第1楽章 Andante 歩くように④

次のステップ。

ずばり、「自己紹介文」!


なにせログインすると、「こうしたらマッチング率UP!」なんて表示が出てくるんだよ!!


見てみたら、驚き。高校生の要約の宿題かよ、ってくらい緻密に作られた素晴らしい文章に唖然。

私、書けないよ・・・。まぁ、仕方ない。修正は沢山しなおすとしてとりあえず上げよう・・・。


 「こんにちは。普段出会いがないので、初めてマッチングアプリを入れてみました。よろしくお願いします。」


こんな短い文章・・・。だけど、今はもうこんなもんしか考えられないや。

えぇい!


自己プロフィールを完成〜・・・(笑)。


ついにやったったぞ。

同じように他のアプリにも設定してみよう・・・。


自分の自己プロフィールが完成すると、なんだか達成感があった。


アプリには、沢山の男性の顔写真、その下に地名、年齢が表示されていて、スクロールをいくらしても、顔が出てくる出てくる。


これは項目を絞ろう・・・。


年齢は、別に・・・まぁ会えないと意味ないから都内で・・・、

年収はそうね、まぁ高いに越したことはないし600万以上にでもしてみるか・・・、タバコ・お酒なしっと・・・。


それでも出てくる男性の表示に、私は少し後ろめたくなった。

こんな条件つきみたいに検索していいのだろうか・・・。

運命の人の探し方なんてわからないよ・・・!


少し泣きそうになりながら、それでも興味津々に変わりなく、

少しだけ上部に表示された男性たちを1人ずつタップしていく・・・。


わー・・・この人、チャッらそー(苦笑)。

あ、真面目な文章だ。

この顔は、ちょっと・・・。

うへっイケメンすぎる。付き合えたら、どんなに幸せだろうかのー。

おお、かっこいい!車もいけてる!

あー、おいしそうな料理に夜景だことぉー。一緒に行きたいわ。



そうして、私の気持ちは少しずつ動いていった。

少しずつでいいから、努力もしつつ、まずはマッチングしなきゃ!




***

___開始3日目。


起きて即アプリを起動した。

すると、意外にも「いいね!」をくれた人が10人以上いる・・・。おっと、まじか。

いやー思えば、生きてきて男性と恋に落ちたいなんて思ったこともなかったが、・・・時はきた。今なんだ!今こそ探すべき時なんだ!


 なーんちゃって。何浮かれてるの、自分。ふっと笑みを浮かべながら布団から出る。あぁ、なんて軽やかな寝起きだこと。いつもならアラームを3回以上ならさないと起きないってのに・・・。浮かれやがって、くそぉ・・・。でも気になっちゃうんだよなぁ。


出勤準備が終わって、駅へ向かう。

電車の中では、もちろんマッチングアプリを開き「いいね!」への返答を開始する。

左にスワイプすると「見送り」。右にスワイプすれば「了承」となるようだ。ということで、いざ。


うー、顔がタイプじゃない・・・見送り。

イケメンだけど、ちゃらそう、見送り。

ふ、見送り。

少し地味だけど、それがいいかも。自己紹介はっと・・・、多趣味〜。面白そう。なんなら、友達としてでもすごく良さそう。了承っと。

わー!この人も面白そう。了承。


見送り、、了承、、見送り、、了承、見送りっと。


つい夢中になりながら指を動かした。しかし、心の居心地は非常に悪かった。

こんな地味でメイクも苦手で、なんの女子力もないこの私が、なーに選別してるんだ。まるで面接官のように・・・。別にこんな選別をしたかったわけじゃない・・・。


私は悪魔のようなこんなことをしたいわけじゃない・・・。はぁ・・・。


ねぇ、マッチングアプリって、結構残酷だよな。

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