第18話

 年が明けて悠人が新聞配りを始めてから丸2年を迎えようとしていた。

約1年前から『アン』(彩)から手紙をもらうようになってからは1年が経とうとしていた。

悠人は、『マシュウおじさん』のことをいつか打ち明けなければと悩んでいた。

そのタイミングが見つからず悶々としていた。

新聞配達は3年生になったら辞めるつもりで初めから2年間の約束だった。

新聞配達を辞めるタイミングで、自然と『マシュウおじさん』は消えるべきか?

それとも自分であることを名乗るべきか?

まだ答えは見つかっていなかった。


 そんなある日の事。

いつものように新聞配達をしていると『アン』の家のポストにいつものように張り付けてあるものがあって、

「あっ!手紙だな」と思った。

いつもよりは少し大きめの包みだったので

「ん?」と思ったが

『マシュウおじさん』へと書かれてあったので、後のお楽しみと思って家に持ち帰ってみてみた。



―― マシュウおじさんへ 


マシュウおじさん、まだまだ寒い日が続きますがお元気ですか?

いつも新聞配達ありがとうございます。

今日はバレンタインデーなので日頃の感謝を込めて私の作った手作りチョコを送ります。

愛情たっぷり入れておきました(笑) 嫌いでなければ食べて下さいね。


それから本命さんにも今日、思い切ってチョコを渡そうかなって思っています。

あっ、ずっと前に言っていた放送部の部長さんではありませんよ。

部長さんにはもう素敵な彼女さんがいます。

二人は私の憧れのカップルです。

いつの間にか本命さんの事がいいなと思い始めて片思いのままでいいと思っていましたがバレンタインデーの今日なら勇気が出るかなって思って。


なんかマシュウおじさんには関係のない話しでしたね。

いつも私の話しを聞いて下さりありがとうございます。

それでは風邪などひかれないよう身体に気をつけて下さいね。


―― アンより



 この手紙とともに手作りのチョコレートが入っていた。

可愛い包みの箱を開けてみると

棒付きの可愛いギザギザチョコと一口大のボール型のチョコ、ホワイトチョコ、ストロベリーチョコの3種類が入っていた。

ボール型のチョコにはコーフレークみたいなものが入っているようだった。


(めちゃくちゃ美味しそう。食べるのもったいないな)

(この手紙に書かれてる本命さんって誰だろう?まさか俺?……なわけないか)


悠人は手作りチョコに舞い上がりながらも、本命さんにもチョコをあげるつもりだとの内容が気になって仕方がなかった。


(いったい誰にあげようとしているんだ?)

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