第5話 《無限の魔蔵庫》

〈ギフト進化条件を満たしました!〉


〈《魔蔵庫》が進化して《無限の魔蔵庫》になりました!〉


「なっ!?!?」


 思わずベッドから飛び起きる。


 ギフトが進化だとっ!?!?!?


 冒険者として経験を積むことによって、ギフトは成長する。

 新しいスキルを覚えたり、スキルが成長したり。


 実際――。


 ガイは《剣士》から《中級剣士》を経て、《上級剣士》へ。

 ミサは《魔術士》から《中級魔術士》を経て、《上級魔術士》へ。

 エルは《回復士》から《中級回復士》を経て、《上級回復士》へ。


 三人ともBランクギフトへと進化している。

 現在はAランクギフトも見えている段階だ。


 だが、俺のギフト《魔蔵庫》は授かって以来五年間、進化どころかなんの成長もしなかった。

 普通は成長して、一年もしないうちにスキルのひとつやふたつ覚えるものだ。

 だけど、俺が使えるは初期スキル【魔力貸与】ひとつだけだ。


 それがなんでいきなり進化なんだ……。


「おめでとうございま〜す」


 困惑する俺の背後から、お気楽な声が聞こえてきた。

 幼い少女のような高い声だった。


 振り向いた俺が見たのは、手乗りサイズの小さな女の子。

 長いストレートの銀髪に薄紅の羽衣はごろもを身にまとい、背中から生えた四枚の虹色の羽をパタパタさせて宙に浮いている。


「もっ、もしかしてっ、ギフト妖精ッ!?!?!?」

「ぴんぽ〜ん。ご名答〜」

「うわ〜、本当に存在したんだ……」


 ユニークギフトのようなレアなギフトの場合、目の前の彼女のようなギフト妖精がサポートしてくれることもあるという話だ。

 この小さな女の子の姿は、噂で聞くギフト妖精の姿そのものだった。

 ただ、ギフト妖精はギフト保持者本人にしかその姿を見ることが出来ないので、本当に存在するかのどうかは本人以外、誰にも確認できない……はずだったのだが。


 その幻の存在が今、俺の目の前にいる――。


 お人形さんみたいにカワイイな……。


「ご挨拶が遅くなりました。私は《無限の魔蔵庫》保持者のサポートをするために派遣されたギフト妖精、マジカル・プランナーのエムピーと申します。以後、お見知りおきを、マイマスター」


 エムピーと名乗ったギフト妖精がぺこりと頭を下げる。


「あっ、ああ、よろしく」


 俺もつられて頭を下げる。

 そんな俺を見て、エムピーはフフッと笑みを浮かべる。

 気恥ずかしさとその可愛さに、俺の顔は赤くなった。


「なにはともあれ、一度ステータスをご確認下さいませ〜」


 いまだに頭がついていっていないが、軽い調子のエムピーにうながされ、先ほど見たばかりの冒険者タグを再度確認する。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


名前:レント

年齢:19

性別:男


ギフト:無限の魔蔵庫(SSS) 《NEW!》

MP      :471/1,210

【無限の魔蔵庫】:  0/∞ 《NEW!》

冒険者ランク:D

パーティー:――


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「うおっ!」


 エムピーの言うように、ギフトが進化しているっ!

 しかも、ギフトランクがSSS!

 最高ランクじゃないかっ!

 それに《魔蔵庫》が《無限の魔蔵庫》に変化している上、見たことがない記号「∞」付きだ。


 ギフトはその能力・レアリティによってランクが定められている。

 もともと俺が授かった《魔蔵庫》はランクSだった。

 だが、ランクSの割に、活躍したのは最初だけ。

 ハズレじゃないかと落胆していた。


 SSSになった新ギフト《無限の魔蔵庫》。

 今度こそ、ハズレじゃないと良いんだけど……。


「でも、なんで、このタイミングで?」

「はいっ。《無限の魔蔵庫》への進化条件は二つあります〜」


 エムピーがちっちゃな指をひとつ立てる。


「一つ目は――」

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