第8話 思い出のあの地へ。

途中でちょっと道に迷ってあたふたしながら、何とか半日かけてその場所にたどり着いた。


その海岸は、他の海岸よりもちょっと奥まったところにあって、夏場だというのに人は誰もいなかった。


まあ、ここにたどり着くまでの道は僕のパジェロの全幅でいっぱいいっぱいといった感じだから、積極的に来る人もいないのだろう。


適当なところに車を止めると、二人で、そのまま海岸の砂浜の方へと足を進めた。


キュッキュと柔らかい砂を踏みしめながら歩いていくと、そこには、息をのむほどの美しい光景が広がっていた。


「・・・うおおお・・・・。」



水面に沈みゆく太陽のオレンジと、もうすぐ夜に耽ようとする深いパープルが入り混じった空、そして太陽を溶かすように紅く染まる水面。光を受けてシルエットが浮かび上がる大きな白い大きな岩。 この世のモノとは思えない、まるで絵画を見ているかのような美しさがそこにはあった。


僕たち二人は砂浜に並んで体育座りをして、その光景に見入っていた。


ザアアアア・・・・シャアアアア・・・・ザアアアア・・・・・シャアアア・・・・と、穏やかに奏でられる波の音に聞き入りながら、沈みゆく陽を見つめる。


ただそれだけの事なのに、不思議と心が洗われていくような心地いい時間だった。


この空間にいつまでも居座っていたい・・・そんなことを考えていた時、横から、羽のように軽くて、でもしっかりと届く声が聞こえてきた。


「ねえ・・・・そういえばさ、まだ話してなかったわよね。私が『不死身』になった理由。」



「あ、ああ・・・・確かに聞いてなかったな。でも、いいぞ。そんな無理して言わんでも。きっと辛い思い出なんだろうし。」


「だからこそ知ってもらいたいのよ。・・・・あなたとはここまでの仲になったし、それに私も、たまには話さないと・・・・もっと辛くなりそうだから・・・。」


顔をゆっくり畳んだ膝に沈ませながら、そう言った。



「・・・・わかった。じゃあ、その話聞かせてもらえないか。」


ゆっくりと彼女はうん、っとうずめた首を縦に振ってから、少し間をおいて話し始めた。


続く

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