと長谷川くんは言ったけれど、私って昨日何してたっけ……。

「あ……」

 私の口があんぐりと縦に開いていく。腰を曲げた彼の広い肩を見つめていた私はやっと本来の目的を思い出したのだ。

 そうだ。そうだった。どうして忘れてしまっていたのだ。その為に今日を迎えたのに。その為に学校を訪れたのに。長谷川くんに想いを伝えようと私は生まれ変わったのに。「ごめんなさい」と「ありがとう」を言葉にしようと私は向かい合ったのに。それなのになぜ私ではなく長谷川くんが頭を下げているのだ。どうして長谷川くんが「ごめんなさい」という言葉を口に出しているのだ。これではあべこべではないか。私が、私が謝る筈だったのに。生まれ変わった私が想いを伝える筈だったのに。

「天野さん?」

 顔を上げた勇大の目が大きく見開かれる。何かに驚いているような表情だった。なんだろうという私の疑問はすぐに氷解する。私の頬がまた涙に濡れていたのだ。私の喉がまた嗚咽に震えていたのだ。まただ。いったい私は何度同じ失敗を繰り返すつもりなのだろうか。

「ひっ……ひっ……ぐ……」

「あ、天野さん、すまない。僕が悪かったんだ。でも怖がらせるつもりなんて本当にこれっぽっちもなくて、だからどうか泣かないでくれ。天野さん、すまなかった」

「ひっ……ひぐ……ち、ちが……ひっ……」

 ダメだ、声が出てこない。嗚咽が止まってくれない。自分の意思ではどうしようもないのだ。このまま私は前の私に戻ってしまうのだろうか。いや、そもそも私は生まれ変わってなどいなかったのかもしれない。

「ひっぐ……ううっ、はっ……はっ……」

「あ、天野さん! 大丈夫か!」

 過呼吸を起こしそうになった私の背中に長谷川くんが手を伸ばす。悲しみと苦しみでうまく呼吸が出来なくなっていた私はそんな長谷川くんの優しさに必死に縋り付いた。

「大丈夫、大丈夫だ、天野さん!」

 私の背中を撫でる長谷川くんの手のひらが熱い。その凄まじいエナジーが私の乱れた心に覆い被さってくる。

 そ、そうだ、吸うよりも吐くことを意識するんだった……。

 長谷川くんの熱に誰かの熱を思い出した私は必死に息を吐いた。苦しい。苦しい。それでも長谷川くんの熱が私の胸に勇気の光を灯してくれている。

「はっ……はっ……」

「天野さん、大丈夫かい?」

「う……うん、もう、だ、大丈夫……」

「そ、そうか。よかった」

「あ、ありがと……」

 私の言葉に長谷川くんは驚いたような表情をした。私がまた「ありがと」と呟くと、ギリシャ彫刻のように整った長谷川くんの顔に夏の青空のような眩しい微笑みが浮かんだ。

「はは、別にこのくらい何でもないさ。それに僕の方こそ君にありがとうと言いたい」

「ど、どうして……?」

「僕って奴は何故だか昔から女性を泣かせてばかりでね。そんな僕にとって君の心からのありがとうは、本当に、本当に嬉しい言葉なんだ」

「そ、そうなんだ……」

 照れ笑いを浮かべる長谷川くんに私はまた微笑みを浮かべた。そして、やっと決心した私は大きく息を吐く。

「は、長谷川くん……!」

「なんだい?」

「ご、ごめんね! それと、ありがとう!」

「え?」

「き、昨日の廊下で長谷川くんから逃げちゃって、本当にごめんなさい! あ、あれは怖かったとかじゃなくって、その、説明が難しいんだけど、その、とにかくごめんなさい! 私、ずっと謝りたかったの!」

 また過呼吸を起こしそうになった私はぐっと息を吐いた。今までのは余震だったのかと思えるほどに私の胸の内の振動が激しい。キーンという耳鳴りと共に私の視界がチカチカと点滅を繰り返した。

 それでも私の声は止まらなかった。私の言葉は途切れなかった。生まれ変わったなどという実感は湧かない。いつも通りの私の、普段通りの声が、長谷川くんに向かって走っていくような、そんな感覚だった。

 つまり、無口で暗い私こそが生まれ変わってしまっていた私であり、饒舌で明るい私こそが普段通りの私であったという事なのだろうか。

 ええい、今はそんな事どうでもいい。とにかく私の想いを全て長谷川くんにぶつけてやるのだ。

「長谷川くん、ありがとう! 廊下で蹲ってた私に、大丈夫かって聞いてくれてありがとう! 私ね、あの時は自分が幽霊じゃないのかって疑っててね、だから長谷川くんが私に気付いてくれて本当に嬉しかったの! ほ、本当だからね? 本当にありがとね!」

「い、いや、こちらこそ……!」

 チャイムが鳴った。終わりを告げる音ではない。始まりを告げる音だ。これから沢山の出来事が今日の君たちの元を訪れるよ、と朝のチャイムが私たちに告げている。本当に朝から色々な事があった。だが、それでもまだ長い一日の始まりに過ぎなかったのだ。

「授業始まっちゃうよ! 長谷川くん、急いで!」

「いや、しかし……」

「私は大丈夫だから、ちょっと休んだらすぐに教室に戻るから、だから長谷川くん、ほら、急がないと授業に遅れちゃうよ!」

「あ、ああ、分かった!」

 長谷川勇大が立ち上がる。ギリシャ彫刻のように顔の整った背の高い男だ。文武両道。才色兼備。運動においても勉強においても彼の右に出る者はいない。長谷川勇大は天才である。だが、人付き合いは苦手なようで、よく異性を泣かせてしまうらしい。それが天才である彼の唯一の欠点だ。

「あ、長谷川くん!」

「なんだい?」

 よく通ると評判の私の声に長谷川くんが振り返る。柔らかな表情だ。一限目の授業には遅れてしまっているが、どうやら長谷川くんは焦っていないらしい。やはり天才か。

 だが、そんな何処か余裕そうにも見える長谷川くんは本当に多忙な毎日を過ごしていた。当然の如く期末テストで一位を取ると期待されている彼は、そんなプレッシャーの中でも決して剣道の稽古を怠らない。何故ならばインターハイが目前に迫っているからだ。

 天才は本当に忙しい。これでは苦手な人付き合いを克服する時間などないだろう。でも、大丈夫。これからは私が手伝ってあげられるから。いや、そもそも私がいなくとも、彼なら一人でなんとかしてみせる筈だ。だって長谷川くんは天才なのだから。

「長谷川くん! 頑張って!」

「ああ!」

 私の言葉に長谷川くんが満面の笑みを見せる。そんな彼に私は大きく手を振った。

 頑張れ長谷川くん。君ならなんだって出来るよ。だって君は私が認める天才なのだから。

 そして、私も頑張るんだ。長谷川くんに少しでも近づけるように、頑張れ私。

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