優しい親友(発熱・拘束)

 熱が出たから家で寝ていると、親友がやって来た。昔から世話好きな彼女は、具合が悪いと伝えたわけでもないのに駆けつけてくれたのだ。

「何か嫌なことでもあった? 昔からショーコちゃんは、ストレスが溜まると熱出してたよね」

 きつく絞った冷たいタオルを私の額に乗せてくれながら、彼女は言った。そうだ、昔から、彼女は何かあるごとに私を心配して、世話してくれたのだった。その優しさに、そういえば最近は甘えていなかったな。

「……熱が下がるまで、ここにいてくれる?」

 私の気弱な質問に、彼女はにっこりと笑ってくれた。

「もちろんだよ」


 目が覚めたとき、既に彼女の姿はなかった。変に気真面目なところのある彼女のことだ、私が寝ている間に体温を測り、下がっていたから帰ったのかもしれない。実際、体は軽く、気分も良好だった。彼女の看護のおかげだろう。

 元気になったので、せっかくだから直接、お礼を言いに行こう。

 具合が悪かったときには雑談もできなかったのだし、それは良案のように思えた。彼女の家は実家のすぐ近くで、そこまで遠いわけでもない。もしすれ違いで会えなくても、そのときはそのときだ。実家に顔を出して帰るのでも、別にいい。

 そう思って出かけて、彼女の家のインターホンを押した。玄関先に出てきたのは彼女のお母様だった。私の用件を聞いて、お母様は青ざめた。

「何を言ってるの、ショーコちゃん。娘は事故で、数年前に死んでしまったのよ」

 そうだった。私は葬儀にも参列したのではないか。

 急速に視界が暗くなっていく。気が遠のいていく。

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