英語が苦手だからしかたなくMTBやります!でも、意外とハマるかもしれない‼

水野 文

1 紅の表彰台

第1話 スチャラカ娘とちゃっかり転任先生(1)

 四月も半ば、でも朝はやはり少し寒い。そんな時期からこの物語りは始まる。物語には主人公がつきものです。当然、この物語にも主人公はいます。そう、やはり主人公にはそれなりのセットで登場してもらうことにしましょう。ほら、そういってる間にもやってきましたよ彼女が・・・・・・


「ドロボー、誰か、だれかつかまえてー」


 中年女性の悲鳴が朝の歩道にこだました。


「大丈夫ですか?けがは?」


 倒れ、慌てふためく女性に一人の生徒が声をかけた。女性はその見上げてからさらに驚いた。肩まで伸ばした髪を一つに束ね、鞄を背に黄色のMTBにまたがった女生徒がそこにいた。 

     

「あいつ、あっ、あの男を捕まえて」


 女性の指先にはバッグを持った男が一目散に駆けており、すでに歩道橋をのぼりきっていた。


「よし!」 


 女生徒は”プッ”と手に息を吹きかけるとその男めがけてMTBを走らせた。朝の通勤時間もかさなり人も多い中見事にスルリと避けて走っていった。


”カチカチ”と四段ほどギアをおとしMTBは歩道橋を一気に駆け上がると ”あっ” という間に男を抜き去ってしまった。さらにここからがすごかった。MTBは男を抜いた後、すかさずブレーキをかけ、いったん前につんのめった形で後輪を浮き立たせるとすかさずその反動で前輪を浮き立たせ90度の回転円を描いて、男の行く手を阻んだ。男はその曲乗りのような自転車の技と自分の逃げ場を失った状況に右往左往しているうちに後ろからきたスーツの男達に取り押さえられてしまった。

しばらく後に女性が駆けつけてくると、女生徒は拍手のなかサッと歩道橋を駆け下りていった。 

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