<4> 決闘は【パズルゲーム】

【クラリスと不思議な絵】、クラリスは主人公の名。

では、不思議な絵とは?


「勝負だっ」


上擦っていなければ心地よいに違いない、童顔生徒の低い男声バリトンに合わせ、空間に画面が現れる。同時に石畳が開き、操作パネルが迫り上がる。


操作パネルの右側には三角のボタンが四つ上下左右の位置にあり、左側にはこぶし大の丸いボタンが二つある。

画面は自分と相手、ふたつに区切られ、間には【オリアンヌ・フォンテーヌ V.S. バジル・バルサン】の文字と、次に出るタイル——色とデザインの違うタイル二枚一組——がそれぞれ表示されている。


「……なるほど」

「同色タイル四枚、縦横関係なく繋げれば消える。縦二枚ずつを上下の一枚のみ接して横に並べるジグザクの形でも消えるぞ」


不思議な絵は、【パズルゲーム】。

荒い説明で対戦は開始される。

習うより慣れよ、百聞は一見にしかず。

遣れば解る。

何よりこれはチュートリアル。

数回消せば、相手はすぐに——


「なっ」


操作感に戸惑う中、透明なタイルが一枚落ちてくる。

透明タイルはお邪魔タイル。隣でタイルを消せば消えるが、色タイルの接続を邪魔し、タイルが積み上がる元になる。タイルが一列でも画面一番上のラインをはみ出せば敗北。

対戦相手が攻略対象なら好感度レーティングが変化し、学園の生徒や教師なら自分の能力値パラメータが変化する。


手の大きさよりも間隔の広い操作パネルにようやく慣れ、四枚のタイル一組を消した時にはもう、透明タイルと背景が半分半分ハーフハーフだ。

相手の画面をちらり見ても、決して素早い動きではない。

そもそも——


パッ。


男子生徒バジルが一組消す。私の画面に透明タイルが落ちてくる。

普通ならば五枚一組以上、または連鎖消しで落とせるはずの透明タイルが、四枚消しただけで相手の画面に落ちている。


まさか——


しかし考えている暇はない。

チュートリアル模擬戦敗北で一体何が起きるのか、予想も付かない。

お邪魔タイルを利用した連鎖で、一気に片を付けてやる。





「も、申し訳ありません」

「良いわ。でも、誰にでも喧嘩を吹っ掛けないのよ」


平身低頭謝ると、騎士団長三男バジルは、つんのめながら走り去った。

金髪縦巻きロールが、私、フォンテーヌ公爵令嬢オリアンヌだと教えて貰ってないなんて、不憫な子。

しかも、不興を買うようけしかけられて。


「不穏ねぇ……」


開始ゲームスタート早々、攻略対象を侍らせる主人公クラリス

公爵令嬢に決闘を挑まされ——処罰を望まれた伯爵家三男バジル・バルサン、そして。


攻略最重要課題パズルゲームは、悪役令嬢に相応しい高難度ハードモード

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